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駅・電車での暴行事件-逮捕・示談・不起訴について
このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。
駅・電車での暴行事件-2つのケース
駅や電車で起きる暴行事件には、駅員を被害者とする事件と一般の乗客を被害者とする事件があります。それぞれのケースについて解説していきます。
1.駅員に対する暴行事件
駅員に対する暴行事件は、深夜、泥酔した乗客が引き起こすことが多いです。電車内やベンチで泥酔している乗客を駅員が起こそうとした時に一方的に暴行を受けるケースが多いです。
女性が加害者の場合は、駅員をひっかいて擦過傷を負わせてしまい、傷害罪で立件されることも少なくありません。加害者は酔いの影響で自分が事件を起こしたことを覚えていないことが多いです。
2.他の乗客に対する暴行事件
電車内や駅のホーム、エスカレーター上で他の乗客と体が当たったことがきっかけとなり暴行事件に発展するケースです。
朝や夕方の混雑した時間帯に発生することが多いです。駅員に対する暴行事件と異なり、被害者も加害者に対して暴力をふるっている相互暴行のケースが少なくありません。相互暴行に至らなくても、被害者から暴言を吐かれる等の挑発行為が先行することもあります。
駅・電車での暴行事件で逮捕される?
駅や電車での暴行事件で逮捕される可能性は高くはありません。駅や電車での暴行事件は「胸倉をつかんだ」とか「体を押した」程度の軽微な事件が多いためです。
また、駅や電車での暴行事件は突発的に発生するもので、DVやストーカーのように被害者に対する執着心がないため、加害者が再び被害者への接触を図るとは考え難いからです。もっとも、以下の2つのケースでは逮捕される可能性が十分にあります。
1.泥酔しているケース
泥酔した乗客が暴行事件を起こした場合、本人はわけがわからない状況になっており、さらなる加害行為の危険があるため、とりあえず現行犯逮捕することが多いです。身柄を拘束することにより泥酔者自身を保護するという意味もあります。
2.ケガを負わせたケース
被害者に強い暴行を加え重いケガを負わせた場合は逮捕される可能性が高くなります。暴行によりケガを負わせた場合は傷害罪になりますが、被害者が病院で診断書をとって警察に提出するまでタイムラグがありますので、とりあえず暴行罪で現行犯逮捕することが多いです。
被害者が逃げた場合は、防犯カメラや交通系ICカードから被疑者の身元を特定し、後日逮捕することがあります。
駅・電車での暴行事件の流れ-逮捕されなかった場合
1.警察の捜査
駅や電車で暴行事件を起こした場合、現場にかけつけた警察官に最寄りの警察署に連行され、取調べを受けることになります。
当日は「私がやったこと」というタイトルの上申書を手書きで作成するように言われます。取調べが終わった後に家族に身元引受人として署まで迎えに来てもらいます。
一人暮らしの方であれば、警察車両で自宅まで送られ、玄関を開ける瞬間の写真を撮影されることが多いです。
事件当日に供述調書の作成や指紋・DNAの採取、写真撮影などが終わっていれば、後日、警察から呼び出されることは通常ありません。これらが終了していなければ、後日警察から呼び出しがあります。
2.書類送検
警察がひと通りの捜査を終えると捜査資料を検察に引き継ぎます。この引き継ぎのことを「書類送検」と言います。
検挙から書類送検までの期間はおおむね2か月程度、長い場合は6か月以上かかることもあります。
3.検察官の処分
書類送検されたタイミングで担当の検察官が決まります。検察官は示談の状況などをふまえて起訴するか不起訴にするかを判断します。
駅や電車での暴行事件は計画性がなく軽微なケースが多いため、初犯の方であれば、略式起訴されて罰金になることが多いです。略式起訴する場合は、検察官が本人を呼び出して略式手続について説明し、同意書に署名・捺印してもらいます。
⇒略式裁判とは?罰金の金額や払えない場合について弁護士が解説
不起訴にする場合は呼び出しがないケースが多いです。呼び出す場合でも説諭のみで短時間で終わることが多いです。
書類送検されてからおおむね2か月前後で起訴・不起訴が決まります。
駅・電車での暴行事件の流れ-逮捕された場合
1.警察による送致
逮捕されると警察署に連行され留置場に入れられます。泥酔している場合は雑居房ではなく独居房や保護室に入れられます。留置の必要がないとしてすぐに釈放されなければ、検察庁に連行されます。連行されるタイミングは逮捕の翌日または翌々日になります。
2.検察官の勾留請求
検察庁に連行されて検察官の取調べを受けます。検察官が勾留請求しなければ、その日のうちに釈放されます。勾留請求した場合は、その日のうちに裁判所に連行されます。
*東京都では検察庁に連行された日の翌日に裁判所に連行されます。
3.裁判官の勾留質問
裁判所に連行されて裁判官の勾留質問を受けます。裁判官が検察官の勾留請求を却下した場合は、勾留されずに釈放されます。
⇒【逮捕】勾留されなかったときの釈放の流れ-何時にどこに迎えに行く?
