強制わいせつ致傷に強い弁護士

強制わいせつ致傷に強い弁護士

 

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

強制わいせつ致傷罪の構成要件

犯罪が成立するための要件を構成要件といいます。強制わいせつ致傷罪の構成要件は、強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪・監護者わいせつ罪またはこれらの未遂罪を犯し、よって人にけがをさせることです(刑法181条)。

 

 

【強制わいせつ罪の構成要件】

①暴行・脅迫を手段として

②わいせつな行為をすること

*13歳未満の被害者については①の要件は不要

 

 

【準強制わいせつ罪の構成要件】

①人の心神喪失・抵抗不能に乗じて、または人を心身喪失・抵抗不能にさせて

②わいせつな行為をすること

 

 

【監護者わいせつ罪の構成要件】

①18歳未満の者に対し

②その者を現に監護する者であることによる影響力に乗じて

③わいせつな行為をすること

 

未遂でも強制わいせつ致傷罪になりうる

強制わいせつ致傷罪が成立するためには、基本となる強制わいせつ罪等の実行行為に着手している必要はありますが、既遂に達している必要はないとされています。

 

 

つまり、わいせつ行為をしようと思って被害者に対して何らかのアクションをとり、それによって被害者が負傷すれば、わいせつ行為自体は未遂であっても、強制わいせつ致傷罪になるということです。

 

 

【具体例】

胸をもむために背後から女性に近づき、手で女性の口をふさいだところ、女性が転倒して叫び声をあげたため逃げた。女性は転倒した際、膝に全治1週間の擦り傷を負った。

⇒強制わいせつ致傷罪が成立

 

 

 

強制わいせつ致傷罪の刑罰

強制わいせつ致傷罪の刑罰は無期懲役または3年以上の懲役です。1回限りの犯行であれば、有期懲役の上限は20年です。複数の強制わいせつ・強制わいせつ致傷で起訴された場合、有期懲役の上限は30年になります。

 

 

強制わいせつ致傷の事例

強制わいせつ致傷が成立するためには、基本となる強制わいせつ等とケガとの間に因果関係が存在する必要があります。

 

 

わいせつ行為自体からケガが生じたケースや、わいせつ行為の手段としての暴行・脅迫からケガが生じたケースでは、問題なく因果関係が認められます。

 

 

【わいせつ行為自体からケガが生じたケース】

・胸にキスマークをつけた

・被害者に抱きついた際に一緒に転倒し被害者を負傷させた

 

 

【わいせつ行為の手段である暴行からケガが生じたケース】

・被害者が叫び声をあげたため黙らせようとして顔面を殴り負傷させた

 

 

それ以外にも、①わいせつ行為の「機会」に、②わいせつ行為と「密接に関連する」行為によって被害者が負傷した場合は、強制わいせつ致傷罪が成立します。

 

 

【わいせつ行為の機会に密接に関連する行為でケガが生じたケース】

・被害者が助けを求めてベランダから飛び降りて負傷した

・加害者が逃げる際に被害者をふりほどこうとして殴って負傷させた

 

 

強制わいせつ致傷と裁判員裁判

強制わいせつ致傷罪の最高刑は無期懲役です。このように法定刑に無期懲役が含まれる犯罪については、裁判員裁判で審理されることになります。

 

 

近年、性犯罪の裁判員裁判では厳しい判決が下される傾向があり、なかには検察官の求刑を上回る判決もみられるようになっています。

 

 

強制わいせつ致傷で執行猶予を獲得するためには、弁護士が裁判員に受け入れられやすいケースセオリーを構築し、裁判員が理解できる言葉でわかりやすく説明する必要があります。

裁判員裁判の流れ

 

 

強制わいせつ致傷と示談

1.強制わいせつ致傷における示談の重要性

強制わいせつ致傷を認めているケースで不起訴を獲得するためには、被害者との間で示談をまとめることが最も重要です。

 

 

