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傷害事件で弁護士に依頼するメリットは?依頼のタイミングや弁護士の選び方
このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。
傷害事件で弁護士に依頼するメリットは?
傷害事件の弁護を弁護士に依頼することにより、次の6つの可能性が上がります。
1.逮捕・報道を回避する
傷害事件の多くは全治1週間~2週間程度の軽傷事件です。被害者が重傷を負っていなければ、自首することによって逮捕を回避できる可能性が高くなります。
自ら出頭して捜査に協力することにより、逮捕の要件である逃亡や証拠隠滅のおそれが低いと見なされやすくなるためです。
一般の方であれば逮捕されない限り報道されることはありません。そのため、自首して逮捕を回避できれば、報道も回避できることになります。
2.早期釈放を実現する
刑事事件の身柄拘束は逮捕→勾留という2段階のステップで進みます。傷害事件で逮捕されても勾留を阻止できれば、3日以内に釈放されます。勾留されれば原則10日、勾留が延長されれば最長20日にわたって留置場で勾留されます。
ここまで身柄拘束が長引くと、会社に傷害事件を起こして逮捕されたことがばれてしまい、解雇のおそれが出てきます。
逮捕されてもすぐに弁護士に依頼すれば、弁護士が早期釈放を求める意見書を検察官や裁判官に提出して、勾留阻止の可能性を高めます。
3.解雇を防ぐ
傷害で逮捕されれば、自分で会社に連絡を入れることができなくなるため、無断欠勤の状態になります。何もしないでいると、心配した上司が家に来たり警察に捜索願いを出そうとして、逮捕されたことが発覚するおそれがあります。
弁護士であれば逮捕当日から本人と接見することができます。弁護士が早期に接見し、「職場の誰に」「どのように」報告するかを本人と打ち合わせます。打ち合わせの内容に基づき家族から職場に連絡を入れてもらうことにより、スムーズな職場復帰が可能になります。
4.示談をまとめる
傷害事件の被害者との間で示談がまとまれば不起訴になる可能性が高くなります。とはいえ、被害者の連絡先がわからなければ、示談交渉に入ることができません。
傷害事件の被害者は加害者のことを怖いと思っており、氏名や電話番号などの個人情報を知られたくないと思っています。捜査機関もこのような被害者の思いを尊重しますので、加害者に被害者の個人情報を教えてくれません。
弁護士が示談交渉の窓口になれば、被害者も安心して弁護士に連絡先を教えることができ、示談交渉を進めることができます。
5.不利な調書をとらせない
傷害事件で捕まると取調べが行われます。弁護士のアドバイスなしで取調べを受けると、取調官のプレッシャーにおされて、不利な調書をとられてしまうことが多いです。
たとえ不利な内容であっても、調書にサインをすれば撤回できません。傷害の容疑を否認していたり、正当防衛を裏づける事情があったとしても、「私がやりました」という自白調書をとられてしまうと、不起訴や無罪の獲得が難しくなります。
弁護士が黙秘権等の重要な権利について説明し、取調べにどのように対応すればよいのかをアドバイスします。
⇒弁護士が教える取調べ対応の極意-録音・弁護士の立ち会いは?
6.不起訴を獲得する
不起訴とは刑事裁判にかけないということです。裁判にならない以上、処罰されることはなく前科もつきません。
初犯の軽傷事件の場合は、示談が成立すれば不起訴になる可能性が高いですが、重傷事件や前科があるケースでは、示談が不起訴に直結するとまではいえません。
不起訴を獲得するために、家族にも本人の監督プランを作成してもらう等して協力してもらいます。正当防衛などの事情がある場合は、弁護士が証拠を集めて検察官に提出します。
傷害事件で弁護士に依頼するタイミングは?
1.逮捕されたとき
傷害事件で逮捕されたら一刻も早く弁護士に依頼すべきです。逮捕後に釈放に持ち込める可能性が最も高くなるのは勾留前のタイミングです。いったん勾留されると原則10日にわたって拘束され、釈放に持ち込むのは容易ではありません。
逮捕されてから勾留されるか否か決まるまで最短で1日、最長でも3日しかありません。弁護士への依頼が遅れるとできることも限られてきます。可能であれば逮捕当日に依頼することをお勧めします。
2.自首を希望するとき
傷害事件を起こしても自首すれば逮捕される可能性が低くなります。もっとも、犯罪と犯人の両方が特定された後に警察署に出頭しても自首は成立しません。
そのため、自首を希望する場合は、なるべく早めに弁護士に依頼して同行してもらった方がよいでしょう。
3.検察庁から呼び出しがきたとき
警察で傷害事件の捜査がひと通り終わると捜査資料が検察官に引き継がれます(書類送検)。その後、検察官から被疑者に呼び出しが入り、検察庁で取調べを受けます。
取調べの時までに被害者との間で示談をしていなければ、起訴に向けた手続に入ることが多いです。そのため、検察官から呼び出しが入れば、なるべく早期に弁護士に依頼した方がよいでしょう。
4.その他のケース
それ以外のケースは至急弁護士に依頼するまでの必要はありません。もっとも、被害者との示談を希望する場合は、動き出しが遅れると、「謝罪が遅い」と言われることがありますので、早めに弁護士に依頼した方がよいでしょう。
傷害事件で依頼できる弁護士は?
