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【刑事裁判】弁論の再開について弁護士が解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
弁論の再開とは?
刑事裁判では冒頭手続き→証拠調べ→意見陳述という流れで審理が行われます。
審理が終了することを「結審」といいます。結審すれば残すは判決の宣告のみとなります。結審すると検察側も弁護側も「判決が出るのを待っているだけ」という状態になります。
もっとも、結審した後でも裁判官に審理を再開してもらい、新たな主張をしたり追加の証拠を提出する余地があります。
これが弁論の再開です。
実務では、弁論の再開後に新たな主張がされるケースはほとんどありませんので、このページでは追加証拠の提出を念頭において解説します。
弁論再開の流れ
弁論が再開されるのは、通常、判決宣告の当日です。
弁護士や検察官が、判決宣告の日に裁判官に対して弁論再開の申し立てを行い、許可されれば弁論が再開されます。
弁論が再開されると、弁護士や検察官が追加証拠の取調べを請求します。追加証拠が取り調べられた後、検察官・弁護士・被告人がもう一度意見陳述を行い再び結審します。
その後、裁判長が「休廷します」と告げ、別室で追加証拠が判決にどの程度影響を与えるのかを検討します。検討が終わればまた法廷に戻ってきて判決を宣告します。
【弁論再開のよくある流れ】
①判決当日に弁護士または検察官が裁判官に弁論再開の申請をする→許可 |
②弁護士や検察官が追加証拠の取調べを請求する |
③相手方の同意があれば証拠調べを行う |
④検察官の論告求刑:「従前どおり」と一言で済ませることが多いです |
⑤弁護士の最終弁論:同上 |
⑥被告人の最終陳述 |
⑦休廷(5分程度のことが多いです) |
⑧判決言い渡し |
弁護士が弁論再開の申請をする3つのケース
弁護士が弁論再開の申請をするケースとして考えられるのは次の3つです。
1.結審後に示談が成立した場合
結審した時点では示談交渉がまとまっていなかったがその後に示談が成立したという場合は、判決当日に弁護士が弁論再開の申請をして、示談書や示談金の領収書を裁判所に提出します。
2.結審後に被害者が供託金を受けとった場合
示談がまとまらなかった場合は、被害弁償をするために供託をすることがあります。
供託金の納付先は供託所であって、供託したからと言って当然に被害弁償がなされたわけではありません。被害者が供託所に対して受け取りの手続きをして初めて、供託金が被害者に支払われます。
結審した後に被害者が供託金を受けとれば被告人にとって有利な情状になりますので、弁論を再開してもらって、供託金が被害者に支払われたことの証明書を裁判所に提出します。
3.依存症治療に取り組んでいる場合
クレプトマニアや性依存症の方が定期的にクリニックに通院したりカウンセリングを受けている場合は、証拠としてクリニックの領収証や被告人が作成した受診状況の報告書を提出することが多いです。
クリニックやカウンセリングは1回行って終わりというわけではなく、継続的に受診する必要があります。
そのため結審してから判決言い渡しの間にも何度か受診する機会があると思われます。結審後の受診に関する証拠を裁判所に提出するために、弁護士が弁論再開の申請をすることがあります。
弁論再開を申請する際の注意点
弁論再開を申請して示談書などこれまで提出していない証拠を提出する場合、事前に弁護士が裁判所にその旨を伝えておきます。
裁判官は判決の内容を決めた上で判決宣告に臨むため、宣告直前にいきなり弁論再開の申請をして追加の証拠を提出しても、裁判官が臨機応変に判決を変更することが難しくなってしまいます。
事前に弁護士が裁判官に、「示談がまとまりそうなので、判決言い渡しの際に弁論を再開してもらって示談書を提出します。」等と言っておけば、裁判官も示談書が提出され得ることをふまえた上で、期日前に判決の内容を検討することができます。