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刑事事件の控訴とは?控訴の流れや判決までの期間について

刑事事件の控訴

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

 

刑事事件の控訴とは?

控訴とは一審の判決に不服がある場合に上級の裁判所に対して改めて審理を求めることです。一審が地方裁判所でも簡易裁判所でも、控訴審は高等裁判所になります。控訴審では3名の裁判官による合議で審理されます。

 

 

控訴は間違った裁判を是正するために認められた手続であり、被告人・検察官の双方が行うことができます。

 

 

控訴審の判決に不服があれば最高裁に対してさらなる審理を求めることができます。これを上告といいます。

刑事事件の上告とは?控訴との違いや上告棄却、流れについて解説

 

 

刑事事件の控訴期間とは?

控訴できる期間を控訴期間といいます。控訴期間は一審の判決日の翌日から14日間です。14日目が土日祝日や年末年始(12月29日~1月3日)の場合は、直後の平日まで控訴期間が延長されます。

 

 

この期間内に高等裁判所宛ての控訴申立書を「一審の」裁判所に提出します。期限に遅れた場合は決定で棄却されますので注意が必要です。

 

 

通常は弁護士が控訴申立書を提出しますが、被告人が提出することもできます。勾留中の被告人が控訴申立書を提出する場合は、控訴期間内に刑事施設の職員に提出することになります(刑訴法366条)。

 

 

刑事事件の控訴審の3つの特徴

1.事件ではなく判決を審理する

一審では起訴状に書かれた事件そのものについて審理します。例えば、起訴状に「被告人がAを殺した。」と書かれている場合、「本当に被告人がAを殺したか」を審理します。

 

 

これに対して、控訴審は一審の「判決」が間違っているか否かを審理します。つまり、「本当に被告人がAを殺したか」を審理するのではなく、「被告人がAを殺したと認定して懲役20年とした一審判決が間違っているか否か」を審理するのです。

 

 

2.控訴趣意書の審理が中心

控訴審は裁判のやり直しではありません。既に終わった一審の裁判資料や証拠をふまえて、「一審の判決が間違っているか否か」を審理します。

 

 

新たな証拠に基づき新たに心証を形成するわけではないため、控訴審は一審と異なり書面での審理になじむといえます。そのため、控訴審では「控訴趣意書」の審理が中心になります。

 

 

控訴趣意書とは一審の判決が間違っているといえる理由を記載した書面です。控訴した弁護士や検察官が裁判所に提出します。

 

 

3.証拠調べはめったに実施されない

控訴審は裁判のやり直しではなく一審判決の当否を審理する手続ですので、新たに証拠調べをすることは予定されていません。

 

 

そのため、控訴審で証拠調べが実施されることは少ないです。否認事件で弁護側が請求した証拠の取調べが全て却下さることもあります。被告人質問ですら却下されることがありますし、認められても5分程度に制限されることが多いです。

 

 

証拠調べが実施されないか実施されても短時間で終了することが多いため、控訴審の公判は1回で終了することが多いです。

 

 

刑事事件の控訴の流れは?

控訴申立書を提出した後の流れは以下となります。

 

 

①1ヶ月程度で裁判資料が一審から控訴審の裁判所へ引き継がれる

②控訴審が控訴趣意書の提出期限を指定し書面で被告人と弁護士に伝える

③弁護士が提出期限までに控訴趣意書を裁判所に提出する

④約1ヶ月後に公判期日が指定される

⑤控訴趣意書を陳述する+証拠調べを行う

⑥1~3週間後に判決言渡し

 

 

【控訴すると被告人の身柄はどうなる?】

被告人が勾留されている場合、控訴すると高等裁判所近くにある拘置所に移送されます。例えば、高崎拘置支所で勾留されている被告人が東京高等裁判所に控訴すると東京拘置所に移送されます。裁判資料が一審から控訴審の裁判所に引き継がれたタイミングで移送されることが多いです。

 

 

刑事事件の控訴理由とは?

1.4つの控訴理由

控訴審では一審の判決が間違っているか否かを審理します。判決が間違っているケースは刑事訴訟法という法律によっていくつかに分類されています。

 

 

控訴する側はこの分類に従って判決が間違っていると主張しなければなりません。この分類のことを控訴理由といいます。

 

 

一審の裁判官は、①法令に従って訴訟手続を行い、②証拠に基づき事実を認定した上で、③その事実に法令を適用し、④適切な刑罰を定めることになっています。

 

 

これらの4つのプロセスに対応して、次のように4つの控訴理由が定められています。

 

①訴訟手続の法令違反

訴訟手続に法律や裁判所の規則、経験則違反があり無効になることです。

 

 

②法令適用の誤り

認定した事実に対して適用された法令が誤っていることです。

 

 

③事実誤認

証拠から認定されるべき事実と異なる事実を認定することです。

 

 

④量刑不当

刑罰が合理的な裁量を超えて重すぎる、または軽すぎることです。控訴した弁護士や検察官が控訴趣意書に控訴理由を記載します。

 

 

2.相対的控訴理由とは?

上に挙げた①から③は、判決に影響を及ぼすことが明らかである場合に限って控訴理由になります。これを相対的控訴理由といいます。

 

 

そのため、控訴趣意書で単に①~③の事由があることを指摘するだけでは不十分であり、「これらの事情がなければ明らかに判決が変わっていた」ということまで説得的に主張する必要があります。

 

 

3.絶対的控訴理由とは?