傷害事件で依頼できる弁護士は、私選弁護人、国選弁護人、当番弁護士の3種類です。各弁護士ごとにメリットとデメリットをみていきましょう。
1.私選弁護人とは
私選弁護人とは本人や家族から刑事弁護の依頼を受けて弁護活動をする弁護士です。弁護士費用はかかってしまいますが、逮捕前後を問わずいつでも依頼でき、また、依頼する側で弁護士を選べるというメリットがあります。
私選弁護人のメリット | 私選弁護人のデメリット |
いつでも依頼できる 傷害事件に強い弁護士を選べる | 弁護士費用がかかる |
2.国選弁護人とは
国選弁護人とは、貧困等の理由により私選弁護人に依頼できない方のために裁判所が選任する弁護士です。国選弁護人の利用条件は原則として資産が50万円未満の方です。
多くのケースで弁護士費用が無料になるというメリットがありますが、勾留された後でなければ活動できず、弁護士を選べないというデメリットがあります。
国選弁護人のメリット | 国選弁護人のデメリット |
多くのケースで費用が無料 | 勾留された後しか選任されない 傷害事件に強い弁護士を選べない |
⇒国選弁護人とは?利用条件や呼び方、メリット・デメリットを解説
3.当番弁護士とは?
当番弁護士とは、弁護士会から派遣され逮捕された方と1回接見する弁護士です。逮捕されれば、いつでも、誰でも無料で依頼できるというメリットがありますが、1回しか接見してくれないというデメリットもあります。
当番弁護士のメリット | 当番弁護士のデメリット |
逮捕後であればいつでも依頼できる 弁護士費用が無料 | 傷害事件に強い弁護士を選べない |
⇒当番弁護士とは?逮捕後すぐに呼べる無料の弁護士を活用しよう!
国選弁護人と当番弁護士の呼び方については以下のページをご覧ください。
⇒逮捕されたらすぐに弁護士を呼ぼう!弁護士費用や呼び方を解説
傷害事件はどの弁護士に依頼すべき?
1.傷害事件で逮捕されたとき
傷害事件で逮捕されたら、弁護士費用はかかりますが、私選弁護人に依頼するのがベストです。
私選弁護人であれば逮捕当日から勾留阻止に向けた活動を始めることができます。また、依頼する側で弁護士を選ぶことができるため、傷害事件に強い弁護士を探して依頼することができます。
2.傷害事件で逮捕されていないとき
傷害事件で捜査されているが逮捕はされていない場合、依頼できるのは私選弁護人のみです。国選弁護人や当番弁護士に依頼することはできません。国選も当番も身柄拘束されていることが利用条件になっているためです。
逮捕されない在宅事件であっても、取調べが終わり起訴(公判請求)されれば国選弁護人を利用することはできますが、起訴後に選任されるため不起訴を目指す活動はできません。
傷害事件に強い弁護士とは?
私選弁護人に依頼する場合、「弁護士を選べる」というメリットを活かして、傷害事件に強い弁護士に依頼したいものです。傷害事件に強い弁護士の特徴は次の3つです。
1.傷害事件の弁護経験が豊富
傷害事件の弁護経験が豊富な弁護士であれば、示談交渉の方法や釈放に持ちこむポイント等を熟知していますので、ベストな結果を得られる可能性が高くなります。
弁護士の多くは民事事件をメインに活動しており、傷害のような刑事事件に特化している弁護士はほとんどいません。
刑事事件は民事事件に比べて、本人や家族の人生に大きな影響を与えます。そのため、経験不足の弁護士に委ねるのは不安が残ります。
2.土日も活動してくれる
逮捕されれば検察官の勾留請求⇒裁判官の勾留質問を経て、3日以内に勾留されるか釈放されるかが決まります。これらの手続は土日であっても中断されません。平日と同じように進んでいきます。
示談交渉をする際も、土日しか被害者との面談の機会がとれないこともあります。土日も動いてくれる弁護士であれば、途切れのない弁護活動が可能になります。
3.交通事故にも詳しい
傷害事件は被害者にケガをさせたという点で交通事故に類似しており、示談金の相場についても、交通事故の相場を参考にすることが多いです。
交通事故は損害の項目ごとに慰謝料等の相場が明確に決まっており、弁護士と裁判所で相場の情報が共有されています。
交通事故について詳しい弁護士であれば、被害者から理不尽な要求をされたときも、きちんと筋道を立てて反論することができます。
傷害事件に強い弁護士の選び方
私選弁護人に依頼する場合は弁護士を選べるというメリットがあります。それでは、傷害事件に強い弁護士はどのように選べばよいのでしょうか?
1.刑事事件に注力している事務所を探す
傷害事件のような刑事事件に精通している弁護士は決して多くはありません。そのため、「知人に紹介してもらった弁護士」や「自宅近くの弁護士」が傷害事件に強い弁護士である可能性は低いです。
最近は東京や大阪などの都市部を中心として、刑事事件に注力している事務所が増えてきました。傷害は刑事事件の中では決して珍しい事件ではありませんので、そのような事務所であれば、傷害事件の弁護スキルが蓄積されていると思われます。
傷害事件で逮捕された場合、弁護士選びはスピードが勝負です。インターネットであれば、刑事事件に注力している事務所を効率的に探すことができるのでおすすめです。
2.弁護士に会って相談する
刑事事件に注力している弁護士事務所をピックアップしたら、予約をした上で法律相談をしてみてください。
有利な事情だけでなく不利な事情もふまえた上で、納得のいく弁護プランの提案があれば、前向きに依頼を検討するとよいでしょう。当日中に初回接見に行ってくれる弁護士がおすすめです。
弁護士費用についても必ず確認するようにしてください。ホームページではリーズナブルに見えても、事務所に行くとびっくりするくらい高額の弁護士費用を提示されることがあります。
いきなり100万円以上の費用を請求された場合は、すぐに依頼するのではなく、他の事務所からも見積もりをもらってから判断した方がよいでしょう。