- トップ
- > 【つきまとい】軽犯罪法の「追随等の罪」について弁護士が解説
【つきまとい】軽犯罪法の「追随等の罪」について弁護士が解説
ナンパをするために女性につきまとうと、体に一切触れなくても刑事事件になることがあります。それが軽犯罪法に定められている「追随等の罪」です。
このページでは「つきまとい」を含む追随等の罪について弁護士 楠 洋一郎が解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
軽犯罪法の「追随等」とは
軽犯罪法で禁止されている「追随等」とは、次の3つの行為のことです。
①他人の進路に立ちふさがって立ち退こうとしない
②他人の身辺に群がって立ち退こうとしない
③不安もしくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとう
以下、個別にみていきましょう。
①他人の進路に立ちふさがって立ち退こうとしない
「立ちふさがって」とは
相手の前方に立って行く手をふさいだり、両手を広げて前後左右に移動できないようにすることです。「立ちふさがって」というからには、相手のすぐそばに近づいている必要があります。
「立ち退こうとしない」とは
「立ち退こうとしない」とは、相手の自由な移動を妨害することを知りながら、あえてそばを離れないことをいいます。ある程度の時間的継続性が必要です。相手から、「そこをどいてください。」等と言われなくても、現に継続して移動を妨害していれば、「立ち退こうとしない」といえます。
②他人の身辺に群がって立ち退こうとしない
「群がって」とは
複数の人間で相手を取り囲んで自由に移動できないようにすることです。取り囲んでいる複数の人間がお互いに意思を通じ合って協力していることまでは必要ではありません。
「立ち退こうとしない」とは
1で説明した通りです。
③不安もしくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとう
「不安もしくは迷惑を覚えさせるような仕方」とは
通常の人であれば不安や迷惑を感じるような方法のことです。「つきまとっている相手がどう感じたか」ではなく、「通常の人がどう感じるか」が基準になります。
つきまとっている相手が不安や迷惑を感じても、通常の人なら不安や迷惑を感じないような仕方であれば、この要件には該当しません。
「通常の人が不安や迷惑を感じるか」は、つきまとった時刻や場所、周囲の状況、つきまといの継続時間、つきまとっている人の言動、相手の性別、年齢などの事情によって左右されます。
ナンパ目的で女性に話しかけながらつきまとうことは、通常の人から見れば、不安や迷惑を感じる方法と言えるでしょう。
「つきまとう」とは
執拗に相手に追随することです。ナンパ目的の場合は、相手のすぐそばまで近づいた状態で追随するケースが多いですが、単に後をつける目的で相手と一定の距離をおいて追随する場合も「つきまとう」といえます。
上で述べた「立ちふさがり」や「群がり」ほど相手に近づく必要はありませんが、これらの行為よりは、時間的に継続している必要があるといえます。
軽犯罪法違反の刑罰は?
「追随等の罪」は軽犯罪法違反になります。刑罰は拘留または科料です。拘留は1日以上1か月未満の身柄拘束、科料は1万円未満の財産刑です。
初犯で拘留になることはまずありません。処罰される場合は略式裁判で9999円の科料になることが多いです。
⇒略式裁判とは?正式裁判との違いや拒否すべきかを弁護士が解説
法廷に行く必要はなく、自宅に届いた科料の納付用紙を銀行に持参してお金を払って終わりです。駐車切符を貼られたときと同じような感覚で受けとめがちですが、科料は有罪の裁判ですので前科がつくことになります。その点が駐車切符との違いです。
⇒前科とは?前歴との違いや5つのデメリット、結婚・就職に影響は?
軽犯罪法のつきまといとストーカー規制法のつきまといの違い
つきまといは軽犯罪法だけでなく、ストーカー規制法でも禁止されています。
ストーカー規制法で禁止されているつきまといは、恋愛感情やそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を満たす目的があることが要件になっています。
また、1回つきまとっただけで即ストーカー行為となるわけではなく、反復していることが必要です。そのためナンパ目的で1回つきまとっただけでストーカーになるわけではありません。
軽犯罪法のつきまといと迷惑防止条例のつきまといとの違い
つきまといは都道府県の迷惑防止条例でも禁止されています。迷惑防止条例が禁止しているつきまといは、ストーカー規制法と異なり、恋愛感情絡みに限定されていません。単なる嫌がらせ目的のつきまといでも迷惑防止条例違反になり得ます。
もっとも、ストーカー規制法違反と同様に反復していることが必要となります。
| 軽犯罪法 | ストーカー規制法 | 迷惑防止条例 |
目的 | 目的の限定なし | 恋愛感情がらみ | 恋愛感情がらみに限定されない |
1回だけの場合 | 1回だけでも違反になる | 1回だけではストーカー行為とはならない | 1回だけでは条例違反にならない |
【つきまとい】軽犯罪法違反で前科を避けるためには
つきまとい等で刑事事件になってしまった場合は、被害者と示談をすることが大切です。初犯であれば、示談が成立すれば不起訴になる可能性が極めて高いです。
不起訴になれば刑事裁判の手続に入らないので、有罪の裁判を受けることもなく、前科はつきません。
捜査機関はつきまとい等の被害者の連絡先を加害者には教えてくれませんので示談交渉は弁護士を通じて行うことになります。