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置引きに強い弁護士-置き引きの犯人特定の流れや示談について解説

置き引きに強い弁護士

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

 

置引きとは?

置引きとは持ち主がある場所に置いた物や置き忘れた物をとることです。置引きは法律用語ではなく、置引き罪という犯罪はありません。

 

 

置引きはどんな罪になる?

置引きはどんな罪になる?

 

1.置引きは窃盗罪か占有離脱物横領罪

置引きは窃盗罪か占有離脱物横領罪になります。

 

 

窃盗罪は物を支配している人からその物をとる犯罪です。物を支配している状態のことを「占有」といいます。他人の占有を侵害すると窃盗罪になります。占有離脱物横領罪は、誰も占有していない物をとったときに成立する犯罪です。

 

 

置引きのケースで窃盗罪になるか占有離脱物横領罪になるかは、「置引きした物を占有している人がいるか否か」によって決まります。

 

 

占有者がいれば、他人の占有を侵害したことになり、窃盗罪が成立します。占有者がいなければ、占有を離れた他人の物を横領したとして、占有離脱物横領罪が成立します。

 

 

2.占有の有無はどう判断する?

占有の有無は、持ち主が物から離れていた時間や距離、意識してそこに置いたのか置き忘れたのか、物が置かれている場所の状況(不特定多数が立ち入り可能か)などの事情から判断されます。

 

 

【判例で占有が認められたケース】

①バスの待合室に鞄を置いたまま夕食をとるため約200m離れた食堂に行った場合

②公園のベンチにポシェットを置き忘れた後、約27m歩いた場合

 

 

【判例で占有が否定されたケース】

③大規模スーパーの6階にあるベンチに財布を置き忘れたまま地下1階に移動し、財布が約10分間放置されていた場合

 

 

【解説】

①のケースでは、犯人は被害者のそばに座っており、鞄が被害者の物であることを知っていながらとったことが重視され、被害者の占有が認められました。

窃盗罪になります。

 

 

②のケースでは、被害者がポシェットを置き忘れた直後に犯人がそれをとったことが重視され、被害者の占有が認められました。

窃盗罪になります。

 

 

このように、物を置き忘れてからとられるまでの時間が短いほど、被害者の占有は認められやすくなります。

 

 

③のケースでは、被害者が6階から1階まで移動していたことや、約10分間にわたって財布がベンチの上に放置されていたことが重視され、被害者の占有が否定されました。

占有離脱物横領罪が成立します。

 

 

置引きの罰則は?

置引きの罰則

 

置引きは窃盗罪または占有離脱物横領罪になります。窃盗罪の方が占有離脱物横領罪よりも刑罰が重くなります。罰則は次の通りです。

 

窃盗罪

10年以下の懲役または50万円以下の罰金

占有離脱物横領罪

1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料

 

*占有離脱物横領罪は遺失物等横領罪ともいいます。

 

 

置引きの時効は?

置引きの時効

 

刑事事件の時効を公訴時効といいます。公訴時効が経過すると起訴できなくなるので、逮捕されたり取調べを受けることもありません。置引きの公訴時効は以下となります。

 

窃盗罪

7年

占有離脱物横領罪

3年

 

 

置引きのよくあるケース

置引きのよくあるケース

 

1.ATMでの置引き

置引きでよくあるのがATMで前の利用者が取り忘れた紙幣を持ち去るケースです。取り忘れた直後でまだ被害者が同じ店舗内にいれば、被害者の現金に対する占有を侵害したとして、窃盗罪が成立する可能性が高くなります。

 

 

被害者が現金を取り忘れたまま店舗の外に出てしまった場合、すぐに気づいて戻ってきた場合を除き、被害者の占有は否定される可能性が高いです。

 

 

もっとも、被害者の占有が否定されたとしても、銀行の占有が及んでいると考えられることから、占有離脱物横領罪ではなく窃盗罪が成立する可能性が高いです。

 

 

2.パチンコ店での置引き

パチンコ台や周辺に置かれている他人の出玉やICカードを置引きするケースも少なくありません。被害者が一時的にトイレに行ったり、他の台で打っている間に置引きしたケースでは、被害者の占有が認められ、窃盗罪が成立します。

 

 

被害者が置き忘れたまま帰ってしまった場合、被害者の占有は認められませんが、パチンコ店の管理者である店長の占有が及んでいるとして、窃盗罪が成立する可能性が高いです。

 

届けるつもりがあっても置引きになる?

届けるつもりがあっても置引きになる?

 

交番に届けるつもりで他人の財布等をポケットや鞄に入れた場合、入れた時点では、「自分の物にしよう」とする意思(不法領得の意思)がなく、犯罪は成立しません。

 

 

その後、気が変わって自分の物にしてしまった場合は、自分の物にした時点で占有離脱物横領罪が成立します。

 

 

占有離脱物横領罪は、占有を離れた他人の物だけではなく、委託によらずに占有することになった他人の物を横領した場合も成立するからです。

 

 

もっとも、取調官に「後で交番に届けるつもりでした」と言うだけで、占有離脱物横領として扱われるわけではありません。

 

 

物を手にしたときの時間(日中か夜の遅い時間か)や場所(周囲に交番があるか)、本人の事情(当日の予定)から、届出の意思はあったがすぐに届けることができなかったことを納得してもらう必要があります。

 

 

置引きの犯人特定の流れは?

