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殺人罪の弁護に強い弁護士
このページでは殺人罪で逮捕された方やご家族が知っておいた方がよいことを弁護士が解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
殺人罪の要件
殺人罪の要件は殺意をもって人を殺したことです。殺意には「殺してやる」という確定的な故意だけでなく、「死ぬかもしれないがそれでもいい。」という未必の故意も含まれます。
【関連ページ】故意とは?確定的故意と未必の故意について弁護士が解説
殺人罪の刑罰
殺人罪の刑罰は次のいずれかです。
①死刑
②無期懲役
③懲役5年~20年
2名以上殺害した場合は死刑の可能性が高くなります。
殺人罪の時効
殺人罪に時効はありません。以前は25年の時効がありましたが2010年に廃止されました。時効が廃止される以前に発生した殺人事件についても、時効は撤廃されます。
殺人罪と裁判員裁判
殺人罪は裁判員裁判で審理されます。弁護士が裁判員に受け入れてもらえるケースセオリーを構築し、法廷でわかりやすく説明するためには、それなりの経験が必要です。
殺人罪で弁護士をつける際には裁判員裁判に精通した弁護士を選んだ方がよいでしょう。
【関連ページ】裁判員裁判の流れ
殺人罪の5つの争い方
1.犯人性を争う
自分が犯人ではないと主張する場合は検察官や裁判員にアリバイを指摘することになります。
殺害を実行していないものの、実行犯と共謀したり実行犯に殺害を指示したとして逮捕・起訴された場合は、そのような共謀や指示が存在しないことを主張します。
2.殺意を否認する
殺人罪が成立するためには、殺意(故意)があることが必要です。殺意なく暴行したところ意に反して死なせてしまった場合は、殺人罪は成立せず傷害致死罪(懲役3年~20年)にとどまります。
以下の事情があれば、「殺すつもりがなかった」という主張が通りやすくなります。
①凶器を使用していない
②殺意を裏づける動機がない
③長時間・多数回暴行していない
ナイフで首や心臓など身体の枢要部を深々と刺しているような場合や長時間にわたって執拗に暴行した場合は、殺意を否認しても通らない可能性が高いです。
3.嘱託殺人・同意殺人を主張する
被害者から依頼を受けて殺害した場合は、殺人罪ではなく嘱託殺人罪(懲役または禁錮6か月~7年)が成立します。以下の事情があれば「殺害の依頼を受けていた」という主張が通りやすくなります。
①加害者と被害者との間に強い信頼関係がある(医師と患者、家族同士)
②被害者に殺害を依頼するほどの事情がある(重い病にかかっていて回復の見込みがない)
③被害者が抵抗した形跡がない
被害者から殺害の依頼は受けていないが、承諾を得て殺害した場合は、殺人罪ではなく承諾殺人罪(懲役または禁錮6か月~7年)が成立します。
典型的な承諾殺人は心中ですが、幼少の子供についてはそもそも承諾能力がないため、表面的に承諾していたとしても通常の殺人罪が成立します。
4.正当防衛を主張する
たとえ殺人罪の要件を満たしていても、正当防衛であれば違法性がないとして無罪になります。正当防衛が認められるためには以下の要件を満たす必要があります。
①現に攻撃を受けているか攻撃が間近に迫っている
②自己または他人の権利を防衛する目的がある
③やむを得ずにした行為である
素手で襲ってきた相手に対してナイフで反撃したり(質的過剰)、殴りかかってきた相手を殴り倒した後に無抵抗の相手を執拗に殴り続けて殺した場合(量的過剰)は、やむを得ずにした行為であるとはいえません。
このようなケースでは正当防衛は成立しませんが、過剰防衛として刑が減軽される余地があります。
5.責任能力を争う
殺意があって人を殺しても責任能力がなければ、「心神喪失」として無罪になります。以下のような事情があれば責任能力を争う余地があります。
①犯行前後の言動に不自然な点がある
