電子計算機使用詐欺

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

電子計算機使用詐欺とは

電子計算機使用詐欺とは、一言でいうと、コンピューター(電子計算機)に誤った情報を与えて、不正に財産上の利益を得る犯罪です。

 

通常の詐欺罪は人をだます犯罪で、コンピューターは対象とされていませんでしたが、テクノロジーの発達に伴い、コンピューターで様々な財産的処理がなされるようになったことから、1987年に新たに設けられました。

 

電子計算機使用詐欺の刑罰

電子計算機使用詐欺の刑罰は、通常の詐欺と同じで10年以下の懲役です。窃盗罪と異なり罰金刑はありませんので、起訴されれば正式裁判となり、検察官から懲役刑を請求されることになります。

 

電子計算機使用詐欺の2つのタイプ

電子計算機使用詐欺には次の2つのタイプがあります。

 

① 財産的処理に使われるコンピューターに虚偽の情報または不正の指令を与えて、財産権の取得や変更に関する虚偽の情報を作り出すことにより、財産上不法の利益を得るか、他人に得させる

 

② 財産権の取得や変更に関する虚偽の情報を、財産的処理に使われるコンピューターが利用できる状態におき、財産上不法の利益を得るか、他人に得させる

 

わかりやすく説明すると次のようになります。

 

コンピューターに虚偽の情報を入力して不正に利益を得るケース→①のタイプに該当します。

他人名義のプリペイドカードを機械に挿入して不正に利益を得るケース→②のタイプに該当します

 

PC等で入力操作をする場合は①のタイプ、機械にカード等を入れる場合は②のタイプになるということです。

 

電子計算機使用詐欺の「虚偽」とは

電子計算機使用詐欺の「虚偽」にあたるか否かは、情報それ自体ではなく、取引全体から判断されます。

 

【具体例1】

拾ったクレジットカードの表面に記載されている名義人の氏名やカードの有効期限を、インターネット上の販売サイトに入力し、不正に商品を買った場合

入力した氏名や有効期限それ自体に誤りはなくても、名義人以外の者がカードを使用して買い物をすることは認められていないため、入力した名義人の氏名や有効期限は虚偽の情報にあたります。

①のタイプの電子計算機使用詐欺が成立します。

 

【具体例2】

キセル乗車をするために利用区間に対応しない乗車券を下車駅の改札に入れた場合

乗車券は券売機で購入したものであり、エンコードされている情報そのものが虚偽というわけではありませんが、下車駅の自動改札機に入れた乗車券は実際の乗車区間に対応していないので、鉄道会社が認めた使い方ではなく虚偽の情報にあたります。

②のタイプの電子計算機使用詐欺が成立します。

 

電子計算機使用詐欺の3つのケース

① 会社従業員による着服

典型的なケースは銀行員による着服です。銀行員が預金端末を操作して、預金システムのコンピューターに虚偽の情報を入力して、自分の口座にお金を振り込ませるケースです。

 

企業であれば、銀行と提携することにより、銀行のオンラインシステムを利用して、社員の卓上PCから取引先への入金操作を行うことができるので、不正に操作して自分の口座に振り込ませた場合は、電子計算機使用詐欺が成立します。

 

② キセル乗車

有人改札を通過するキセル乗車は詐欺、自動改札を通過するキセル乗車は電子計算機使用詐欺になります。ひと昔前は有人改札しかなく、キセル乗車が横行していましたが、現在では、自動改札機が普及しており、キセル乗車は少なくなりました。

 

もっとも、利用区間に無人駅が存在する場合などには、一度も自動改札に通していない乗車券でも、下車駅の自動改札を通過できることがあり、このようなケースでは電子計算機使用詐欺が成立します。

 

③ 還付金詐欺

被害者に電話をかけて、「保険の還付金を受けとれます。」等と言って騙し、「お金を受けとるために必要です。」等と言って、被害者にATMを操作させ、詐欺グループの口座にお金を振り込ませるケースです。

 

被害者がATMに入力した情報それ自体は誤りではないですが、被害者は詐欺グループの口座にお金を振り込む意思はなかったことから、「虚偽の情報」を銀行のコンピューターに入力させたとして電子計算機使用詐欺が成立します。

 

電子計算機使用詐欺と逮捕・起訴

① 会社従業員による着服

このタイプの特徴として、何度も繰り返し行われ、被害が多額になることが多いという点があげられます。被害金額が数千万円以上になることも少なくありません。

 

このようなケースでは、示談が成立しない限り、逮捕・起訴される可能性が高いです。起訴後に執行猶予がとれるか否かは、被害金額と弁償の状況によります。

 

②キセル乗車

キセル乗車のケースでは、正直に事実を認め、身元がしっかりしていれば、逮捕される可能性は低いです。

 

自動改札機が普及した今日においては、かなり巧妙な手口を用いないとキセル乗車はできないため、悪質と評価されやすく、示談や被害弁償をしない限りは、起訴される可能性が高いです。ただ、前科がなければ、執行猶予を獲得できるでしょう。

 

③還付金詐欺

還付金詐欺は、詐欺グループによる組織的犯罪であり、反復して行われ、被害も高額になりますので、原則として逮捕・勾留されます。

 

その後は、嫌疑不十分による不起訴を獲得しない限り、起訴されることになります。何度も同様の詐欺をしているケースでは、再逮捕追起訴が続き、相当長期の実刑判決になることもあります。

 

電子計算機使用詐欺の弁護活動

①会社従業員による着服

被害者との間で示談をまとめることが最も重要な弁護活動となります。会社に発覚してから起訴されるまで1年~2年程度かかることが多いので、その間に不動産等を売却して資金を作り、会社と交渉することになります。

 

②キセル乗車

鉄道会社との間で示談を締結すれば不起訴になる可能性が非常に高いです。悪質で余罪が多数あれば、示談に応じてもらえないこともありますが、その場合でも供託や贖罪寄付をすることにより不起訴になる余地は十分にあります。

 

③還付金詐欺

示談をすることにより執行猶予の可能性が高まります。還付金詐欺のケースでは、複数のかけ子が、役割分担をしてお互いにフォローしあいながら、被害者をだますことが多いです。

 

そのため、「共謀共同正犯」といって、あるメンバーが行った詐欺について、他のメンバーも刑事責任を問われます。被害金額が高額になるようなケースでは、共犯者と分担して、示談金を支払うこともあります。

 

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