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追送致とは?再逮捕と追送致をわける4つのポイント等を解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
追送致とは
追送致とは、余罪について事件として立件したが、再逮捕はせず、書類と証拠物のみ検察官に送致(いわゆる「書類送検」)することです。
【追送致の根拠】
犯罪捜査規範第197条第1項 事件の送致又は送付後において,当該事件に係る被疑者につき,余罪のあることを発見したときは,検察官に連絡するとともに,速やかにその捜査を行い,これを追送致(付)しなければならない。 |
全ての余罪が再逮捕されたり追送致されるわけではありません。たとえ被疑者が「他にもやりました。」と自白していても、被害申告がなく防犯カメラ等の証拠もない場合は、そもそも事件として立件されません。
そのため、追送致や再逮捕の対象になるのは、あらゆる余罪ではなく、「本人の供述以外に証拠があり刑事事件として立件された余罪」になります。
追送致と再逮捕を分ける4つのポイント
余罪が事件として立件された場合は、再逮捕されるか追送致されるかのどちらかになります。それでは、何が再逮捕と追送致を分けるのでしょうか?
結論から言うと、次の4つのポイント全てにあてはまると、再逮捕されずに追送致される可能性が高くなります。
①余罪について自白していること
②自白以外の証拠が揃っていること
③余罪が軽微な犯罪であること
④余罪が単独犯であること
このうち重要なポイントは①です。余罪について素直に自白していれば、よほど重大な事件でない限り、③や④に該当しなくても、追送致されることが少なくありません。
逆に余罪について否認していれば、③や④に該当しても、再逮捕される可能性が極めて高くなります。
追送致の流れ
典型的な追送致の流れは次のとおりです。
8月1日 | 強制わいせつで逮捕 |
8月21日 | 強制わいせつで起訴 |
9月15日 | 強制わいせつの余罪で追送致 |
追送致イコール釈放ではない
このように余罪が追送致されるタイミングは、最初の事件で被疑者が逮捕・起訴された後になることが多いです。
そのため、仮に再逮捕されずに追送致されたとしても、最初に逮捕・起訴された事件で保釈されていない限り、起訴後勾留が継続していますので、実際に釈放されるわけではありません。
追送致のメリットとデメリット
1.追送致のメリット
追送致のメリットは保釈を請求する時期が早くなるということです。保釈された後に再逮捕されるのであれば、保釈が認められても意味がありませんので、保釈請求はしません。
これに対して、追送致されるのであれば、余罪で身柄をとられるわけではないため、保釈されても影響がないことになります。
再逮捕するか追送致するかは検察官が決めることですが、弁護士が検察官に確認すれば、教えてくれることが多いです。
検察官から「追送致にする予定です」と言われれば、速やかに保釈請求の準備に入ることができます。逆に「再逮捕する予定です」と言われれば、保釈請求は当分の間見合わせることになります。
2.追送致のデメリット
追送致のデメリットは、「嫌疑不十分」で不起訴を獲得することができなくなるということです。
追送致として処理されるためには、被疑者が余罪について自白し、自白調書が作成されていることが必須です。
捜査機関としても、「本人も認めているし、再逮捕して集中的に取調べをしないでも起訴までもっていける。」と安心できるからこそ追送致になるのです。
逆に言うと、追送致を目指すのであれば、「自分が犯人ではない」とか「正当防衛である」等と否認したり、黙秘をすることによって、嫌疑不十分での不起訴を求める道が閉ざされてしまうことになります。
もっとも、追送致されたからといって必ず起訴されるわけではありません。性犯罪など被害者がいる犯罪の場合は、被害者との間で示談をまとめることによって、「起訴猶予」で不起訴を獲得できる余地はあります。
追送致になりやすい3つの犯罪
次の3つの犯罪では余罪があっても追送致になることが少なくありません。
①オレオレ詐欺
②強制わいせつ
③業務上横領
①オレオレ詐欺
オレオレ詐欺の受け子であれば、最初の事件で逮捕された後、余罪について追送致となる可能性が十分にあります。
かけ子の場合は、共犯者間で密接に連絡をとりあっているため、受け子よりは証拠隠滅の可能性が高いと判断されやすく、追送致の可能性は低くなります。ただ、何件か再逮捕された後に捜査の終盤で追送致になる余地はあるでしょう。
②強制わいせつ
強制わいせつの中でも、「路上で被害者の胸や尻に一瞬触って逃げた」という相対的に軽微なケースでは、余罪について正直に供述していれば、再逮捕されずに追送致になることがあります。
被害者を押し倒して長時間にわたってわいせつ行為をしたり、凶器を使用した悪質なケースでは、自白しても再逮捕される可能性が高いです。同様に、強制性交等についても、自白していても追送致の可能性は低くなります。
③業務上横領
業務上横領のケースでは、長期間にわたって多数回の着服をしていることが通常です。その場合、多くの着服をまとめてひとつの事件として逮捕することはまずありません。
一部の着服について逮捕した後に、残りの着服を何回かに分けて、それぞれ再逮捕するか追送致にするかを判断します。証拠が十分に確保されており、本人が自白していれば、追送致されることもあります。
*覚せい剤取締法違反については、覚せい剤の所持で逮捕された後に、尿検査で使用の余罪が発覚すれば、追送致ではなく再逮捕されることが多いです。いずれにせよ追起訴されることになります。
追送致と弁護士
追送致には保釈請求のタイミングが早くなるというメリットがありますが、否認・黙秘した上で嫌疑不十分での不起訴を獲得できなくなるというデメリットもあります。
追送致を狙うか、再逮捕を覚悟してでも嫌疑不十分での不起訴を狙いにいくかは、事件の性質や捜査機関がおさえている証拠の状況などによって変わってきます。
そのため、余罪がある場合は、なるべく早期に弁護士に相談して、対応を協議するようにするとよいでしょう。
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