オレオレ詐欺の受け子が逮捕された後の流れ

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

オレオレ詐欺の受け子とは

オレオレ詐欺の受け子とは、「かけ子」と呼ばれるだまし役にだまされた被害者と接触して、現金やキャッシュカードを受けとる者です。

 

「(息子のふりをして)僕は用事があるので部下がお金をとりに行くから準備しておいて。」

「うちの銀行の職員がお宅を訪問して古くなったキャッシュカードを回収します。」

 

かけ子は言葉巧みにこのようなことを言って、受け子を被害者に接触させます。受け子は被害者の前でかけ子が設定した人物を演じ、かけ子と協力して被害者から現金やキャッシュカードをだましとります。

 

受け子は被害者の自宅で被害者と接触することが多いです。かけ子が被害者を別の場所に誘い出し、そこで受け子と接触させることもあります。

 

受け子には現金受けとり型とキャッシュカード受けとり型の2つのタイプがあります。以前は現金受けとり型が一般的でしたが、近年は銀行職員の声かけにより、高齢者が銀行で多額の現金を引き出すことが難しくなったため、カード受けとり型が主流となっています。

 

受け子は、被害者からだましとったキャッシュカードを使ってATMで現金を引き出します。引き出したお金の一部を報酬として受けとり、残りを詐欺グループに渡します。

 

オレオレ詐欺の受け子は何罪になる?

現金受けとり型でもカード受けとり型でも、受け子が被害者から現金やカードを受けとった時点で詐欺罪が成立します。

 

カード受けとり型では、受け子はATMにだましとったカードを挿入し現金を引き出しますが、この点について窃盗罪が成立します。

 

オレオレ詐欺の受け子と逮捕

1.現行犯逮捕も後日逮捕もありうる

オレオレ詐欺の受け子は現行犯で逮捕されることが一般的ですが、後日逮捕されることもあります。それぞれのケースをみていきましょう。

 

2.現行犯逮捕のケース

被害者がかけ子と話している最中にだまされていることに気づいた場合、受け子は現行犯で逮捕される可能性が高いです。被害者からの通報を受けて、警察があらかじめ被害者の自宅や周辺に待機し、やって来た受け子が被害者から物を受けとった直後に、取り押さえて現行犯逮捕します。

 

被害者がだまされていることに気づいているため、詐欺未遂罪が成立するにとどまります。

 

3.後日逮捕のケース

詐欺グループの指示役やリクルーターが逮捕されると、彼らと連絡をとりあっていた受け子も逮捕されることがよくあります。後日逮捕のタイミングは、事件が発生してから1か月から半年後くらいになることが多いです。

 

指示役やリクルーターは、受け子がお金を持ち逃げしないように、受け子の運転免許証のデータをスマホに保存していることが多く、容易に足がついてしまいます。

 

カード受けとり型であれば、詐欺グループの関係者がだれ一人逮捕されていなかったとしても、受け子だけ後日逮捕されることが多いです。その場合の流れは次の通りです。

 

【後日逮捕の流れ】

①被害者がだまされたことに気づく→警察に被害届を提出

②警察が銀行にカードの使用状況を照会

③受け子が利用したATMを特定し防犯カメラを解析

④リレー形式で防犯カメラを順次解析することにより被疑者を特定→後日逮捕

 

オレオレ詐欺の受け子と再逮捕

1.再逮捕とは

再逮捕とは、判決が出るまでの間に、以前に逮捕した事件とは別の事件で逮捕することです。同一の事件で何度も逮捕することはできませんが、事件が別であれば、逮捕の要件が満たされる限り、その事件で再逮捕することができます。

再逮捕とは?再逮捕されやすい4つの犯罪と2つのタイミング

 

2.被害者ごとに再逮捕されることが多い

オレオレ詐欺の受け子は、逮捕されるまでの間に、何度か被害者の自宅に派遣されて現金やカードを受けとっていることが多いため、再逮捕されるリスクがあります。被害者が異なると別の事件として扱われ、事件ごとに(再)逮捕の対象になります。

 

被害者Aに対する詐欺事件→5月1日に逮捕

被害者Bに対する詐欺事件→6月1日に再逮捕

被害者Cに対する詐欺事件→7月1日に再逮捕

 

3.現金受けとり型と再逮捕

詐欺グループの関係者が誰も逮捕されていなければ、受け子に余罪があったとしても、黙秘すれば再逮捕されない可能性があります。

黙秘について

 

詐欺グループの指示役やリクルーターが逮捕され自白している場合は、受け子が黙秘しても、余罪で再逮捕される可能性が高くなります。

 

