タクシー運転手への暴行等について弁護士が解説

タクシー運転手への暴行

 

 

このページではタクシー運転手へ暴行等をしたケースについて弁護士 楠 洋一郎が解説しています。

 

 

 

 

タクシー運転手への暴行

タクシー運転手に対して殴る、蹴るといった暴力を振るったときは、暴行罪が成立します。刑罰は、①2年以下の懲役、②30万円以下の罰金、③拘留、④科料のいずれかです。

 

 

暴行は、タクシー運転手の身体に直接接触するものに限られません。タクシーの後部座席を蹴ったりヘッドレストを叩くなどして、間接的に運転手の身体に衝撃を与えた場合も暴行になります。

 

 

タクシー運転手への暴行と傷害

タクシー運転手に暴行してけがをさせたときは傷害罪が成立します。刑罰は暴行罪よりずっと重く、15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

 

 

タクシー運転手に暴行した場合、加害者が思っている以上にけがが重いことがあります。タクシー運転手は、車内では基本的に前方を見ていますので、後方の座席から不意に殴られると防御の姿勢をとることができず、むち打ち症になることがあります。

 

 

車外での暴行であっても、タクシー運転手は高齢の方が多く、軽く押しただけで転倒してしまい大けがにつながることもあります。

 

 

タクシー運転手への脅迫

タクシー運転手に暴言を吐いただけで犯罪になるわけではありません。もっとも、「殺すぞ。」等と生命・身体に危害を加える内容の発言をした場合は脅迫罪が成立します。刑罰は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

 

 

タクシー運転手への暴行・脅迫と強盗

タクシーの売上金を奪いとるために、運転手を暴行・脅迫し現金を持ち去ったときは、強盗罪が成立します。刑罰は懲役5年~20年です。

 

 

運転手が負傷したときは強盗致傷罪になります。刑罰は無期懲役または懲役6年~20年です。強盗致傷罪で起訴されると裁判員裁判で審理されます。

 

 

当初はタクシー料金を払うつもりだったが、運転手とトラブルになって暴行した後に、そのままタクシー料金を払わずに立ち去った場合は、強盗罪は成立せず暴行罪または傷害罪にとどります。

 

 

強盗罪が成立するためには、当初から代金支払を免れるという目的があって暴行や脅迫をする必要があるからです。

 

 

もっとも、最初からそのような目的があったかなかったかは相当に微妙ですので、タクシー料金を払わずに立ち去れば強盗罪で逮捕されるリスクもあります。

 

 

タクシー車両への器物損壊

タクシー運転手への暴行等とは別に、タクシーの座席やドアを蹴るなどして破損させると器物損壊罪が成立します。刑罰は、①3年以下の懲役、②30万円以下の罰金、③科料のいずれかです。

 

 

タクシー運転手への暴行等と逮捕

タクシー運転手へ暴行等をした場合、加害者は泥酔していることが多く、現行犯逮捕されることが多いです。

 

 

逮捕されても、暴行、傷害、脅迫、器物損壊であれば、容疑を認めて反省の態度を示せば、身元が不安定であるとか執行猶予中といった事情がない限り、勾留されることなく1~3日で釈放されることが多いです。

 

 

ただ、「酔っていて覚えていない」と言い続けた場合は、否認事件として扱われ、勾留される可能性も十分にあります。いったん勾留されれば原則10日間、警察署に留置されます。

 

 

タクシー車内の状況は車載カメラで撮影されているため、「覚えていない」と言って通用するものではありません。早期に弁護士が接見し、認めるべき部分は素直に認めるようアドバイスすることが大切です。

 

 

タクシー運転手への強盗(致傷)については、勾留される可能性が非常に高いですが、勾留期間内に示談が成立すれば、起訴されず釈放される余地があります。

⇒逮捕直後の流れ

 

 

タクシー運転手への暴行等と後日逮捕

タクシー運転手に暴行等をした場合、暴行後に逃げても身元を特定され、後日逮捕されることがあります。身元の特定に至るルートとしては次の3つが考えられます。

 

 

1.自分の携帯電話からタクシー会社に電話をしてタクシーを呼んだとき

警察がタクシー会社の配車状況を調べれば、加害者の携帯電話番号がわかります。その後、携帯電話会社に照会すれば身元が判明します。

 

 

