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商標法違反に強い弁護士

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

商標とは

有名ブランドにはそのブランドを象徴するマークがあります。一般の消費者は、そのマークを見て特定のブランドの商品やサービスであると認識し、購入の動機付けにします。このマークが商標です。

 

 

商標とは、自社の提供する商品やサービスを他社のものと区別するために使用する文字や図形、記号等です。

 

 

商標権とは

自社の商標を勝手に使われると、ブランドイメージが傷ついたり、本来得られたであろう利益を得る機会が失われてしまいます。

 

 

商標はブランドイメージの象徴であり、会社にとって重要な資産です。そのような商標の価値を守るための権利が商標権です。

 

 

商標を特許庁に出願し審査を経て登録されると、自社がその商標を独占的に使用することができるようになります。これが商標権です。商標権が侵害されると、差し止めや損害賠償を請求することができます。

 

 

商標法違反とは

1.商標権侵害罪

商標権を侵害すると、差し止めや損害賠償請求の対象になるだけではなく、「商標法違反」という犯罪になります。

 

 

商標は、自社が販売している特定の商品(「指定商品」といいます)やサービス(「指定役務」といいます)との組み合わせで登録されます。あらゆる商品やサービスについて登録されるわけではありません。

 

 

権利者に無断で、登録された商標を指定商品や指定役務に使用すると、商標権侵害罪になります。

 

 

商標権侵害罪の罰則は、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金です。「併科」といって、懲役と罰金の両方が科されることもあります。

 

 

2.みなし商標権侵害罪

登録商標を指定商品や指定役務に使用しなくても、商標法で定められた一定のケースに該当する場合は、商標権を侵害したものとみなされます(みなし商標権侵害罪)。

 

 

例えば、登録商標と同一でなくても類似したマークを使った商品を販売したり、販売のために所持すれば、商標権を侵害したとみなされます。

 

 

みなし商標権侵害罪の罰則は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金です。併科されることもあります。

 

 

【商標法のみなし侵害行為】

第三十七条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。

一 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用

二 指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為

三 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為

四 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為

五 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為

六 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為

七 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為

八 登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為

 

 

3.法人の罰則

法人の代表者や従業員が、業務として商標権の侵害やみなし侵害をした場合、法人にも3億円以下の罰金が科されます。

 

 

商標法違反の関連犯罪

1.詐欺罪

偽ブランド品を本物と偽って売った場合は、商標法違反に加えて詐欺罪も成立します。詐欺罪の罰則は10年以下の懲役です。

 

 

【刑法】

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

 

 

2.不正競争防止法違反

ブランドのマークが商標登録されていなくても、消費者に周知されていれば、同一のマークや類似のマークを使用する等して、他人の商品や営業と混同を生じさせた場合、不正競争防止法違反になります。

 

 

罰則は5年以下の懲役または500万円以下の罰金です。懲役と罰金が併科されることもあります。

 

 

【不正競争防止法】

第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

 

 

3.医薬品医療機器法違反

美容液の模造品を製造したり販売すると、商標法違反とは別に、医薬品医療機器法違反になります。罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。懲役と罰金が併科されることもあります。

 

 

【医薬品医療機器法】

第五十五条の二 模造に係る医薬品は、販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で製造し、輸入し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

 

 

商標法違反の事例

①有名ブランドのコピー時計を海外から仕入れて、ネットショップで「〇〇風の時計」として安価で販売した

ブランド運営会社が警察に相談したり、警察のサイバーパトロールによって事件化することがあります。

 

 

②ブランドバッグのスーパーコピーを本物として買取店に売却した

買取店は本物であると騙されて買い取っているので、商標法違反に加えて詐欺罪も成立します。買取店が警察に相談し被害届を提出することで事件化することがあります。

 

 

③有名ブランドのスカーフをリメイクしてヘアバンドを作って雑貨店で販売した

リメイクした商品にブランドのモチーフ(登録商標)が入っている場合は商標法違反になります。ブランド運営会社が調査した上で警察に相談して事件化することがあります。

 