①訴訟手続の法令違反の一部は、判決への影響にかかわらず常に控訴理由になります。これを絶対的控訴理由といいます。裁判の根幹に関わる重大な違反のため、たとえ判決に影響がないとしても控訴理由になるのです。

 

 

【絶対的控訴理由】

①法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。

②法令により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。

③審判の公開に関する規定に違反したこと。

④不法に管轄又は管轄違いを認めたこと。

⑤不法に、公訴を受理し、又はこれを棄却したこと。

⑥事件の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。

⑦判決に理由を附せず、又は理由にくいちがいがあること。

 

 

刑事事件の控訴審での証拠調べ

控訴審で証拠調べを求める場合は、弁護士が証拠の内容をまとめた事実取調べ請求書と証拠書類の写しを裁判所に提出します。

 

 

これらの書類は控訴趣意書と同じタイミングで提出することが多いです。遅くとも公判期日の1週間前までには提出する必要があります。

 

 

上で述べたように控訴審は証拠調べに消極的であることから、証拠調べを求める場合はその必要性について、控訴趣意書や事実取調べ請求書で説得的に主張しておく必要があります。

 

 

刑事事件の控訴審の判決はどうなる?

控訴審の判決は次の4種類です。

 

 

1.破棄自判-控訴審が判断

控訴審が一審の判決を取り消して、自ら判決を言い渡します。破棄するときはこのパターンになることが圧倒的に多いです。

 

 

2.破棄差戻し-同じ裁判所でやり直し

控訴審が一審の判決を取り消し、事件を原裁判所に差し戻してもう一度審理させます。一審の裁判所は、控訴審の判断に拘束されるため、当初と同じ内容の判決を下すことはできません。

 

 

3.破棄移送-別の裁判所でやり直し

原裁判所が管轄がないのに審理をした場合、控訴審が原判決を破棄して別の裁判所に移送し、改めて審理をさせます。

 

 

4.控訴棄却-変更なし

控訴審が控訴申立てに理由がないとして棄却する裁判です。これによって一審の判決が維持されることになります。

 

 

控訴を申し立てる側としては、破棄自判か破棄差戻しを目標とすることになります。

 

 

控訴棄却や原判決破棄の確率は?

令和4年の犯罪白書によれば、控訴審における判決の分布は以下となります。

 

 

破棄自判

11%

破棄差戻・移送

0.4%

控訴棄却

70%

控訴取り下げ

18%

公訴棄却

0.5%

根拠:令和4年版犯罪白書:控訴審における終局処理人員(罪名別、裁判内容別)

 

 

刑事事件の控訴から判決までの期間は?

控訴を申し立ててから判決までの期間は通常4~6ヶ月程度です。勾留されている場合、原判決が破棄された場合は、控訴後の日数は全て未決勾留日数に算入されますが、棄却された場合は、一部しか算入されません。

 

 

そのため、控訴しなかった場合に比べて社会復帰が遅れることもあります。

 

 

刑事事件の控訴と不利益変更禁止の原則

被告人のみが控訴した場合、一審の判決よりも控訴審の判決が重くなることはありません。これを不利益変更禁止の原則といいます。これに対して、検察官が控訴した場合は、一審の判決より重くなることがあります。

 

 

例えば、懲役1年の実刑判決を不服として被告人のみが控訴した場合、控訴審で懲役1年を超える判決が言い渡されることはありません。

 

 

控訴して保釈請求できる?

一審で実刑判決が出ると、判決言渡しに伴い保釈は失効し身柄が拘束されます。その場合、控訴して保釈請求をすることができます。

 

 

保釈請求には、法律で定められた例外にあたらない限り許可される権利保釈と、裁判所によって保釈の必要性があると認められた場合に許可される裁量保釈の2種類があります。

 

 

実刑判決後に保釈請求をする場合は、裁量保釈しか認められません(刑事訴訟法344条)。そのため、一審での保釈に比べてハードルは高くなります。また、保釈金は一審のそれよりも2割~5割増し程度になります。

 

 

控訴保釈は国選弁護人に依頼することもできますが、控訴してから国選弁護人が選任されるまで1ヶ月程度かかるため、控訴保釈に向けてすぐに動いてくれるわけではありません。

 

 

できるだけ早く控訴保釈の請求をしてもらいたい場合は私選弁護人に依頼すべきです。

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刑事事件の控訴の弁護活動

控訴審では、一審と異なり審理が1回で終わることが多いです。情状関係の証拠を除き、証拠調べが実施されることも少ないです。そのため、控訴趣意書の内容が極めて重要になります。

 

 

控訴審では、事件そのものではなく、一審判決に誤りがないか否かを審理します。まずは弁護士が一審の判決書や裁判資料を読みこんで、控訴理由に該当する事情がないかどうかを精査します。

 

 

控訴理由に精通していなければ、説得力のある控訴趣意書を作成することは困難です。控訴審の弁護活動は控訴審の経験豊富な弁護士に依頼した方がよいでしょう。

 

 

控訴して逆転執行猶予はとれる?

一審で被害者との間で示談が成立していない場合、控訴審で示談が成立すれば、逆転執行猶予をとれる可能性が高くなります。

 

 

控訴審では書証の取調べが実施されることはほとんどありませんが、一審判決後に示談が成立した場合、示談書や示談金の領収書については取調べが実施されます。

 

 

上告審である最高裁判所で示談書や領収書が取り調べられることはないため、示談成立により逆転執行猶予を目指すのであれば控訴審が最後のチャンスになります。

 

 

控訴審で示談をとりたいという方はお早めに弁護士にご相談ください。

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刑事事件の控訴の弁護士費用

ウェルネスの控訴審の弁護士費用は以下の通りです(税込表記)。

*自白事件の弁護士費用です。否認事件についてはお話を伺ってからのお見積りとさせていただきます。

 

 

【身柄拘束あり】

着手金33万円
保釈許可の報酬金22万円
減刑の報酬金22万円

*東京以外の拘置所に収容されている方は所定の接見日当が発生します。

 

 

【身柄拘束なし】

着手金22万円
減刑の報酬金22万円

 

 

 

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