置引きの犯人特定の流れ

 

1.銀行での置引き

被害者が警察に相談すると、警察が銀行に依頼して防犯カメラ映像を確認します。犯人と思われる人物が写っていれば、ATMの利用履歴からその人物の氏名や住所を特定します。その後、警察が被疑者とコンタクトをとり、出頭を要請します。警察官が被疑者の自宅を訪ねてくることが多いです。

 

 

2.パチンコ店での置引き

被害者からの申告によって従業員が防犯カメラ映像を確認します。疑わしい人物がいれば、従業員がマークし、次に同じ人がパチンコ店に来たときに警察に通報します。通報を受けて警察官が店に来て、被疑者を署まで連行します。

 

 

3.その他のケース

施設のロッカーや更衣室に置かれている物を持ち去った場合、防犯カメラで特定され、後日警察から連絡がくるケースが多いです。会員カード等をタッチして入退館した場合はカードに個人情報が紐づいているので容易に特定されます。

 

 

置引きで逮捕される?

置引きで逮捕されるケース

 

置引きは衝動的に行われることが多く、被害金額もそれほど高額にはなりません。偶然見つけたことがきっかけになるため、万引きのように常習性や依存性があるわけでもありません。

 

 

このような特徴から置引きは通常の窃盗に比べて悪質性が低いと判断されやすく、逮捕されることは少ないです。もっとも、以下のケースでは逮捕される可能性が十分にあります。

 

 

① 置引きしているところを見つかり逃げた場合

② 警察からの度重なる出頭要請を無視した場合

③ 確実な証拠(防犯カメラ)があるにもかかわらず否認を続けた場合

④ 執行猶予中や累犯の場合

⑤ 住居不定の場合

 

 

逮捕された場合は早期釈放に向けた弁護活動を行ないます。置引きは犯罪としては軽微な部類に入りますので、①~③のケースでは勾留を阻止できる可能性が高いです。

早期釈放を実現する

 

 

置引き事件の流れは?

置引き事件の流れ

 

1.逮捕されたとき

置引きで逮捕されれば、翌日か翌々日に検察庁に連行され、検察官の取調べを受けます。検察官が勾留の要件(逃亡のおそれ、証拠隠滅のおそれ等)があると判断すると、裁判官に勾留を請求します。

 

 

勾留請求の当日か翌日に被疑者は裁判官の勾留質問を受けます。裁判官も勾留の要件があると判断すると、検察官の勾留請求を許可し、被疑者は勾留されます。

 

 

勾留の期間は原則10日、延長されれば最長20日になります。検察官は勾留期間内に被疑者を釈放するか起訴しなければなりません。

 

 

検察官や裁判官が勾留の要件がないと判断すると、被疑者は勾留されずに釈放されます。

逮捕後の流れや釈放のタイミングについてわかりやすく解説

 

 

2.逮捕されないとき

置引き事件では逮捕されないケースの方が多いです。逮捕されない場合は、警察で1,2回取調べを受けた後、書類送検されます。

書類送検とは?逮捕との違いは?会社にバレる?流れも解説

 

 

その後、担当の検察官が起訴するか不起訴にするかを決めます。最初に警察から連絡を受けてから書類送検まで2,3か月、書類送検されてから起訴・不起訴の処分が決まるまで2か月程度かかることが多いです。

在宅事件の流れは?逮捕される身柄事件との違いや起訴・不起訴について

 

 

置引きと示談

置引きの示談

 

1.置引きで示談をするメリット

初犯の方の場合、置引きの被害者と示談をすれば極めて高い可能性で不起訴になります。不起訴とは、被疑者を刑事裁判にかけないことです。刑事裁判にかけられなければ前科がつくこともありません。

不起訴とは?無罪との違いや前歴・罰金との関係

 

 

2.置引きの示談金の相場

置引きは万引きに比べて被害感情がそこまで厳しくないことが多く、弁護士が適切に交渉すれば、妥当な金額で示談がまとまることが多いです。

 

 

置引きの示談金の相場は<置引きした物の財産的な価値+迷惑料として数万円程度>になります。

 

 

置引きの示談以外の弁護活動

置き引きの示談以外の弁護活動

 

1.謝罪する

示談という形で被害を弁償することも重要ですが、被害者に真摯にお詫びすることも必要です。

 

 

置引き事件の被害者は、加害者と会いたくないと思っている方がほとんどですので、まずは本人に謝罪文を書いてもらい、弁護士を通じて被害者にお渡しします。

 

 

2.占有離脱物横領にとどまることを主張する

財布等を手にした時点で届ける意思がある場合は、その後に自分の物にしても、刑の重い窃盗罪ではなく軽い占有離脱物横領罪が成立するにとどまります。

 

 

現場周辺の状況や本人の当日の予定等から「当初は届けるつもりだった」という主張が可能な場合は、取調べで「最初からとるつもりでした」という内容の調書をとられないよう、弁護士が本人をサポートします。

 

 

弁護士が取調べに同行することもあります。

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置引きの弁護士Q&A

Q:ATMだけが設置されている無人の出張所で、取り忘れの紙幣をとった場合は、誰の占有も認められず、占有離脱物横領罪にとどまると考えてよいのでしょうか?

 

預金を引き出した人が出張所の外に出た直後にとったようなケースでは、その人の占有が認められ、窃盗罪が成立する可能性が高いです。

 

 

出張所を出てしばらくしてからとったケースでも、出張所の管理責任者の占有が認められ、窃盗罪が成立する余地が十分にあります。

 

 

無人の出張所とはいっても、①監視カメラで常時モニターされ、②営業所内のインターホンを通じていつでも係員と話をすることができ、③何かあればガードマン等がいつでも派遣されるような体制になっているのが通常ですので、管理責任者のコントロールが及んでいると言えるからです。

 

 

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