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覚醒剤の輸入罪で逮捕されたら?不起訴となる事例や方法について弁護士が解説

家族が覚醒剤輸入罪で逮捕された-このページではそのような方々を対象として、覚醒剤輸入罪に詳しい弁護士が何を目指してどのように活動すればよいのかを解説しました。ぜひ参考にしてみてください!

 

 

このページはウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎が作成しました。

 

 

 

 

覚醒剤の「輸入」とは?

覚醒剤を輸入すると覚醒剤輸入罪になります。覚醒剤の「輸入」とは海外から日本に覚醒剤を持ち込むことです。それではどの段階で覚醒剤を日本に輸入したことになるのでしょうか?

 

 

日本は島国ですので、海外から日本に覚醒剤を持ち込むためには、海路を船によって運搬するか、空路を飛行機によって運搬するかのいずれかになります。そこで、以下では船による輸入と飛行機による輸入にわけて考えます。

 

 

1.飛行機よる覚醒剤の輸入

飛行機で覚醒剤を日本に持ち込む場合は、日本の空港に着陸した飛行機から覚醒剤が地上に取り下ろされた時点で輸入したと認定されます。覚醒剤を携帯して飛行機に乗った場合は、着陸後に飛行機から降りてタラップに移った時点で輸入したと認定されます。

 

 

これらの時点で覚醒剤が国内に流通し、保健衛生上の害悪が発生する可能性が飛躍的に高まるためです。

 

 

2.船による覚醒剤の輸入

船で覚醒剤を日本に持ちこむ場合は、日本の領土に覚醒剤を陸揚げした時点で輸入したと認定されます。日本の領土に陸揚げした時点で、覚醒剤が国内に流通し保健衛生上の危害をもたらす可能性が飛躍的に高くなるためです。

 

 

船が接岸して陸揚げ準備に入ったもののまだ陸揚げしていないタイミングで検挙された場合は、覚醒剤輸入罪の未遂にとどまります。ただ、日本の領海内で覚醒剤を所持しているため、覚醒剤の所持罪は成立しています。

 

 

覚醒剤輸入罪の手口は?

1.営利目的で輸入する場合

営利目的で覚醒剤を輸入する場合は、運び屋が空路で日本に持ち込むことが多いです。運び屋が外国の空港で覚醒剤が入ったスーツケース等を機内預託手荷物として飛行機に搭載させ、日本国内の空港で手荷物を受け取ります。その後に覚醒剤を密売グループに渡します。

 

 

船で日本に持ちこむ場合は、暴力団が絡んだ大掛かりな輸入事案であることが多いです。「瀬取り」といって、沖合で母船から小型船に覚醒剤を積み変えて陸揚げする方式で輸入したり、コンテナ貨物に覚醒剤を隠匿して輸入することが多いです。

 

 

2.営利目的なしで輸入する場合

覚醒剤を個人輸入する場合は、海外から国際郵便物として日本国内の自宅に送ってもらうことが多いです。現地の売人から送ってもらうこともあれば、海外滞在中に現地で覚醒剤を購入して、自分で日本の自宅に国際郵便で送ることもあります。

 

 

覚醒剤輸入罪の罰則は?

覚醒剤輸入罪の罰則は営利目的の有無によって異なります。営利目的がある方が罰則が格段に重くなります。営利目的があると、大量の覚醒剤を何度も日本に持ち込む可能性が高く、個人使用目的に比べて、害悪がより大きくなるためです。

 

 

以下、営利目的の有無に応じて説明していきます。

 

 

1.営利目的での覚醒剤輸入罪の罰則

覚醒剤の営利目的輸入罪の罰則は、無期拘禁刑または3年~20年の拘禁刑です。情状により1万円~1000万円の罰金が併科されることもあります。

 

 

実際はほとんどのケースで罰金が併科されます。罰金が支払えないと1日あたり1万円として換算した期間、労役場に収容されます。覚醒剤の営利目的輸入罪で起訴されると裁判員裁判で審理されることになります。

裁判員裁判の流れ

 

 

飛行機からのとり下ろしまたは船からの陸揚げ直前に検挙された場合は、覚醒剤の営利目的輸入未遂罪が成立します。未遂罪の罰則は以下のとおり減刑されます。

 

 

覚醒剤の営利目的輸入罪覚醒剤の営利目的輸入未遂罪
無期拘禁7年~20年の拘禁刑
3年~20年の拘禁刑

1年6月~10年の拘禁刑

情状により1万円~1000万円の罰金が併科情状により5000円~500万円の罰金が併科

 

 

営利目的で覚醒剤輸入の準備行為をした場合は、覚醒剤の営利目的輸入予備罪が成立します。同罪の罰則は5年以下の拘禁刑です。

 

 

2.営利目的なしの覚醒剤輸入罪の罰則

覚醒剤を個人使用目的で輸入した場合の罰則は1年~20年の拘禁刑です。個人輸入のケースでは未遂や予備の段階で発覚することはほとんどありませんが、未遂罪の場合は、6か月~10年の拘禁刑、予備罪の場合は5年以下の拘禁刑になります。

 

 

覚醒剤を輸入すると覚醒剤取締法違反だけではなく、関税法上の禁制品輸入罪も成立します。禁制品輸入罪の罰則は10年以下の懲役または3000万円以下の罰金です。懲役と罰金は併科されることもあります

 

 

覚醒剤輸入罪と逮捕

飛行機で覚醒剤を日本に輸入する場合、最初に覚醒剤を発見するのは税関職員になります。税関職員に覚醒剤を発見されると逮捕される可能性が高いです。輸入の手口によって、現行犯逮捕されるケースと後日に通常逮捕されるケースがあります。

