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不起訴処分について弁護士がわかりやすく解説

不起訴

 

☑ 不起訴とはどのような処分?

☑ 不起訴と無罪の違いは?

☑ 不起訴になれば前科がつく?前歴は?

☑ 罰金でも不起訴になる?

 

このような疑問点について、刑事事件に詳しい弁護士 楠 洋一郎が解説しました。ぜひ参考にしてみてください!

 

 

 

 

不起訴とは?

1.不起訴の意味

不起訴とは、被疑者を刑事裁判にかけない処分です。刑事裁判にかけられないので、裁判官によって審理されたり、判決が言い渡されることはありません。

 

 

2.起訴と不起訴の違い

起訴とは被疑者を刑事裁判にかけることです。被疑者が起訴されると「被告人」と呼ばれ、裁判の当事者として審理を受け、判決を言い渡されることになります。刑事裁判になるのが起訴、ならないのが不起訴ということになります。

 

 

3.起訴・不起訴は誰が決める?

起訴するか不起訴にするかは検察官が決めます。これを「検察官の起訴独占主義」といいます。

 

 

【刑事訴訟法】

第二百四十七条 公訴は、検察官がこれを行う。

引用元:刑事訴訟法-e-Gov法令検索

 

 

4.不起訴のメリット

不起訴になれば前科がつかないというメリットがあります。前科とは「刑事裁判で有罪判決を受けたことがある事実」です。前科があると、資格に基づく活動ができなくなったり、出入国が制限されるリスクがあります。

前科とは?

 

 

不起訴になれば、刑事裁判にならないため、有罪判決を受けることはありません。そのため前科がつくこともありません。

 

 

不起訴の種類は?

不起訴処分は、不起訴の理由に応じて全部で20種類ありますが、代表的なものは、①罪とならず、②嫌疑なし、③嫌疑不十分、④起訴猶予の4つです。

 

 

1.罪とならず

罪とならずとは、被疑事実が犯罪構成要件に該当しないとき、または正当防衛などの違法性を否定する事情があることが証拠上明らかなときになされる不起訴処分です。

 

 

2.嫌疑なし

嫌疑なしとは、被疑者が犯人でないことが明らかなとき、または、犯罪を証明する証拠がないことが明らかなときに出される不起訴処分です。真犯人が見つかった場合や被疑者にアリバイがある場合は嫌疑なしで不起訴になります。

 

 

3.嫌疑不十分

嫌疑不十分とは、被疑者が犯人であることや犯罪の成立について十分な証拠がなく、起訴しても有罪にもち込めないと検察官が判断したときに出される不起訴処分です。

 

 

嫌疑なしと異なり完全にシロというわけではありませんが、刑事裁判では、被告人が罪を犯したことを検察官が証明できなければ無罪になるため、証明できるだけの十分な証拠がない場合は、嫌疑不十分で不起訴にします。

 

 

4.起訴猶予

起訴猶予とは、被疑者が罪を犯したことを証明するだけの十分な証拠があり、起訴しようと思えばできるものの、犯罪行為の内容や被疑者の状況、被害者の処罰感情などの事情を考慮して、検察官が起訴しないと判断したときに出される不起訴処分です。

 

 

【刑事訴訟法】

第二百四十八条 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

引用元:刑事訴訟法-e-Gov法令検索

 

 

その他の不起訴処分として、以下の処分があります(これが全てというわけではありません)。

 

 

不起訴の種類

不起訴の内容

被疑者死亡

被疑者が死亡したときになされる処分

親告罪の告訴取消し

親告罪で告訴が取り消されたときになされる処分

時効完成

時効が完成したときになされる処分

心神喪失

心神喪失で責任能力が認められないときになされる処分

 

 

 

不起訴の確率は?

2022年に不起訴になった事件は14万6617件、起訴された事件は9万5005件で、不起訴率は60.7%です。

 

 

起訴されれば、99%以上の確率で有罪となり前科がつきます。そのため、前科を回避するためには無罪判決ではなく、不起訴を狙うのが現実的です。

 

 

【不起訴の構成比】

罪とならず

1.5%

嫌疑なし

1.1%

嫌疑不十分

20.7%

起訴猶予

69.2%

その他

7.5%

 

根拠資料:2022年版検察統計年報:8 罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員

 

 

不起訴と無罪の違いは?