裁判官が検察官の勾留請求を許可した場合は勾留されます。
4.勾留された後の流れは?
勾留期間は原則10日ですが、さらに10日の限度で延長されることがあります。検察官は最長20日の勾留期間内に被疑者を起訴するか釈放しなければなりません。
示談が成立すれば釈放されて不起訴になる可能性が高いです。示談が成立しなければ勾留の満期近くに裁判所に連行され、略式起訴されることが多いです。
駅・電車での暴行事件で勾留を回避するために
1.反省の態度を示す
駅や電車での暴行事件は衝動的になされ、被害も軽微なことが多いです。そのため、本人が事実を認めて、検察官や裁判官に対して反省の態度を示していれば、逮捕されても勾留されずに釈放されることが多いです。
2.やみくもに否認しない
泥酔して暴行事件を起こした場合、加害者は前後の状況を含め何も覚えていないことが少なくありません。そのような場合に検察官や裁判官に対して「覚えていません」と供述すると、否認していると受けとられ、勾留される可能性が高くなります。
そのため、勾留を回避するためには、「覚えていないけれども、証拠があるのであれば、暴行したことは争いません」と供述するのが現実的です。
駅・電車での暴行事件で後日逮捕を回避するために
1.駅や電車内の事件は特定されやすい
泥酔して事件を起こした場合は、逃げる余裕もないでしょうから、後日逮捕は問題にならないと思われます。泥酔していない状態で暴行した場合は、その場から逃げ後日逮捕されることがあります。
駅や電車内には多数の防犯カメラが設置されていることから、犯人として特定される可能性が高いです。交通系ICカードで改札を通過した場合は、カードに紐づいている個人情報から特定されることが多いです。特定されれば後日逮捕のリスクがあります。
2.自首すれば逮捕回避の可能性大
現場から逃げた場合でも、自首という形で警察に出頭することにより逮捕を回避できる可能性が高くなります。自ら罪を認めて警察に出頭している以上、逃亡の恐れは低いといえるので、逮捕の要件を満たさず、在宅捜査になる可能性が高くなります。
駅・電車での暴行事件と示談
1.示談をするメリット
駅や電車で暴行事件を起こした場合、被害者との間で示談が成立すれば不起訴になる可能性が高くなります。駅や電車での暴行事件は肩を押す程度の軽微な事件が多いため、示談が成立すれば書類送検されないこともあります。
書類送検せずに警察限りで捜査を終わらせることを「不送致」と言います。不送致になれば、検察官の取調べもありませんので、いち早く刑事手続から解放されることになります。
2.示談金の相場
駅や電車での暴行事件は、肩を押したり胸倉をつかんだりする程度の事件が多く、示談金がそれほど高額化しないことが多いです。
被害者がケガをしていない場合は10万円程度が相場になります。乗客同士のトラブルから相互暴行に発展した場合はそれより低い金額で示談が成立することもあります。
駅や電車での暴行事件-「覚えていない」で不起訴・無罪はとれる?
泥酔して駅や電車で暴行事件を起こした場合、自分がしたことを覚えていない方が一定数います。
泥酔して覚えていないと言っても、駅構内には多数の防犯カメラがあり、被害者である駅員があえて虚偽の供述をする動機もないため、「覚えていない」と言うだけで不起訴・無罪を獲得することは困難です。
もっとも、泥酔していて全く覚えていないという場合は、責任能力に問題ありとして、不起訴・無罪になることが絶対にないとも言えません。
実際に被害者に迷惑をかけている以上、示談と言う形でお詫びして不起訴(起訴猶予)を目指すのが現実的ではありますが、駅員が示談に応じてくれないという場合は、「全く覚えていない」として責任能力を争う余地もあります。
まずは刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。