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執行猶予中の生活で気をつけるべき6つのこと
執行猶予になれば、刑務所に入らず社会の中で生活することができます。仕事をすることもできます。
もっとも、執行猶予中に新たに犯罪を起こして起訴されると、実刑になる可能性が高くなります。執行猶予も取り消され、2つの犯罪の実刑をあわせた期間、刑務所で服役することになります。
このような事態にならないよう、執行猶予中の生活で注意すべきことをまとめました。ぜひ参考にしてみてください。
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
目次
1.執行猶予中の再犯に注意
執行猶予中の再犯でとりわけ多いのが、薬物犯罪、性犯罪、万引きです。薬物依存症や性依存症、クレプトマニアの方は、「絶対に再犯しない。」と決意していても、衝動をコントロールできないことがあります。
執行猶予中も依存症のクリニックに通院したり、自助グループに通った方がよいでしょう。裁判中は真面目に通っていても、執行猶予になると「もう大丈夫だろう」と考えてやめてしまう方もいます。
いつまで続けるかは、医師やカウンセラーにきちんと相談した上で決めるようにしてください。
依存症の方はストレスを抱えているときに再犯してしまう傾向があるので、精神的に負荷がかかったときに、再犯リスクをどのように抑えるのかあらかじめ決めておいた方がよいでしょう。
2.執行猶予中の運転に注意
依存症のケースに次いで多いのが、人身事故や無免許運転、スピード違反など車に関係する犯罪で執行猶予中に、再び人身事故を起こしたり交通違反をしてしまうケースです。
軽微な交通違反であれば反則金や罰金で済むこともありますが、人身事故や重大な交通違反の場合は、起訴されて実刑になる可能性が高くなります。
自動車絡みの犯罪で執行猶予中の方は、車の運転はなるべく控えた方がよいでしょう。
3.執行猶予中の飲酒に注意
酒に酔って痴漢などの性犯罪を起こし執行猶予中の方が、再び飲酒して性犯罪を起こしてしまうケースが少なくありません。
飲酒は性犯罪だけでなく、暴力犯罪や交通犯罪などの原因にもなります。お酒絡みの犯罪で執行猶予中の方は、外での飲酒は控えた方がよいでしょう。
4.執行猶予中のパスポート申請に注意
パスポートの申請書には、申請書に「執行猶予の処分を受けていますか。」という質問があります。執行猶予中の方は「はい」の欄にチェックしてください。
その結果、渡航事情説明書や判決謄本を提出することが必要になり、パスポートが発行されないことや、発行されても渡航先や期間が限定されることがあります。
「執行猶予の処分を受けていますか。」という質問に対して、「いいえ」の欄にチェックをしてパスポートを取得すると、旅券法違反で逮捕・起訴されることがあります。そうなれば、実刑及び執行猶予取消しの可能性が非常に高くなります。
【旅券法23条】 次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 ① この法律に基づく申請又は請求に関する書類に虚偽の記載をすることその他不正の行為によって当該申請又は請求に係る旅券又は渡航書の交付を受けた者 |
5.執行猶予中の資格取得に注意
執行猶予中は資格試験に合格しても登録できないケースがあります。国家資格の取得を目指している場合は、執行猶予中であることが欠格要件に該当しないか、調べておくとよいでしょう。
よくわからない場合は、刑事事件を担当してもらった弁護士に尋ねてみてください。なお、欠格要件に該当していても、執行猶予期間を無事に経過すれば、資格制限は解除されます。
6.保護観察付の執行猶予中はルール違反に注意
保護観察付きで執行猶予になった方は、「遵守事項」(じゅんしゅじこう)に違反しないように注意してください。違反の程度が重いと執行猶予を取り消されることがあります。
遵守事項には保護観察中の全ての方に適用される一般的なルールと、特定の方のみに適用される特別のルールがあります。一般的な遵守事項は以下の通りです。
① 再犯をすることがないよう健全な生活態度を保持すること
② 保護観察官や保護司から呼び出されたり、訪問を受けたときは、面接を受けること
③ 保護観察官や保護司から生活状況について尋ねられたときは、きちんと報告し、必要な場合は資料を提出すること
④ 速やかに住居を定め、保護観察所の長に届出をすること
⑤ 届け出た住居に居住すること
⑥ 引っ越しや7日以上の旅行をするときは保護観察所の長の許可を得ること
①のように抽象的なものも含め遵守事項は多岐にわたりますが、要は「保護司の指示には従いましょう」ということです。
執行猶予期間が過ぎても安心は禁物
執行猶予の期間が過ぎたら、再犯しても確実に執行猶予がとれるわけではありません。確かに、猶予期間が満了してから10年以上たっていれば、再び刑事事件を起こして起訴されても、判決にはほとんど影響がないでしょう。
ただ、猶予期間が満了して1,2年後に再犯をしたのであれば、実刑判決になる可能性はかなり高いです。執行猶予期間がすぎたことは一つの区切りにはなりますが、安易に「もう大丈夫」と思わないようにしましょう。
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