4.カード受けとり型と再逮捕

詐欺グループの関係者が誰も逮捕されていなくても、受け子が関わった全ての事件で再逮捕される可能性が高いです。受け子が黙秘しても、カード情報から受け子が使ったATMを特定でき、周囲に設置された防犯カメラの画像から、同じ受け子が犯人であると特定できるからです。

 

再逮捕の組み立てとしては、被害者ごとに詐欺(カードの受けとり)と窃盗(現金の引き出し)をひとまとまりの事件として再逮捕するケースと、詐欺と窃盗を分け、被害者ごとに詐欺で逮捕していき、最後に、全ての被害者に関する現金の引出しをまとめて、窃盗で再逮捕するケースが考えられます。

 

【詐欺と窃盗を分けないケース】

逮捕①…被害者Aに対する詐欺+Aのカードで現金を引き出した窃盗

逮捕②…被害者Bに対する詐欺+Bのカードで現金を引き出した窃盗

逮捕③…被害者Cに対する詐欺+Cのカードで現金を引き出した窃盗

 

【詐欺と窃盗を分けるケース】

逮捕①…被害者Aに対する詐欺

逮捕②…被害者Bに対する詐欺

逮捕③…被害者Cに対する詐欺

逮捕④…ABCDの各カードで現金を引き出した複数の窃盗

 

5.余罪があっても再逮捕されないこともある

受け子が否認や黙秘をせず余罪も含めて自白しているケースでは、途中から再逮捕されず「追送致」として処理されることがあります。追送致とは警察が逮捕せずに、捜査書類だけ検察庁に送ることです。

 

追送致されると、再逮捕のケースに比べ、保釈請求できるタイミングが早くなります。保釈請求は、起訴後に勾留されている場合にすることができますが、追送致された事件は、そもそも勾留されていないため、保釈請求の対象にはならないためです。

 

余罪も含めて自白しているケースでは、事前に弁護士が検察官に追送致で処理するよう求めます。

 

【追送致なし】

事件①…5月1日に逮捕→5月23日に起訴(勾留あり)

事件②…6月1日に再逮捕→6月23日に追起訴(勾留あり)

事件③…7月1日に再逮捕→7月23日に追起訴(勾留あり)

⇒保釈請求は7月23日から可能

 

【追送致あり】

事件①…5月1日に逮捕→5月23日に起訴(勾留あり)

事件②…6月1日に追送致→6月23日に追起訴(勾留なし

事件③…7月1日に追送致→7月23日に追起訴(勾留なし

⇒保釈請求は5月23日から可能

 

【保釈のページ】

保釈に強い弁護士

 

オレオレ詐欺の受け子と勾留

逮捕は最長3日間しかできませんが、裁判官が引き続き身柄を拘束する必要があると認めれば、被疑者を勾留します。

 

起訴前の勾留は原則10日、最長20日ですが、オレオレ詐欺の受け子が勾留された場合、ほぼ最長の20日かそれに近い日数にわたって勾留され、満期近くで起訴されることが多いです。

 

再逮捕した後の再勾留についても同様です。

 

オレオレ詐欺の受け子と起訴

1.原則として起訴される

オレオレ詐欺の受け子は、逮捕されれば非常に高い確率で起訴されます。他の犯罪と異なり、示談したからといって、起訴猶予で不起訴になることはありません。

 

余罪で再逮捕された場合、余罪については「追起訴」という形で、後から起訴されます。追起訴が何件あっても判決はまとめて言い渡されます。

追起訴とは?追起訴されやすい4つの犯罪や裁判の流れについて

公判の流れ(追起訴あり)

 

2.現金受けとり型と起訴

現行犯逮捕された事件については、否認してもほぼ100%起訴されます。後日逮捕や再逮捕された事件については、詐欺グループの関係者が誰も逮捕されていなければ、受け子が黙秘することにより、嫌疑不十分で不起訴になる余地があります。

 

3.カード受けとり型と起訴

受け子が被害者からキャッシュカードを受けとるケースでは、防犯カメラなどの客観的証拠だけで有罪を立証できるため、関係者がだれも逮捕されていない状況で受け子が完全黙秘していても起訴される可能性が高いです。

 

オレオレ詐欺の受け子と判決

起訴された件数にかかわらず判決はまとめて言い渡されます。詐欺未遂で現行犯逮捕されたケースでは、初犯であれば示談が成立しなくても、執行猶予を獲得できる余地は十分にあります。

 

追起訴されたケースでは、被害者が3名前後、被害額が300万円前後であれば、初犯であれば、全員と示談すれば執行猶予を獲得できる余地があります。

 

被害者の数や被害金額が前記のレベルを超えてくると、実刑判決の可能性が高くなってきます。

 

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