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名誉毀損とは?侮辱罪との違いや慰謝料の相場【事例あり】

名誉毀損について

 

何気なく書き込んだメッセージが名誉毀損としてトラブルになることが少なくありません。

 

 

このページを見ている人のなかにも「名誉毀損で訴える」と言われた方がいるかもしれません。警察が家宅捜索にきてびっくりしている方もいるでしょう。

 

 

そのような方は名誉毀損について次のような疑問をお持ちのことと思います。

 

 

☑ 名誉毀損の要件は?

☑ 名誉毀損と侮辱罪の違いは?

☑ 名誉毀損で逮捕される確率は?

☑ 名誉毀損で逮捕された後の流れは?

☑ 名誉毀損で前科をつけないための方法は?

☑ 名誉毀損の慰謝料の相場は?

 

 

このような疑問にこたえるため、刑事事件の経験豊富な弁護士が、名誉毀損について知っておいた方がよいことを解説しました。ぜひ参考にしてみてください。

 

 

 

 

名誉毀損とは

名誉毀損とは、①公然と、②事実を摘示し、③人の名誉を毀損することです。以下、これら3つの要件を個別に見ていきます。

 

 

名誉毀損の要件① 「公然」とは

「公然」とは、「不特定または多数の人が認識できる状態」のことです。現実に認識している必要はなく認識できる状態で足ります。

 

 

ネット掲示板に書きこんだり、公開でツイートしたメッセージは、誰でも閲覧できるので、「公然」といえます。

 

 

特定の相手に対するTwitterのDMやLINEのメッセージは、誰でも閲覧できるわけではないので、「公然」とはいえないでしょう。

 

 

名誉毀損の要件② 「事実を適示」とは

「事実を摘示」とは、指摘する内容が事実である場合だけでなく、たとえ事実でなくてもあたかも事実であるかのように指摘する場合も含まれます。

 

 

ただし、死者に対する名誉毀損については、虚偽の事実を指摘した場合に限られます。

 

 

指摘の方法は言葉でするのが一般的ですが、相手の顔写真とヌード写真を合成した画像をネットに投稿するケースなど、必ずしも言葉に限られるわけではありません。

 

 

名誉毀損の要件③ 「名誉を毀損」とは

「名誉を毀損」とは、人の社会的評価を害する行為をすることです。そのような行為により、実際に社会的評価が害されたことまでは必要とされていません。

 

 

名誉毀損の例外-公共の利害に関する特例

名誉の保護と表現の自由のバランスをとるため、刑法では、上で説明した名誉毀損の要件に該当しても、以下の3つの要件を全て満たすと、名誉毀損罪で処罰しないと定められています。これを「公共の利害に関する特例」といいます。

 

 

【特例の3つの要件】

①公共の利害に関する事実が問題となっている

②公益を図る目的がある

③指摘した事実が真実であると証明された

 

 

例えば、大企業の不祥事は公共の利害に関する問題といえるでしょう。そして、コンプライアンスのあり方について広く社会に問うために、そのような不祥事を報道したのであれば、公益目的も認められます。

 

 

その上で、報道した内容が真実であれば、名誉毀損罪で処罰されません。

 

 

ただ、③の要件については、たとえ報道した内容が真実ではなかったとしても、確実な根拠に基づき相当な理由があるときは、名誉毀損罪は成立しないと考えられています。

 

 

誤報であれば常に罰するとしたのでは表現の自由を委縮させることになるためです。

 

 

名誉毀損の刑罰

名誉毀損罪の刑罰は次の3つのいずれかです。

 

 

①3年以下の懲役

②3年以下の禁錮

③50万円以下の罰金

 

 

初犯であれば示談が成立すれば不起訴、成立しなければ略式裁判で罰金になることが多いです。

略式裁判とは?正式裁判との違いや拒否すべきかを弁護士が解説

 

 

もっとも、初犯でも、長期間にわたり繰り返し名誉毀損にあたる行為を続けた場合は、実刑になることもあります。

 

 

【名誉毀損の判例】初犯で実刑になったケース

加害者が被害者にふられた腹いせに、7カ月以上にわたって、被害者を中傷するビラや被害者の顔写真とヌード画像との合成写真を何度も街中に貼りつけた事件で、懲役1年6か月の実刑とされた(横浜地裁平成5年8月4日)。

 

 

名誉棄損は親告罪

名誉は私的な権利です。そのため、被害者の告訴がなければ、名誉毀損罪で起訴することができないとされています。このように告訴がなければ起訴できない犯罪を「親告罪」といいます。

 

 

告訴については期限があり、犯人を知った日から6か月以内にしなければなりません。

 

 

「犯人を知った」とは、氏名・住所・年齢等の詳細まで知る必要はありませんが、少なくとも他の人と区別できる程度まで特定している必要があります。

 

 

ネット上の名誉毀損のケースでは、誰がネットに書き込んだかわかっているとしても、書き込みが削除されない限り、6か月の告訴期間は進行しません。

 

 

名誉毀損の時効

刑事事件の時効

名誉毀損罪の時効は3年です。

 

 

民事事件の時効

名誉毀損は不法行為(民法709条)にあたるため、民事事件にもなり得ます。民事の時効は次のいずれかの短い方になります。

 

 

①「名誉毀損の被害を受けていること」と「名誉毀損の加害者が誰か」を知った日から3年

②名誉毀損があったときから20年

 

 

時効はいつから進む?

