- トップ
- > 裁判員裁判の総合案内
- > 裁判員裁判の流れ
裁判員裁判の流れ
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
裁判員裁判の流れと通常裁判の流れ
裁判員裁判の流れ(イメージ)
月曜日 | 裁判員が選任される。 |
火曜日 | |
水曜日午前 | 引き続き証拠調べを行う。 |
水曜日午後 | 引き続き証拠調べを行う。その後、検察官・弁護士・被告人が意見を述べる。 |
木曜日 | 裁判官と裁判員が評議をする。 |
金曜日午後 | 引き続き評議をする。 |
金曜日午後 | 判決を言い渡す。 |
通常裁判の流れ(イメージ)
4月1日 | |
5月1日 | 第2回公判(証拠調べを行う) |
6月1日 | 第3回公判(証拠調べを行う→検察官・弁護士・被告人が意見を述べる) |
7月1日 | 判決期日(判決を下す) |
上に挙げたケースでは、裁判員裁判は、月曜日から金曜日まで連続して実施されています。
これに対して、通常裁判は1ヶ月に1回のペースで実施されています。期間についても、裁判員裁判が5日であるのに対し、通常裁判では3か月かかっています。
両者の違いとまとめると以下のようになります。
| 裁判員裁判 | 通常裁判 |
開廷のペース | 毎日(土日祝日を除く) | 約1か月に1度 |
裁判の期間 | 1~2週間 | 1か月~1年 |
このように裁判員裁判と通常裁判では、開廷のペースと裁判の期間が大きく異なります。どうしてこのような違いが生じるのでしょうか?
ポイントは裁判員の存在です。一般市民である裁判員は日常生活を営みながら裁判に参加します。裁判員に重い負担をかけないよう、短期間で集中的に審理が行われるのです。
裁判員裁判の流れ-準備段階
公判前整理手続
裁判員裁判は、通常裁判とは異なり、1~2週間という短期間で集中的に審理が行われます。これだけのハイペースで審理を行うためには、入念な事前準備が必要となります。この準備のための手続を公判前整理手続(こうはんぜんせいりてつづき)と呼びます。
公判前整理手続は、裁判所において、裁判官、検察官、弁護士のみによって進められます。この段階では裁判員はまだ選任されていません。そのため、裁判員がこの手続に参加することはありません。
公判前整理手続の期間は4ヶ月~10か月前後です。手続中は1、2ヶ月に1回のペースで期日が開かれます。正式な期日とは別に非公式の打合せが行われることもよくあります。
公判前整理手続の内容
公判前整理手続で行われることは、主として次の3点です。
① 争点を整理する
② 取り調べる証拠を決める
③ 裁判のスケジュールを決める
①(争点整理)について
これから始まる裁判員裁判で何が争点になるのかを整理します。まず検察官が証拠によって証明しようとする事実を明らかにします。
次に弁護士が裁判でどのような主張をするのかを明らかにします。具体的には、起訴された事実を認めるのか否認するのか、否認するのであれば否認の理由を明らかにします。
例えば、殺人事件を例にとると次のような主張が考えられます。
「起訴状に記載されている殺人の事実を認める。」
「被告人は事件当時その場にいなかった。したがって無罪である。」
「被告人は相手を殺したけれども正当防衛である。したがって無罪である。」
「被告人は相手を死なせてしまったが殺意はなかった。したがって殺人罪ではなく傷害致死罪が成立する。」
公判前整理手続の段階で争点を整理することにより、裁判員裁判では争点にフォーカスして速やかに審理を進めることが可能になります。
②(証拠開示)について
裁判所が、これから始まる裁判員裁判でどのような証拠を取り調べるかをあらかじめ決めておきます。まずは立証責任を負っている検察官が、必要な証拠の取調べを裁判所に請求します。
裁判所は、弁護士の意見を聞いた上で、その証拠の取調べをするかどうかを決定します。弁護士が意見を言うためには、あらかじめ検察側の証拠を検討しておく必要があります。そのため、まずは検察官が弁護士に証拠を開示します。
弁護士がこれらの証拠を検討し、証拠についての意見を言ったり、裁判でどのような主張をするのかを決めていきます。
弁護士がどのような主張をするのかを決めると、それを証明するための証拠を検察官に開示します。検察官も弁護側の証拠について意見を述べます。
このように事前に取り調べる証拠を決めておくことによって、スムーズな審理が可能になるのです。
③(スケジュールの決定)について
裁判員裁判では、毎日午前10時から午後5時頃まで審理が行われます。通常は判決を宣告するまで数日~1週間程度しか時間がありません。このような状況で審理をスムーズに行うためには、事前に細かいスケジュールを決めておく必要があります。
具体的には、証拠の取調べの順序や取調べ時間を事前に決めておきます。証人であれば「主尋問が○分、反対尋問が○分」、供述調書などの書面であれば、「朗読や説明の時間が○分」などと細かく決めておきます。
公判前整理手続で、分単位のスケジュール表を作成し、裁判所が弁護士と検察官に交付します。
裁判員裁判の審理の流れ
1.冒頭手続
① 検察官が起訴状を朗読します。
② 裁判長が被告人に氏名・本籍・住所・生年月日・職業を確認します。
③ 裁判長が被告人に黙秘権を告知します。
④ 裁判長が被告人・弁護士に起訴状の内容について異議がないか確認します(罪状認否)。
2.証拠調べ
検察官と弁護士が証拠によって証明しようとする事実を裁判官(裁判員)に説明します。その後、裁判官(裁判員)が検察側の証拠と弁護側の証拠を取り調べます。具体的には、検察官や弁護士が、裁判官(裁判員)の前で、供述調書などの書面を朗読したり、証人尋問を行います。
3.意見陳述
証拠調べが終了すると、その結果を踏まえて、検察官が意見を述べ、ふさわしいと考える刑罰を明らかにします(論告・求刑)。続いて弁護士が意見を述べ(最終弁論)、最後に被告人が意見を述べます(最終陳述)。
4.評議
裁判官と裁判員が別室で評議を行います。評議を傍聴することはできません。評議では、裁判官と裁判員の多数決によって、有罪か無罪かの判断をし、有罪であれば引き続き刑の重さを判断します。
5.判決宣告
裁判官と裁判員による評議に基づいて法廷で判決が下されます。被告人または検察官は、判決に不服があれば2週間以内に控訴することができます。
【裁判員裁判のページ】