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接見禁止一部解除とは?流れは?何日かかる?弁護士が解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
接見禁止一部解除とは?
接見禁止一部解除とは、接見禁止処分を受けている被疑者・被告人について、家族など特定の人に限って接見禁止の効力が及ばないようにすることです。
接見禁止とは、被疑者や被告人に対して、弁護人以外の者との接見や手紙のやりとりを禁止する処分です。
⇒接見禁止とは?接見禁止の理由や期間、解除の方法について解説
接見禁止が付いていても、特定の人について接見禁止の一部解除が許可されると、被疑者・被告人がその人と接見したり、手紙のやりとりをできるようになります。
接見禁止一部解除の2つの種類
接見禁止には、①接見を禁止する処分と②手紙のやりとり(書類の授受)を禁止する処分の2つがあります。
これに対応して、接見禁止一部解除にも、対象者について①を解除する処分と②を解除する処分の2つがあります。通常は、①の解除と②の解除を同時に申し立てます。
実務では、①の解除の方が②の解除よりも認められやすいです。手紙については留置係官が内容を確認しますが、そもそも誰が書いたのかはわかりませんので、解除のハードルが上がります。
そのため、①の解除と②の解除を同時に申し立てても、①の解除しか認められないケースも少なくありません。
接見禁止一部解除の条文は?
接見禁止一部解除は法律で定められた制度ではありません。そのため、条文はありません。
接見禁止一部解除の申立てにも法律上の根拠はありませんが、裁判官の職権発動を求める申し立てとして認められています。ただ、法律上の申立てではありませんので、却下された場合に不服を申し立てることはできません。
接見禁止一部解除は彼女もできる!
接見禁止一部解除は誰でも申し立てることができます。被疑者・被告人の家族はもちろん、内縁の妻や恋人、友人など本人と婚姻関係、血縁関係がない方でも申し立てることができます。
とはいえ、通常は、弁護士が申し立てるケースがほとんどでしょう。弁護士であれば、特に難しい手続ではありませんので、依頼すればすぐに申立てをしてくれるはずです。
万一、弁護士が動いてくれない場合は、家族や恋人等が直接申し立てることもできます。
接見禁止一部解除はどうやって申し立てる?
1.電話やFAXで申立てできる?
接見禁止一部解除の申立ては書面で行います。電話で申し立てることはできません。FAXで申し立てることもできません。申立書の原本を裁判所に提出します。直接裁判所に持参してもよいですし、郵送で送っても問題ありません。
弁護士以外の方が申し立てる場合は、すぐに訂正できるよう印鑑を持参して裁判所に持参した方が早く進むでしょう。
2.申立書の添付書類は?
申立書には、解除の対象になる方の身分証明書(運転免許証、パスポート、保険証など)の写しを添付します。
裁判所はマイナンバーが記載された書類を受け取ってくれませんので、住民票等にマイナンバーが記載されている場合はマスキングして添付してください。
3.申立書の提出先は?
①郵送する場合
申立書の提出先は裁判所です。どこの裁判所かは弁護士に確認してください。東京23区内の警察署に逮捕・勾留された場合は、東京地方裁判所に郵送することになります。他の地域についても「〇〇地方裁判所 御中」と封筒に記載して送れば、裁判所の方で担当部署に振り分けてくれます。
②持参する場合
裁判所に持参する場合、提出先の部署は各裁判所によって異なります。例えば、東京地方裁判所であれば、提出先は「刑事14部」です(初公判後は「刑事事件係」)。東京地方裁判所立川支部であれば、「刑事事件係」になります。
一般の方は提出先の正式名称はわからないと思いますので、裁判所の職員に「接見禁止一部解除申立書を持参しましたがどこに出せばよいですか?」と尋ねてみてください。
接見禁止一部解除の流れは?
1.申立書を裁判所に提出
接見禁止一部解除申立書を裁判所に提出します。
2.検察官の意見を求める
裁判所が担当の検察官に解除について意見を求めます。
3.検察官が意見書を提出する
検察官が解除してもよいか否かについての意見を書面にまとめて裁判所に提出します。
4.裁判官が判断する
申立書の内容と検察官の意見をふまえて裁判官が一部解除するか否かを決めます。一部解除する場合は決定書を作成し、申立人に電話連絡します。決定書は裁判所に取りに行きますが、郵送してもらうことも可能です。
5.留置施設への連絡
決定書は裁判所から検察庁へも出されます。その後、留置施設で被疑者・被告人に提示されます。
接見禁止一部解除は何日かかる?