②一般人の感覚では動機を理解できない
③精神科の通院歴がある
④知的障害がある
⑤薬物やアルコールを摂取していた
【関連ページ】責任能力とは?無罪になる理由や精神観点の3つのタイプを解説
殺人罪と不起訴
逮捕・勾留されても検察官が殺人罪を立証するのが難しいと判断した場合は、不起訴になります。ケースごとの不起訴の理由は以下のとおりです。
ケース | 不起訴の理由 |
アリバイが認められた | 嫌疑なし |
殺意が立証できない | 嫌疑不十分⇒傷害致死で起訴 |
殺害依頼や承諾があった | 罪とならず⇒嘱託殺人・承諾殺人で起訴 |
正当防衛と認められた | 罪とならず |
心神喪失と認められた | 心神喪失 |
殺人を否認する場合の対応方法
殺人事件が発生すると、捜査本部が設けられ、県警本部から派遣された経験豊富な刑事が指揮をとり、ほぼ毎日取調べが行われます。
殺人罪を争う場合、責任能力に問題がある被疑者を除き、取調べで黙秘すべきです。
【関連ページ】黙秘について
「言い分を全て調書に書いてもらえれば黙秘しなくてもよいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、取調官は被疑者より1枚も2枚も上手です。被疑者が「この内容なら大丈夫」と思っていても、よく読めば自白調書になっていることが多々あります。
いったん自白調書をとられてしまうと、裁判で殺人罪を争うことが難しくなってしまいます。また、被疑者が自分の言い分を口にすると、その言い分をつぶすために警察が先回りして弁解つぶしの証拠を作成することもあります。
「捜査機関にヒントを与えない」という観点からも、取調べに際しては黙秘すべきです。必要な主張は弁護士から行います。
殺人罪で執行猶予の余地がある2つのケース
1.介護殺人
殺人罪で執行猶予を獲得できる余地があるのは、介護に疲れ果てて家族を殺害してしまった介護殺人のケースです。
ただ、介護殺人であれば常に執行猶予になるというわけではありません。実刑になることも少なくないのです。
弁護士が裁判員に対して、被告人の介護負担や周囲のサポート体制、殺害に至るまでの経緯などについて丁寧に主張することが必要です。
【関連ページ】介護殺人等について弁護士が解説
【家庭内暴力を苦にした殺人】 家庭内暴力に苦しんで家族を殺してしまった場合、正当防衛や過剰防衛が成立しなければ、基本的には実刑になります。元農水省事務次官が家庭内暴力が絶えなかった息子を殺害した事件でも懲役6年の実刑判決が確定しています。 |
2.心神耗弱
善悪の判断がつかなかったり、自分の行動をコントロールできない状態で人を殺害した場合は、心神喪失により無罪となります。
そこまでいかなくても、判断能力やコントロール能力が著しく弱まった状態で人を殺した場合は、心神耗弱により刑が減軽されます。裁判で心神耗弱と認定されれば、執行猶予を獲得できる余地が十分にあります。
殺人罪と自首
殺人罪で自首をしても、逮捕を阻止できたり執行猶予を獲得できるわけではありませんが、刑期を短縮できる余地は十分にあります。
「自首減軽」といって、自首をすれば刑を軽くすることができると法律で定められています。殺人罪で自首減軽が適用されれば刑罰は次のようになります。
殺人罪の刑罰 | 自首減軽 |
死刑 | 無期懲役または懲役10年~20年 |
無期懲役 | 懲役7年~20年 |
懲役5年~20年 | 懲役2年6月~懲役10年 |
警察に殺人事件の被疑者として特定されれば、出頭しても自首にはなりません。そのため自首をするのであれば早期に動く必要があります。まずは自首同行の経験豊富な弁護士にご相談ください。
【関連ページ】自首に弁護士が同行するメリットと同行費用について
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しました。ウェルネスは殺人罪について不起訴(嫌疑不十分)と不送致(逮捕を阻止し警察限りで終了)の実績があります。