2.飲食店等の従業員にタクシーを呼んでもらったとき

1と同様にタクシー会社の配車状況を調べれば、電話をした店を特定することができます。その後、店の従業員に対する聴き取りによって加害者を絞り込んでいきます。

 

 

3.流しのタクシーを利用したとき

この場合、加害者の電話番号は痕跡としては残りませんが、車載カメラによって車内の状況が全て録画されていること、タクシーに乗車する時点で通常行き先(=自宅最寄りの場所)を告げていることから、防犯カメラの解析等によって足がつくことが考えられます。

 

タクシー運転手に対する暴行等のケースでは、後日逮捕される可能性はそれほど高くありません。現場で検挙されたときは、泥酔していて話を聴ける状況になく、自傷他害の危険もあるので現行犯逮捕されやすいですが、冷静になった後は捜査への協力を期待できると考えられるからです。

 

 

ただ、強盗(致傷)のケースでは、後日逮捕される可能性が非常に高いです。

 

 

タクシー運転手への暴行等と報道

1.暴行、傷害、脅迫、器物損壊

一般の方については、逮捕されなければ報道される可能性は低いです。

 

 

ただ、公務員、有名企業の従業員、マスコミ関係者、医師、弁護士、教職員が車内で悪質な暴言を繰り返しているようなケースでは、車載カメラの映像とともに実名報道される可能性がありますので注意が必要です。

 

 

逮捕された場合は、上記の職業以外の方でも実名報道されることがありますが、重大事件ではなくありふれた類型のものであることから、報道されるケースはそれほど多くはありません。

 

 

2.強盗(致傷)

職業を問わず、逮捕され実名報道される可能性が高いです。

 

 

タクシー運転手への暴行等と刑事処分

1.暴行、傷害、脅迫、器物損壊

初犯の方であれば被害者と示談が成立すれば、不起訴になる可能性が非常に高いです。器物損壊は「親告罪」といって、告訴がなければ起訴できない犯罪ですので、示談をして告訴を取り消してもらえれば、確実に不起訴になります。

 

 

2.強盗(致傷)

初犯で、タクシー運転手のけがの程度が軽ければ、示談成立により不起訴になる余地はあります。示談が成立していれば、もし起訴されても執行猶予を獲得できる可能性が高いです。

 

 

タクシー運転手への暴行等と示談

1.むち打ち症のケース

むち打ち症は症状固定まで半年~1年程度かかることが多いです。症状固定とは、「治療してもこれ以上改善しない状態」のことです。

 

 

民事の交通事故のケースでは、症状固定した後に示談交渉に入りますが、刑事事件の場合、検察官は症状固定まで処分を待ってくれるわけではありません。そのため、症状固定を待つことなく早期に示談交渉に入る必要があります。

 

 

2.器物損壊と示談

器物損壊の示談の相手は、タクシーの所有者となります。タクシーの所有者はタクシー会社ですが、個人タクシーの場合は、運転手が所有者になります。

 

 

タクシー運転手に暴行すると同時にタクシーを破損させたときは、個人タクシーであれば、示談の相手は運転手のみですが、そうでなければ、運転手(暴行)と会社(器物損壊)の双方と示談をすることが必要です。

 

 

3.反論が必要なケースもある

常務経験の長いタクシー運転手の方は、類似の事件や事故を経験していることが多く、交渉慣れしている方が少なくありません。

 

 

真摯に謝罪し、被害者のお話に耳を傾けることは必要ですが、不当に高額な請求をされた場合は、きちんと反論することも必要です。

 

 

「酔っていて覚えていない」で無罪になる?

泥酔していて事件について覚えていなかったとしても、事件当時は、タクシー運転手に行き先を告げたり、「態度が悪い」等と言ったり、意味のある言動をしていることが多いです。これらは責任能力があったことを裏づける事情になります。車載カメラにもこれらの言動が録画されています。

 

 

そのため、酔っていて覚えていないという理由で無罪になることはないでしょう。

 

 

タクシー運転手への暴行等と弁護士選びのポイント

タクシー運転手への暴行等は、タクシー強盗のケースを除いて、泥酔しているときに引き起こされることがほとんどです。お酒絡みという特質上、事件は週末や連休前の日に集中しています。

 

 

早期釈放のためには、弁護士にも土日や休日中に動いてもらうことが必要になりますので、それが可能な弁護士に依頼するとよいでしょう。

 

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