 

 

1.現行犯逮捕されるケース

覚醒剤を機内預託手荷物としてまたは携帯して飛行機で輸入する場合、日本国内の空港で税関職員に見つかると、その場で鑑定され覚醒剤であることが判明すれば現行犯逮捕されます。

 

 

2.通常逮捕されるケース

覚醒剤を国際郵便で輸入した場合は、税関職員に発見され鑑定によって覚醒剤であることが判明すると、後日に通常逮捕されます。逮捕状を持った警察官と税関職員が自宅に来て、逮捕されます。

 

 

覚醒剤輸入罪で逮捕されたら不起訴を目指すべき

不起訴とは被疑者を刑事裁判にかけないこととする検察官の処分です。不起訴になれば処罰されることはなく、前科がつくこともありません。

不起訴処分とは?無罪との違いは?弁護士がわかりやすく解説

 

 

不起訴となった時点で刑事手続は終了しますので、身柄も釈放されます。逆に起訴されれば、無罪にならない限り処罰され前科が付くことになります。司法統計によれば無罪となる確率は約0.1%です。

 

 

起訴されると、保釈請求が許可され保釈金を納めない限り、判決言い渡しまで勾留が続きます。実刑判決になれば、一度も外に出ることなく刑務所に収容されます。

 

 

覚醒剤輸入罪で逮捕された場合、前科を回避し早期に社会復帰するために不起訴を目指すべきです。

 

 

【一般】覚醒剤取締法違反で不起訴になる確率は?

覚醒剤輸入罪を含む全ての覚醒剤取締法違反の不起訴率は30%です。

*根拠…2023年版検察統計年報:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員

 

 

【一般】覚醒剤取締法違反で不起訴になる事例は?

覚醒剤取締法違反で不起訴になる事例として、起訴猶予により不起訴になる事例と嫌疑不十分により不起訴になる事例が挙げられます。それぞれについて解説していきます。

 

 

1.起訴猶予で不起訴になる事例

起訴猶予とは、起訴して有罪に持ち込むだけの十分な証拠があるが、被疑者にとって有利な事情を考慮して、検察官の裁量によって不起訴とする処分です。起訴猶予は刑事訴訟法248条に規定されています。

 

 

【刑事訴訟法】

第二百四十八条 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

 

 

覚醒剤輸入罪を含む全ての覚醒剤取締法違反について、不起訴となった事件のうち起訴猶予が占める割合は27%です。

*根拠…2023年版検察統計年報:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員

 

 

2.嫌疑不十分で不起訴になる事例

嫌疑不十分とは、起訴して有罪に持ち込めるだけの証拠がないときに検察官が起訴をあきらめて不起訴にする処分です。覚醒剤輸入罪を含む全ての覚醒剤取締法違反について、不起訴になった事件のうち嫌疑不十分が占める割合は63%です。

*根拠…2023年版検察統計年報:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員

 

 

覚醒剤輸入罪は嫌疑不十分での不起訴を狙うべき

1.起訴猶予での不起訴は期待できない

営利目的の有無を問わず覚醒剤輸入罪については、起訴猶予による不起訴は期待できません。

 

 

覚醒剤取締法違反で起訴猶予になるのは、覚醒剤所持のケースで押収された覚醒剤の量が少ないときです。押収された覚醒剤が0.1グラム未満の微量の場合は、起訴猶予で不起訴になる余地があります。

 

 

起訴猶予について定めた刑事訴訟法248条には、犯人の性格や年齢、境遇などの事情が列挙されていますが、覚醒剤事件のケースでは微量以外を理由として起訴猶予になることはまずありません。

 

 

そして、覚醒剤輸入のケースで、あえて0.1グラム未満の微量の覚醒剤をわざわざ海外から輸入するとは考えられません。

 

 

2.嫌疑不十分での不起訴を目指すべき

覚醒剤輸入罪で逮捕された場合、起訴猶予での不起訴は期待できず、嫌疑不十分での不起訴を目指すべきです。「鑑定により覚醒剤であると証明されているので、十分な証拠があり争う余地がないのでは?」と思われるかもしれません。

 

 

しかし、覚醒剤輸入罪は故意犯ですので、たとえ覚醒剤を日本に持ち込んだとしても、「持ち込んだ物が覚醒剤である」と認識していなかった場合は、嫌疑不十分で不起訴になる余地があります。

 

 

覚醒剤輸入罪で不起訴になるための方法は?

上で説明したように覚醒剤輸入罪で逮捕されたら、嫌疑不十分での不起訴を目指すべきです。嫌疑不十分で不起訴となるためには、捜査機関に不利な調書をとられないようにすることが必要です。

 

 

覚醒剤輸入罪の故意については、輸入した物が覚醒剤であると確信している必要まではありません。「覚醒剤かもしれないし、その他の身体に有害で違法な薬物かもしれない」といった程度の認識があれば、故意があると認定されます。

 

 

そのため、輸入した物について、「もしかしたら覚醒剤かもしれないと思っていました」といった調書をとられると、故意があったと認定され、嫌疑不十分での不起訴が困難になります。

 

 

不利な調書をとられないようにするためには、弁護士が早期に被疑者と接見し、黙秘権や供述調書への署名・押印の拒否権について説明することが必要です。

黙秘とは?黙秘の意味や使い方、デメリットについて解説

供述調書の署名押印を拒否できる?メリットや拒否の仕方について

 

 

ウェルネスではこれまで複数の覚醒剤輸入事件を扱ってきました。家族が覚醒剤輸入罪で逮捕された方は、お気軽にウェルネス(03-5577-3613)までご相談ください。