1.裁判になるか否かの違い

不起訴は被疑者を刑事裁判にかけないという処分ですので、裁判官によって審理されることはありません。これに対して、無罪は、起訴されて裁判官によって審理された結果、判決として言い渡されるものです。

 

 

2.判断内容の違い

無罪は、起訴された犯罪行為を被告人がしたと認定できないことを意味します。嫌疑なし・嫌疑不十分で不起訴になった場合、検察官が「起訴しても立証できない」と判断したわけですから、無罪に準じるものとみなせます。

 

 

これに対して、起訴猶予で不起訴になった場合は、犯罪を立証するだけの証拠があり起訴することができたわけですから、有罪に準じることになります。

 

 

3.最終的な判断か否かの違い

無罪判決が確定すれば、同じ事件で再び起訴することはできなくなります。これを「一事不再理効」(いちじふさいりこう)といいます。

 

 

不起訴処分には一事不再理効がありませんので、不起訴になったとしても時効になるまでは起訴されるリスクがあります。被害者が不起訴に納得いかない場合、検察審査会に申し立てることにより、起訴されることもあります。

 

 

不起訴でも前歴はつく

前歴とは、「刑事事件の被疑者として捜査の対象になったことがある事実」です。不起訴になったということは、被疑者として捜査されていたことを意味しますので、前歴がつくことになります。

 

 

前歴がついたからといって資格制限などの法的なデメリットはありません。ただ、起訴猶予で不起訴になった場合は、再び罪を犯したときに処分が重くなりやすいというデメリットがあります。

前科とは?前歴との違いや5つのデメリット、結婚・就職に影響は?

 

不起訴と罰金の関係は?

不起訴とは被疑者を刑事裁判にかけない処分です。そのため、不起訴になれば刑事裁判で罰金が科されることもありません。

 

 

逆に、罰金を科されたということは不起訴にならなかったことを意味します。通常、罰金になるときは略式裁判という簡単な裁判で審理されます。略式裁判は書面のみで審理され法廷は開かれません。そのため被告人が出廷することもありません。

 

 

「罰金を支払えという書面が家に届いたが、裁判所に一度も行っていないので不起訴ではないのか?」と思われるかもしれません。

 

 

しかし、被告人が気づかないうちに略式裁判で審理されていますので、不起訴になったわけではありません。罰金であっても有罪の判断である以上、前科はついてしまいます。

略式裁判とは?正式裁判との違いや拒否すべきかを弁護士が解説      

 

 

不起訴になるための方法は?

1.容疑を認めているケース

容疑を認めている場合、起訴猶予または告訴取消(親告罪の場合)による不起訴処分を目指します。性犯罪や財産犯罪、暴力犯罪など被害者がいる事件については、被害者と示談をして許してもらえれば、起訴猶予で不起訴になる可能性が高くなります。

 

 

器物損壊などの親告罪については、示談をして告訴を取り消してもらえば、確実に不起訴になります。刑事事件の被害者は加害者と関わりたくないと思っているため、示談交渉は弁護士を通して行うことになります。

 

 

交通違反や薬物犯罪など被害者のいない事件については、再発防止プランを実行し、「これなら更生できる。」と検察官に納得してもらうことが必要です。弁護士が本人や家族と協議して再発防止プランをたて、取り組み状況を証拠化して検察官に提出します。

 

 

2.容疑を否認しているケース

容疑を否認している場合、①罪とならず、②嫌疑なし、③嫌疑不十分のいずれかの不起訴処分を目指します。取調べにおいて「私がやりました」という自白調書をとられてしまうと、後で撤回することはできないので、起訴される可能性が高くなります。

 

 

自白調書をとらせないよう、弁護士がひんぱんに接見したり、取調べに同行することで本人をサポートします。

否認事件の刑事弁護

 

 

不起訴に納得できない場合

不起訴になったとしても、時効が完成するまでは、起訴されないことが保証されるわけではありません。

 

 

被害者や告訴人等が不起訴に納得できない場合、検察審査会に対して、不起訴処分の当否についての審査を申し立てることができます。

 

 

申立てがあると検察審査会で審査され、「起訴相当」または「不起訴不当」の議決がなされると、検察官が改めて捜査を行い、起訴・不起訴を決定します。

 

 

起訴相当の議決が出た事件について検察官が再び不起訴処分にしたときは、検察審査会で改めて審査されます。その結果、起訴議決が出ると、裁判所から指定された弁護士が検察官に代わって起訴します。起訴されれば刑事裁判で審理されることになります。

 

 

不起訴になったらどうなる?

上で説明したように、不起訴になっても、検察審査会で審査され起訴されることがあります。もっとも、そのようなケースはほとんどありません。

 

 

通常は一度不起訴になれば、処分が変更されることなく時効期間が経過し、起訴されないことが確定します。そのため、不起訴はほとんどの被疑者にとって、刑事手続から解放されたことを意味します。

 

 

警察に押収された物があれば、不起訴になった後に警察から取りに来るよう連絡がきて返してもらえます(不起訴になる前に返還されることもあります)。

 

 

分割払いで示談を締結した場合、不起訴になった後に不払いがあると、民事紛争になることがあるので、責任をもって最後まで支払うようにしてください。

 

 

不起訴処分告知書とは?

不起訴になれば検察官から「不起訴処分告知書」と呼ばれる証明書をもらうことができます。弁護士をつけていれば弁護士が本人の代わりに不起訴処分告知書を取得してくれるでしょう。

 

 

弁護士をつけていない場合は、本人が担当の検察官に申請することにより交付してもらうことができます。

不起訴処分告知書の詳細は以下のページをご覧ください。

不起訴処分告知書について弁護士が解説

 

 

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