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前科のデメリットについて弁護士が解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。
前科とは?
前科とは、刑事裁判で有罪となり刑罰を科されたことです。刑事裁判が確定した時点で前科になります。実刑判決だけではなく執行猶予がついた場合も前科になります。罰金刑の場合も前科になります。
⇒前科とは?前歴との違いや前科を回避する方法について解説
前科のデメリット-就職の際にバレるリスク
1.面接で前科を言わないといけない?
採用面接で、前科があることについて自発的に申告する義務はありません。面接官から前科について聞かれた場合、前科があるのにないと嘘をつき、その後に前科があるとバレてしまうと、経歴詐称で懲戒解雇されるリスクがあります。
前科が抹消された場合、前科について聞かれても言う必要はありません。
2.履歴書に前科を書かないといけない?
履歴書の賞罰欄には前科を記載しなければなりません。履歴書に賞罰欄がなければ、前科を記載する必要はありません。
前科が抹消された場合は、賞罰欄に前科を記載する義務はありません。
なお、前歴は「罰」ではありませんので、賞罰欄に記入する必要はありません。
前科のデメリット-海外渡航が制限されるリスク
1.日本から出国できる?
仮釈放中や執行猶予中の方はパスポートの申請をしても発行されないことがあります(旅券法13条1項3号)。
【旅券法】(抜粋)
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⇒「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」とは?
パスポートを申請する際、申請書に質問が書かれており、「はい」か「いいえ」にチェックをします。前科に関する質問として、「現在日本国法令により、仮釈放、刑の執行停止又は執行猶予の処分を受けていますか。また刑の執行を受けなければならない状態にありますか。」という質問があります。
仮釈放中や執行猶予中の方はこの質問に「はい」と回答することになります。その結果、判決謄本や渡航事情説明書の提出を求められ、特別な審査を受けることになります。審査の結果、パスポートが発行されない場合や、渡航先が制限されることがあります。
2.海外へ入国できる?
前科があると米国のESTA等のビザ免除プログラムを利用できず、観光旅行や出張に行く際にビザを取得しなければならない場合があります。
ビザを申請する際、渡航先の大使館から犯罪経歴証明書(無犯罪証明書)の提出を求められることがあります。犯罪経歴証明書は、警察が作成するもので、申請者の前科情報が記載されています。
犯罪経歴証明書により渡航先に前科が明らかになり、ビザが発給されないことがあります。発給される場合でも判決書の訳文等の提出が必要になることがあります。
前科が抹消されれば、犯罪経歴証明書に前科は記載されません。
前科のデメリット-資格が制限されるリスク
医師や看護師、介護福祉士、会計士、証券外務員など国家資格が必要とされる職業については、前科があると資格試験に合格しても免許が与えられなかったり、保有している免許が取り消されることがあります。
例えば、医師については、罰金以上の前科があれば、医師国家試験に合格しても、医師免許が与えられないことがあります。
【医師法】(抜粋)
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既に医師として活動している方についても、罰金以上の前科がついた場合は、医師免許の取消しや医業停止になることがあります。
【医師法】
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資格によって欠格事由は異なります。例えば、医師の場合は罰金刑に処せられたことで欠格事由になりますがが、介護福祉士の場合は、「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者」となります。
【パソコンで欠格事由を調べる方法】 ①「資格の名前 法律」でネット検索してその資格に対応する法律名を調べる ②法律名をネット検索して条文を見れるようにする。 ③Ctrlキー+Fキーを同時に押して検察窓を開く ④「欠格」というワードで検索する |
前科が抹消された場合は、資格制限の効果もなくなります。ただし、取り消された免許が復活するわけではありません。
前科のデメリット-公務員になれないリスク
禁錮以上の前科があると、公務員になる能力を失い、公務員試験を受けることができなくなります。
【国家公務員法】
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*地方公務員法にも同様の規定があります。
既に公務員になっている方について、禁錮以上の刑罰が確定すると当然に失職します。
【国家公務員法】
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*地方公務員法にも同様の規定があります。
地方公務員については、条例で例外が定められており、交通事故のように過失で刑事事件を起こして禁錮以上の刑になった場合は救済されることもあります。
前科が抹消されれば公務員になる資格が回復します。ただ、失職した公務員の地位に戻れるわけではありません。公務員になるためにはもう一度試験を受けて採用される必要があります。
前科のデメリット-選挙権・被選挙権が制限されるリスク
懲役・禁錮の実刑を受け刑務所に入っている間は選挙権も被選挙権もありません。仮釈放となり出所しても、刑期を満了するまでは選挙権も被選挙権もありません。
また、収賄罪、選挙に関する犯罪など特定の犯罪で前科がついた場合は、一定の期間、選挙権・被選挙権を喪失します。
【選挙権・被選挙権がない方】 1.禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者 2.禁固以上の刑に処せられ、その執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。) 3.公職にある間に犯した収賄罪により刑に処せられ、実刑期間経過後5年間(被選挙権は10年間)を経過しない者。または刑の執行猶予中の者。 4.選挙に関する犯罪で禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行猶予中の者 5.公職選挙法に定める選挙に関する犯罪により、選挙権、被選挙権が停止されている者 6.政治資金規正法に定める犯罪により、選挙権、被選挙権が停止されている者 引用元:総務省のホームページ |
前科のその他のデメリット
1.新たな犯罪を犯すと処分が重くなりやすい
前科のある方が再犯すると、初犯の方に比べて、逮捕・起訴される可能性が高くなります。刑事裁判では、「前科があるから今回の事件もやったに違いない。」と前科を理由に有罪とすることは許されません。
ただ、他の証拠から有罪を認定した上で、「刑罰の程度」を判断するにあたって、前科があることを理由に刑罰を重くすることは許されます。
執行猶予中に新たに罪を犯して起訴された場合は、新たな犯罪で実刑になる可能性が非常に高くなります。そうなると執行猶予も取り消され、2つの懲役・禁錮刑を合計した期間、刑務所に入ることになります。
⇒執行猶予の取り消しとは?執行猶予の取り消しを防ぐ3つの方法を解説
実刑判決を受け服役した方が、刑期が満了してから5年以内に犯罪を犯すと累犯に該当し、刑が重くなることがあります。
2.薬物犯罪の前科があると職務質問が厳しくなる
薬物犯罪の前科がある方が職務質問を受けると、やましいことがなくてもすぐに解放してもらえません。
職務質問の現場で警察官によって前科照会が行われ、薬物犯罪の前科が判明すると、「鞄の中を見せてください。」、「袖をまくって肘を見せてください。」、「車の中を見せてください。」と言われたり、尿検査を迫られることが多いです。
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