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刑事事件の時効は何年?一覧表で早わかり!法改正にも対応!

刑事事件の時効は何年?

 

「時効まで残り1か月で逮捕」-このようなニュースを見聞きしたことがあると思います

 

 

刑事事件の時効は公訴時効と呼ばれます。このページでは刑事事件に詳しい弁護士 楠 洋一郎が公訴時効の期間やいつから時効が始まるかについて、一覧表つきでわかりやすく解説しています。

 

 

刑の消滅時効や告訴期間など公訴時効に似た制度についても解説していますので参考にしてみてください。

 

 

刑事事件の公訴時効とは?

刑事事件の公訴時効

 

公訴時効とは検察官が被疑者を起訴するにあたってのタイムリミットです。起訴とは被疑者を刑事裁判にかけることです。

 

 

公訴時効が完成すると起訴できなくなります。刑事裁判が開かれませんので、処罰されることもありませんし、前科もつきません。

 

 

公訴時効が定められた理由は以下のように考えられています。

 

 

①時の経過によって犯罪の社会的影響が小さくなる

②時の経過によって証拠を集めることが難しくなり、起訴しても誤った裁判がなされるおそれがある

③長期間にわたり起訴されていなかったという法的安定性を重視すべきである

④捜査資源には限りがあるので捜査にも区切りをつけるべきである

 

 

もし検察官が時効になっていることを見逃して起訴してしまった場合、裁判官は、実体審理に入ることなく「免訴」という裁判を下します。

 

 

刑事事件の公訴時効は何年?

1.人を死亡させた罪で最高刑が死刑にあたる犯罪

人を死亡させた罪で最高刑が死刑にあたる犯罪については、時効がありません。以前は時効がありましたが、被害者遺族の処罰感情をふまえ、2010年に撤廃されました。

 

最高刑

人を死亡させた罪

時効期間

死刑

殺人、強盗殺人

なし

 

 

2.人を死亡させた罪で禁錮以上の刑にあたる犯罪(上記1を除く)

最高刑

犯罪

時効期間

無期懲役・無期禁錮

不同意わいせつ致死、不同意性交等致死

30

最長20年の懲役または禁錮

傷害致死、危険運転致死

20

その他

過失運転致死、業務上過失致死

10

 

 

3.その他の犯罪

最高刑

犯罪

時効期間

死刑

現住建造物等放火、外患誘致

25

無期懲役・無期禁錮

強盗致傷

15

15年以上の懲役・禁錮

強盗、傷害、傷害致死

10

15年未満の懲役・禁錮

窃盗、詐欺、業務上横領、恐喝、公文書偽造

10年未満の懲役・禁錮

児童買春、私文書偽造、過失運転致傷

5年未満の懲役・禁錮or罰金

痴漢(迷惑防止条例違反)、盗撮(撮影罪)、公然わいせつ、住居侵入、暴行、脅迫

拘留・科料

軽犯罪法違反

 

 

4.性犯罪等の特則

最高刑

時効期間

不同意わいせつ致傷

20

監護者わいせつ致傷

不同意性交等致傷

監護者性交等致傷

強盗不同意性交等

不同意性交等

15

監護者性交等

不同意わいせつ

12

監護者わいせつ

児童福祉法違反(自己を相手方として淫行させた場合)

 

 

上記4の犯罪については、犯罪行為が終わった時点で被害者が18歳未満の場合、「上記の時効期間+18歳になるまでの期間」が時効期間になります。

 

 

18歳未満の方は自分が受けた被害を理解できない場合があることから、18歳になるまでの期間を時効期間に加えることにより、より一層の保護を図っています。

 

 

刑事事件の公訴時効はいつから?

刑事事件の公訴時効はいつから?

 

公訴時効は犯罪行為が終わったときから進行します。「終わったとき」とは犯罪行為が終わった当日を意味します。

 

 

長期間にわたり何度もお金を引き出した業務上横領事件のように、独立した犯罪行為が複数ある場合は、それぞれの行為が終わった日から個別に時効が進んでいきます。

 

 

刑事事件の公訴時効はいつ完成する?

公訴時効は時効期間が経過すると完成します。

 

 

不同意わいせつ罪(時効期間は12年)を例として、いつ時効が完成するのかを以下に示しました。

 

 

犯罪行為が終わった日=事件の発生日

2024年1月10日

時効の完成日

2036年1月10日

 

 

公訴時効の停止とは?

公訴時効の停止とは?