ネット掲示板やSNSに名誉毀損にあたるメッセージを書き込んだ場合、書き込みが削除されない限り名誉毀損が続いています。

 

そのため、刑事の時効も民事の時効も書き込みが削除された時点からスタートします。

 

 

名誉棄損と侮辱罪の違い【事例あり】

「事実」を言ったか否か

名誉毀損と侮辱罪の違いは事実を指摘したか否かです。事実ではなく評価を指摘しただけであれば、侮辱罪にはなり得ますが名誉毀損罪にはなりません。

 

 

名誉毀損の事例

特定の相手について以下のような書き込みをネット掲示板に投稿すると名誉毀損罪になります。

 

「家族が反社会集団の構成員である」

「上司と不倫している」

「痴漢の常習犯である」

「カルト宗教にはまっている」

 

これらは事実を指摘しているので、侮辱罪ではなく名誉毀損になります。なお、指摘した事実が真実である必要はないことに注意してください。

 

 

侮辱罪の事例

特定の相手について以下のような書き込みをネット掲示板に投稿すると侮辱罪になります。いずれも事実ではなく評価を指摘しているので名誉毀損にはなりません。

 

「バカ」

「変態」

「きもい」

 

*「死ね」と書き込んだ場合は、侮辱罪ではなく脅迫罪になります。

 

 

名誉毀損が刑事事件になる流れ

名誉毀損はネット上の書き込みがきっかけで事件化することが多いです。ここでも、ネット上の名誉毀損について解説していきます。

 

 

被害者側に弁護士がつかないケース

①被害者がネット上で誹謗中傷の書き込みを見つける

 

②警察に相談する

 

③警察がIPアドレスから被疑者を特定する

 

④被害者が告訴し事件化する

 

 

被害者側に弁護士がついたケース

①被害者がネット上で誹謗中傷の書き込みを見つける

 

②弁護士に相談する

 

③弁護士がプロバイダに発信者情報開示請求を行い被疑者を特定する

 

④弁護士が被害者の代理人として警察に告訴し事件化する

 

 

名誉毀損で逮捕される確率

検察庁の統計によれば、名誉毀損罪と侮辱罪で逮捕されるケースは14%です。

 

 

侮辱罪は刑(拘留または科料)が軽く原則として逮捕されませんので、名誉毀損罪だけでみれば逮捕率は14%よりも上がると思われます。

 

 

逮捕は最長で3日しかできません。ただ、勾留されればさらに原則10日、最長20日にわたって留置場で拘束されます。

 

 

名誉毀損で逮捕された後に勾留されるケースは81%です。勾留が延長されたケースは84%です。

 

*本ページで紹介している確率は2020年の検察統計年報に依拠しています。

起訴前の流れ(逮捕・勾留あり)

 

 

名誉毀損で不起訴になる確率

刑事事件は警察によって捜査された後、検察官に送致されます。起訴するか不起訴にするかは検察官が決めることになります。

 

 

検察官に送致された名誉毀損のうち不起訴になったケースは67%です。起訴された33%のうち略式請求は70%、公判請求は30%です。

 

 

不起訴になれば刑事裁判にはなりませんので、前科がつくこともありません。

 

 

名誉毀損で前科をつけないために

書き込みの削除

名誉毀損の書き込みがネット上に残っている場合は、早急に削除に向けて動きます。自分で削除できない場合は、専門業者に依頼することもあります。

 

 

被害者との示談

名誉毀損は親告罪ですので、被害者との間で示談を成立させ、告訴を取り消してもらえれば確実に不起訴になります。

 

 

被害者は、電話番号などの個人情報を加害者に開示したがりませんので、示談交渉は弁護士を通じて行うことになります。

 

 

名誉毀損の慰謝料は?

名誉毀損の慰謝料の相場は10万円~50万円です。

 

 

ネット上の名誉毀損の場合は、書き込みの内容や回数、ネットに上げられていた期間によって慰謝料の金額が変わってきます。

 

 

被害者が発信者情報開示請求などを弁護士に依頼している場合は、弁護士費用についても慰謝料に上乗せするよう求められることが多いです。

 

 

名誉毀損の弁護士費用

逮捕されていなければ、弁護士費用の相場は55万円~110万円(税込)です。

 

 

逮捕されていれば、弁護士が接見に行き早期釈放に向けて動く必要があるため、上記の費用よりも高くなることが多いです。

 

 

刑事事件の弁護士費用は事務所によってかなり開きがあるため、いくつかの事務所を比較して決めるとよいでしょう。

 

 

ウェルネスでは逮捕されていない場合は、総額44万円(税込)になることが多いです。

 

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しました。

 

 

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