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黙秘した被疑者へのアメとムチ
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
取調官と補助者
取調べと聞くと、警察署の小さな部屋の中で、被疑者が取調官と1対1で向かい合っている場面をイメージする人が多いでしょう。
実際の取調べもそのような状況で行われますが、部屋の中に、取調官だけではなく、補助者がいる場合もあります。
補助者は取調室のすみの方に座っています。取調べ中、補助者は、取調官と被疑者のやりとりをパソコンで黙々と打ち込んでいます。
黙秘している被疑者へのムチ
☑ 悪いことをしたら謝るのがふつう。
☑ 裁判で反省していると言っても遅いぞ!
☑ お前が黙秘していることをお母さんに言ったら泣いてたぞ。
被疑者が黙秘していると、取調官はこのようなことを言って、被疑者にプレッシャーをかけてきます。長時間の取調べで延々と嫌味を言われることも少なくありません。
黙秘している被疑者へのアメ
被疑者が黙秘を続けていると、取調官が「トイレに行ってくる。」等と言って部屋の外に出ていくときがあります。
被疑者は「これで少し休める。」とほっとするかもしれません。しかし、取調官がいなくなったときこそ要注意です。決して気を緩めてはいけません。
取調官がいなくなると、これまでずっと黙っていた補助者が、やにわに被疑者に向かって声をかけてくることがあります。ついさっきまで声を荒げていた取調官と異なり、フレンドリーな口調で優しく語りかけてきます。
☑ 大丈夫?さっきの刑事の発言はさすがに言いすぎだよね?
☑ 〇〇くんよく耐えてるね。僕だったらすぐにしゃべっちゃうよ。メンタル強いね。
☑ お茶飲む?冷たいのがいい?あったかいのがいい?
このようなことを言ってきたり、唐突に「私はあなたと同い年なんですよ。僕らの世代でこんなアニメがあったよね。」、「〇〇出身でしょ。私もそうなんだよね。」等と言ってきて、被疑者の心を開かせようとします。
最初は当惑していた被疑者も、次第に、「もしかしたらこの人は僕のことをわかってくれるかもしれない。」と期待を持ってしまいます。
そのタイミングで、補助者に優しげな口調で、「僕も本当のことを話してほしい。」と言われると、張りつめていた緊張の糸が切れて、決壊したダムのようにいっきに自白してしまうことがあります。
捜査機関のアメとムチへの対処法
捜査機関はアメとムチを巧妙に使い分けて、黙秘している被疑者を落とそうとします。防犯カメラ等の客観的証拠がなく、起訴・不起訴が被疑者の自白にかかっている事件については、とりわけそのような傾向が顕著です。
弁護士が、「取調官がいなくなったときこそ要注意」と事前にアメとムチについて被疑者に説明しておき、しっかりと心の準備をさせておくことが大切です。
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