 

商標法違反の時効

刑事事件の時効を公訴時効といいます。公訴時効が経過すると起訴できなくなるので、逮捕されることもなくなります。商標権侵害罪の時効は7年、みなし商標権侵害罪の時効は5年です。

 

 

商標法違反と逮捕・勾留

商標法違反で逮捕されたら翌日か翌々日に検察官に送致されます。検察官は送致を受けた当日中に被疑者を釈放するか、釈放しないときは裁判官に勾留を請求します。

 

 

裁判官が勾留請求を許可すれば、被疑者は勾留されます。勾留請求を却下すれば被疑者はその日のうちに釈放されます。

 

 

逮捕は最長3日ですが、勾留は原則10日、延長されれば最長20日になります。検察官は最長20日の勾留期間内に被疑者を起訴するか釈放しなければなりません。

 

 

商標法違反と起訴

2021年版の検察統計年報によれば、商標法違反で起訴される確率は64%です。

 

 

起訴には公判請求と略式請求の2種類があります。公判請求されると公開法廷で審理され、検察官から懲役刑または100万円を超える罰金刑を請求されます。

 

 

勾留されたまま公判請求されると、保釈されない限り判決日まで釈放されません。

保釈を弁護士に相談-保釈金・申請が通る確率・保釈の流れ

 

 

勾留されたまま略式請求されると請求当日に釈放されます。

逮捕・勾留中に罰金となり釈放される流れ

 

 

略式請求された場合は100万円以下の罰金が言い渡されます。罰金であっても前科になってしまいます。商標法違反で起訴された事件のうち、公判請求されたケースは34%、略式請求されたケースは66%です。

 

 

商標法違反と処分の傾向

偽ブランド品の販売期間や個数、収益等によって悪質と判断されれば、公判請求されます。前科がある場合も公判請求されやすくなります。

 

 

商標法違反に加えて詐欺罪も成立する場合は、詐欺の被害者と示談をしなければ公判請求される可能性が高くなります。公判請求され懲役刑になっても、初犯であれば執行猶予がつく可能性が高いです。

 

 

悪質なケースではないと判断されれば、略式請求されることが多いですが、被害弁償等の情状によっては起訴猶予で不起訴になることもあります。また、商標権侵害の故意がないとして嫌疑不十分で不起訴になることもあります。

 

 

商標法違反の弁護活動

1.商標法違反を認める場合

商標法違反の弁護活動としてまず考えられるのは、ブランドの運営会社と示談をすることです。示談をすれば不起訴になる可能性が高まります。

 

 

もっとも、有名ブランドの運営会社が示談に応じてくれる可能性は低いです。被害弁償金だけでも受け取ってくれれば、有利な情状として検察官に評価してもらえますが、その可能性も低いです。

 

 

そのような場合に使えるのが供託です。供託とは、債権者が受けとりを拒絶しているときに、債務者が不履行の責任を免れるために、法務局に金銭を提出し保管してもらう制度です。

 

 

例えば、家賃の額について家主と借家人との間でトラブルになっているときに、借家人が自己が相当と考える家賃を供託しておけば、家賃不払いを理由にすぐに追い出されることはありません。

 

 

供託はもともと民事のトラブルに関連して利用される制度ですが、刑事事件で被害者が弁償金の受取りを拒んでいるときにも利用できます。

刑事事件と供託

 

 

2.商標法違反を否認する場合

偽のブランド品を第三者に売ったとしても、売った人間が本物だと信じていれば、商標権侵害の故意がなく、犯罪は成立しません。

 

 

故意を否認すると、取調官は「そんなわけないだろ!」、「もしかすると偽物かもしれないと思っていただろ。」等とプレッシャーをかけてきます。

 

 

取調官のプレッシャーに屈してしまい「偽物かもしれないと思っていました」といった調書をとられると、不起訴や無罪の獲得が困難になります。

 

 

弁護士が取調べにどのように対応すべきかアドバイスし、不利な調書をとられないようにします。