接見禁止一部解除を申し立てると結果が出るまで2,3日かかります。連休等を挟まない限り、結果が出るまで1週間以上かかることはまずありません。
接見禁止一部解除される?されない?
1.単独犯の方が解除されやすい
単独犯の方が証拠隠滅のリスクが低いため接見禁止の一部解除が認められやすいです。これに対して、特殊詐欺のような組織犯罪の場合は、共犯者と接触して口裏合わせ等を行うリスクがあるため、一部解除は認められにくくなります。
2.自白している方が解除されやすい
容疑について自白していれば、証拠隠滅をする動機がないため、接見禁止一部解除が認められやすくなります。これに対して、容疑について否認したり黙秘すると、証拠隠滅の動機があると判断され、一部解除が認められにくくなります。
3.起訴後の方が解除されやすい
起訴後は捜査がひととおり終了し、必要な証拠が捜査機関に確保されていますので、証拠隠滅のリスクが低く、一部解除が認められやすくなります。これに対して、起訴前は捜査中であり証拠隠滅のリスクがありますので、一部解除のハードルは上がります。
接見禁止一部解除と準抗告の違いは?
1.準抗告とは
準抗告とは裁判官の処分に対して不服がある場合に裁判所に対して処分の取消を求めることです。
2.接見禁止一部解除と準抗告の違い
接見禁止の要件は被疑者・被告人が逃亡したり証拠隠滅をすると疑うに足りる相当の理由があることです。
【刑事訴訟法】
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準抗告を申し立てるのは、①接見禁止の要件に当たらないのに裁判官が接見禁止を付けた場合や、②事情の変動により事後的に接見禁止の要件を満たさなくなったと考えられる場合です。
これに対して、接見禁止の一部解除の申立ては、接見禁止の要件について争うのではなく、特定の者について例外的に接見を認めてくださいと裁判官にお願いすることです。
準抗告が却下された場合は、高等裁判所に不服を申し立てることができますが、接見禁止の一部解除の申立ては裁判官へのお願いにすぎませんので、却下されても不服を申し立てることはできません。
3.接見禁止一部解除と準抗告のどちらにすべき?
準抗告の申立てが許可されたら、誰でも接見できることになりますが、実際にはなかなか許可されることはありません。親や配偶者であれば、接見禁止一部解除の申立ての方が許可される可能性は高くなります。
接見禁止一部解除が認められない場合は?
接見禁止一部解除が認められなければ、被疑者・被告人と接見できないのが原則です。
もっとも、特殊詐欺など複数回の逮捕が想定される事件については、再逮捕された後、再勾留される前のタイミングで例外的に接見できることがあります。
⇒接見禁止の一部解除ができなくても家族や恋人が面会できるケース
また、接見という形で会話を交わすことはできませんが、勾留理由開示請求を申し立て、法廷にやってきた被疑者・被告人を傍聴席から見ることもできます。
⇒勾留理由開示請求とは?家族は傍聴できる?3つのメリットを解説
接見禁止一部解除-特殊詐欺のケース
接見禁止一部解除の申立てをすることが多いのは、特殊詐欺で逮捕・勾留されたケースです。ケース別におおまかな難易度をまとめましたので参考にしてください。
【記号の意味】
〇→認められやすい
△→どちらともいえない
×→認められにくい
1.自白しているケース
①起訴前
| 接見 | 手紙のやりとり |
配偶者・親兄弟 | 〇 | △ |
恋人 | 〇 | △ |
友人 | × | × |
②起訴後
| 接見 | 手紙のやりとり |
配偶者・親兄弟 | 〇 | 〇 |
恋人 | 〇 | 〇 |
友人 | △ | △ |
2.否認・黙秘しているケース
①起訴前
| 接見 | 手紙のやりとり |
配偶者・親兄弟 | △ | × |
恋人 | △ | × |
友人 | × | × |
②起訴直後
| 接見 | 手紙のやりとり |
配偶者・親兄弟 | 〇 | 〇 |
恋人 | 〇 | 〇 |
友人 | × | × |
*起訴された後、検察側の証拠調べが全て終了すると、申立てをしなくても接見禁止は全面的に解除されます。
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