強制わいせつ致傷は重大犯罪ですが、「許す」とか「刑事処罰を求めない」という内容の示談が成立すれば、不起訴になる可能性が高くなります。

 

 

もし起訴されたとしても示談が成立していれば執行猶予の可能性が高くなります。

 

 

2.強制わいせつ致傷の示談と弁護士

強制わいせつ致傷の被害者と示談交渉をするためには、まず被害者の電話番号を把握する必要があります。

 

 

強制わいせつ致傷のような性犯罪の被害者は、加害者やその家族に個人情報を知られたくないと思っていますので、被害者の電話番号を知るためには、弁護士が間に入って確認する必要があります。

 

 

3.強制わいせつ致傷の示談のプロセス

弁護士が捜査担当者を通じて、被害者に電話番号を教えていただけるように依頼します。捜査担当者が被害者の意向を確認し、電話番号を教えてもよいとのことであれば、弁護士に電話番号を教えてくれます。

 

 

その後は弁護士が被害者にコンタクトをとり示談交渉を始めます。

 

 

4.強制わいせつ致傷の示談のタイムリミット

強制わいせつ致傷で逮捕されてから起訴・不起訴が決まるまでの期間は最長で約3週間です。不起訴を狙うのであればこの期間内に示談をまとめる必要があります。

 

 

逮捕直後から示談交渉を始めてもギリギリのタイミングになることが多いため、土日も動いてくれる弁護士に依頼した方がよいでしょう。

 

 

5.強制わいせつ致傷の示談金の相場

強制わいせつ致傷の示談金の相場は、強制わいせつの態様やケガの程度に応じて、50万円~300万円程度になります。軽傷であれば100万円以内で示談がまとまる可能性も十分にあります。

 

 

「弁護士費用が高すぎて示談金を準備できなかった」という最悪の事態にならないよう、予算に限りがある場合は、弁護士費用の安い法律事務所に依頼した方がよいでしょう。

刑事事件の弁護士費用が安い法律事務所

 

強制わいせつ致傷で示談なしで執行猶予を狙えるケース

強制わいせつ致傷で示談が成立していなければ、実刑を覚悟する必要があります。もっとも、次の条件を満たす場合は、示談なしで執行猶予になる余地があります。

 

 

①衝動的な犯行である

②凶器を使用していない

③態様が悪質ではない

④犯行時間が短い

⑤再発防止策を実行している

⑥家族が情状証人として協力してくれる

⑦初犯である

 

 

再発防止策としては、保釈中に性依存症のクリニックに通院し、医師の診察や心理士のカウンセリングを受けたり、グループミーティングに参加することが考えられます。

 

 

保釈前であっても専門家に勾留場所に来てもらい、アクリル板越しにカウンセリングを実施してもらうこともあります。

 

 

そうした活動状況を弁護士が報告書にまとめて裁判所に提出したり、被告人質問で本人から自分の言葉で説明してもらいます。

 

 

専門家に証人として出廷してもらい、本人の取り組み状況や再犯防止の見込みについて証言してもらうこともあります。

 

 

ウェルネスの弁護士は性犯罪治療の専門家と連携し、執行猶予を獲得した実績が多数あります。

 

強制わいせつ致傷で無罪を主張する場合

強制わいせつ致傷で無罪を主張する場合は、警察や検察に「私がやりました」という自白調書をとられないようにすることが重要です。

 

 

裁判官は自白調書を重視して事実を認定するため、いったん自白調書をとられてしまうと、法廷で「本当はやっていません」と否認しても、無罪を獲得することが難しくなります。

 

 

否認事件では、警察や検察の取調べに際して黙秘することが原則です。自白調書の作成を阻止できれば、検察官が公判を維持できないと考え、嫌疑不十分で不起訴になる可能性が高まります。

 

 

取調官も全身全霊をかけて自白調書をとりにくるため、黙秘を貫くためには、経験豊富な弁護士によるバックアップが不可欠です。

否認事件の刑事弁護

黙秘について

 

 

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