 

公訴時効は犯罪行為が終わった時から進行しますが、一定の事情があると進行がストップします。これを公訴時効の停止と言います。

 

 

停止の原因となった事情がなくなれば、再び時効が進行します。この場合、いったんリセットされて最初から進行するわけではなく、停止した期間から進行します。公訴時効が停止するケースは以下の4つです。

 

 

1.起訴した場合

起訴すれば公訴時効は停止します。そのため裁判中に時効が完成することはありません。ただ、管轄違いまたは公訴棄却の裁判が確定した場合、確定時から再び時効が進行します。

 

 

2.共犯者を起訴した場合

共犯者を起訴した場合も公訴時効が停止します。共犯者の裁判が確定した時点で時効は再び進行します。

 

 

3.犯人が国外にいる場合

犯人が国外にいる間は時効が停止します。

 

 

4.犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達または略式命令の告知ができない場合

犯人が国内で逃亡している場合は、まず(略式)起訴された後に起訴状や略式命令が本人に届かないことが時効停止の要件となっています。

 

 

時効直前に逮捕される?

時効直前に逮捕される?

 

被疑者を逮捕すると、検察官は最長約3週間以内に起訴するか釈放するかを決めなければなりません。

起訴前の流れ(逮捕・勾留あり)

 

 

起訴するためには公判を維持するに足る証拠を集める必要がありますが、通常であれば、証拠をそろえるまでに逮捕してから1週間程度はかかります。重大犯罪であれば1週間で起訴までこぎつけるのは至難の技です。

 

 

そのため、時効数日前に逮捕しても、証拠の準備が間に合わず起訴できない可能性が高いです。時効数日前の時点で逮捕・起訴される可能性はほぼなくなったと言ってよいでしょう。

 

 

刑の消滅時効とは?

刑の消滅時効とは?

 

公訴時効に似た制度として刑の消滅時効があります。刑の消滅時効とは刑罰を執行するにあたってのタイムリミットです。判決が確定すればいつでも刑罰を執行できる状態になりますが、刑の消滅時効が完成すると執行できなくなります。

 

 

例えば、懲役3年の実刑判決が確定した後、刑務所に収容されることなく刑の消滅時効が完成すると、その後に収容することができなくなります。刑の消滅時効が設けられた理由は、時の経過とともに国民の処罰感情が緩やかになっていくと考えられるためです。

 

 

刑の消滅時効が問題となるのは、逮捕・勾留されずに在宅で起訴され実刑判決になった後に逃走したケースです。

 

 

被告人は判決言渡し期日に出廷する必要がありますが、保釈中ではありませんので、実刑判決を受けてもその場で身柄が拘束されるわけではありません。収監される日までタイムラグがあるため、その間に逃走することが考えられます。

 

 

とはいえ、相当なレアケースであり、刑の消滅時効が完成して執行を免れることはまずありません。

 

 

刑の消滅時効は何年?

刑の消滅時効は、裁判所で宣告された刑罰に応じて以下のように分けられています。法定刑の上限が基準となる公訴時効と異なり、裁判で実際に宣告された刑が基準となります。

 

 

宣告された刑罰

時効期間

無期懲役・禁錮

30

10年以上の懲役・禁錮

20

3年以上10年未満の懲役・禁錮

10

3年未満の懲役・禁錮

罰金

拘留・科料・没収

 

 

告訴期間について

告訴期間について

 

1.告訴期間とは?

控訴時効に似た制度として告訴期間があります。告訴期間とは、刑事事件の被害者が告訴するにあたってのタイムリミットです。刑事事件のなかには、告訴がなければ起訴できない犯罪があります。このような犯罪を親告罪といいます。

 

 

親告罪は、告訴期間が過ぎると告訴できなくなります。告訴できないので起訴されることもなく、逮捕されたり家宅捜索されることもありません。

 

 

2.告訴期間は6か月

告訴期間は犯人を知ったときから6か月です。

 

 

「犯人を知った」とは、犯人が誰であるかを特定できる程度に知ればよく、氏名や住所等の詳細を知る必要はありません。

 

 

3.告訴期間が適用される犯罪

告訴期間は親告罪に適用されます。親告罪の例として次のような犯罪があります。

 

【親告罪】

器物損壊

名誉棄損侮辱罪

親族間でなされた窃盗詐欺、背任、恐喝横領

 

 

公訴時効が完成するまで待つ?自首すべき?

公訴時効が完成するまで待つ?自首すべき?

 

公訴時効が完成すれば逮捕されたり起訴されることはありません。そのため、罪を犯してしまった人の中には「時効が来るまで待とう」と考えている人もいるかと思います。

 

 

しかし、現在ではDNA鑑定や防犯カメラ等、証拠になり得る物が多数あるため、時効が完成する前に逮捕されることも少なくありません。時効が完成するまで怯えて暮らすのであれば、警察に自首をするという選択肢もあります。

 

 

「罪を犯したが警察から連絡が来ていない」という方は、今後の対応について、刑事事件に精通した弁護士にご相談ください。

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