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村田兆治氏はなぜ暴行罪で逮捕されたのか?弁護士が解説

2022年9月23日、村田兆治氏が暴行罪で逮捕されました。村田容疑者は「マサカリ投法」で知られ、通算215勝をあげた有名な元プロ野球選手です。

 

 

報道によれば、現場は羽田空港の保安検査場、被害者は30代の女性検査員、村田容疑者が被害者の左肩を右手で押す暴行を加えた疑いとのこと。

 

 

村田容疑者は職員の通報により駆けつけた警察官に現行犯逮捕されました。携帯電話を手にして何度も金属探知機にひっかかり腹を立てていたようです。

 

 

村田容疑者は、「左肩を押していない。」、「前に立ちはだかったからどかしただけ。」、「殴ったり蹴ったりしていない。」と容疑を否認しているようです。

 

 

村田容疑者がなぜ逮捕されたかについて刑事事件に詳しい弁護士が解説しました。

 

 

 

 

村田兆治容疑者は現行犯逮捕の要件を満たしているか?

村田容疑者は職員の通報により駆けつけた警察官に現行犯逮捕されました。

 

 

刑事訴訟法という法律で、現行犯人は、警察官であろうと一般市民であろうと逮捕状なしで逮捕できるとされています。

 

 

【刑事訴訟法213条】

現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

 

 

「現行犯人」とは、現に犯罪を行っている者と現に犯罪を行い終わった者をいいます。

 

 

【刑事訴訟法212条1項】

現に罪を行い、又は、現に罪を行い終わった者を現行犯人とする。

 

 

「現に犯罪を行っている者」であることや「現に犯罪を行い終わった者」であることは、逮捕する者が現場の状況等から直接把握できなければなりません。

 

 

被害者が「暴行された。」と言っているだけで、他に犯罪があったことを確認できない場合は現行犯逮捕することはできません。

 

 

村田容疑者のケースでは、被害者以外に目撃者が複数いたと考えられ、防犯カメラにも暴行の状況が写っていたとのことですので、逮捕者である警察官にとって、村田容疑者が「現に罪を行い終わった者」であることが明白といえます。

 

 

そのため現行犯逮捕の要件を満たしていると言えます。

現行犯逮捕とは?逮捕状なしで誰でもできる逮捕を弁護士が解説

 

 

村田兆治容疑者を現行犯逮捕する必要性はあるか?

1.逮捕の必要性

現行犯逮捕の要件を満たしているとしても、明らかに逮捕の必要性がなければ、現行犯逮捕することはできません。

 

 

刑事訴訟規則という最高裁判所が作ったルールで、令状逮捕の必要性について以下のように定められています。

 

 

【刑事訴訟規則143条の3】

逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪障を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。

 

 

現行犯逮捕の必要性についても、刑事訴訟規則に準じて、以下の要素に基づいて、「証拠隠滅をするおそれがあるか」、「逃亡をするおそれがあるか」といった観点から判断します。

 

 

①被疑者の年齢

②被疑者の境遇

③犯罪の軽重

④犯罪の態様

⑤その他の事情

 

 

2.村田兆治容疑者に逮捕の必要性は認められない?

村田容疑者について上記の要素を検討すると以下のようになります。

 

 

被疑者の年齢

72歳と高齢である。

被疑者の境遇

有名人であり名球会入りした元プロ野球選手として社会的地位も高い。

犯罪の軽重

暴行罪の最高刑は懲役2年。もっとも、初犯であれば起訴されても罰金刑にとどまる可能性が高い。

→犯罪としては軽い。

犯罪の態様

容疑は肩を強く押したというもの。殴ったり蹴ったりしたわけではなく悪質性は低い。

突発的な犯行であり、計画性も認められない。

その他の事情

前科・前歴なし

 

 

以上の内容をふまえると、村田容疑者に逃亡するおそれや証拠隠滅のおそれはなく、明らかに逮捕の必要性がないとも考えられます。

 

 

それでは、なぜ村田容疑者は逮捕されたのでしょうか?

 

 

3.否認すると逮捕の必要性が認められやすい

報道では村田容疑者は、「左肩を押していない。」、「前に立ちはだかったからどかしただけ。」、「殴ったり蹴ったりしていない。」と容疑を否認しています。

 

 

「前に立ちはだかったからどかしただけ。」という言葉から、被害者の身体に接触した事実は認めているようです。

 

 

暴行罪の「暴行」とは、人の身体に対し不法に有形力を行使することです。友人同士がふざけあって手を出したり、恋人同士が抱き合ったりすることは、「不法に」の要件が欠けるため、暴行にはあたりません。

 

 

「前に立ちはだかったからどかしただけ。」という村田容疑者の主張は、力の行使はあるものの常識的に許される範囲の行為であって不法性がないという意味だと思われます。つまり「暴行」にあたらないとして容疑を否認していることになります。

 

 

日本の刑事司法では、このように容疑を否認している場合は、容疑を認めている場合に比べて、証拠隠滅のおそれが大きいと認められやすい傾向があります。

 

 

現場にかけつけた警察官も、「否認しているので、逮捕しなければ被害者や目撃者に圧力をかけて、自分に有利になるように供述を変更させようとするのではないか?」と考えて、村田容疑者を現行犯逮捕したと考えられます。

 

 

もっとも、軽微な犯罪であり勾留するまでの必要性はないと思われますので、一両日中に釈放される可能性が高いです(追記:検察官に勾留請求されず9月25日に釈放されました。)。

 

 

突発的な逮捕を防ぐためのリスクコントロール

村田容疑者のように、逮捕されただけでなく実名報道までされてしまうと、社会的に大きなダメージを負うことになります。

 

 

暴行罪は、突発的な口論がエスカレートしてつい手を出してしまった場合にも成立する犯罪であり、誰もが当事者になり得ます。

 

 

仮に暴行してしまったとしても、行き過ぎがあったのであれば、頭を冷やして被害者や警察官に「ごめんなさい。」と素直に謝れば、よほどのことがない限り逮捕されることはないでしょう。逮捕されなければ報道される可能性も非常に低いです。

 

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しました。

 

 

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