不法侵入で逮捕される?逮捕後の流れや逮捕を回避する方法

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

 

不法侵入とは?

不法侵入は日常的に使われている言葉ですが、「不法侵入罪」という名前の犯罪はありません。不法侵入に該当する犯罪は、住居侵入罪、建造物侵入罪、邸宅侵入罪になります。各犯罪を整理すると以下のようになります。

 

 

 

侵入する建物

住居侵入罪

生活に使用されている家

建造物侵入罪

人が管理している店舗、事務所、校舎、役所

邸宅侵入罪

人が管理している空き家、シーズンオフの別荘

 

 

住居・建造物・邸宅いずれも、建物だけではなく庭などの敷地も含みます。罰則はいずれも3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。

 

 

刑法第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

 

 

不法侵入で逮捕されやすいケース

1.自宅近くの家に侵入したケース

自宅近くの家に不法侵入した場合、防犯カメラ映像をつなぎあわせることにより自宅が特定され、逮捕されることが多いです。

 

 

意外に多いのが、同じマンション内の別の部屋に侵入するケースです。男性が興味本位で若い女性の部屋に侵入することが多いです。

 

 

同じマンションの別の部屋に侵入した場合、マンション内の防犯カメラで特定されることが多いです。住人と鉢合わせして特定されることもあります。

 

 

2.盗撮目的で設置したカメラが回収されたケース

盗撮目的でトイレや更衣室にカメラを設置したケースでは、従業員や他の客にばれてカメラを回収されることがあります。

 

 

防犯カメラにトイレに侵入する姿が写っていたり、カメラを設置する際に自分の顔が写りこんでいたりすると、特定されて逮捕される可能性が高まります。

 

 

3.前科・前歴のある方が不法侵入したケース

不法侵入すれば、ドアノブや窓枠に指紋がつくことが多いです。盗撮目的でトイレや更衣室に侵入してカメラを設置した場合、そのカメラに自分の指紋が付いていることがあります。

 

 

前科・前歴があれば、指紋の情報が警察庁のデータベースに登録されています。そのため、指紋から特定され逮捕される可能性が高くなります。

 

 

4.悪質な不法侵入のケース

単発ののぞき事件であれば、たとえ被疑者として特定されても、逮捕されずに在宅事件として捜査されることもあります。

 

 

もっとも、同じ部屋に何度も侵入していたり、不法侵入した後に窃盗や不同意わいせつといった別の犯罪行為をした場合は、被疑者として特定されれば、逮捕される可能性が非常に高くなります。

 

 

不法侵入の逮捕率は?

刑事事件になった不法侵入の逮捕率は53%です。2人に1人が逮捕されていることになります。

 

*このページの数値は2022年版の検察統計年報に基づいています。

 

 

不法侵入は現行犯逮捕される?

不法侵入した後に居住者や警備員に見つかりその場で取り押さえられた場合は、現行犯逮捕されたものとして扱われることが多いです。

 

 

「警察官ではないのに現行犯逮捕できるの?」と思われるかもしれませんが、現行犯逮捕は私人でもすることができます。

現行犯逮捕とは?通常逮捕との違いや現行犯逮捕されたときの対処法

 

 

居住者や警備員が侵入者を一度も見失うことなく追跡して取り押さえた場合は、侵入場所からかなり離れたところでも現行犯逮捕が成立します。

 

 

不法侵入して居住者に見つかり、「ドロボウ!」等と追呼されている状況で、第三者に取り押さえられた場合は、準現行犯逮捕が成立します。準現行犯逮捕は現行犯逮捕と同様に扱われます。そのため、逮捕状は必要なく、私人が逮捕することもできます。

 

 

不法侵入は現行犯以外でも逮捕される?

1.緊急逮捕される場合

不法侵入して居住者や警備員に見つかり逃げたが、現場周辺で警戒していた警察官に見つかった場合は緊急逮捕される可能性が高いです。

 

 

緊急逮捕とは、一定の重大な犯罪行為をしたと疑うに足りる十分な理由があり、その場で逮捕しないと逃げられるという緊急性がある場合に、逮捕状なしですることができる逮捕のことです。緊急逮捕は現行犯逮捕と異なり、私人がすることはできません。

緊急逮捕とは?現行犯逮捕との違いや事例を弁護士が解説

 

 

緊急性があると言っても現行犯ではないため、緊急逮捕した後、直ちに逮捕状を請求し発付を受ける必要があります。

 

 

2.通常逮捕される場合

不法侵入した場合、時間がたってから逮捕されることもあります。後日逮捕する場合は、警察官が逮捕状を持って自宅や勤務先に来て身柄を確保します。これが通常逮捕です。令状逮捕ともいいます。

 

 

いったんその場から逃げても、警察に身元を特定されると、通常逮捕される可能性が高くなります。

 

 

不法侵入で逮捕された後の流れは?

刑事事件の身柄拘束は逮捕⇒勾留という2つのステップで実施されます。逮捕は最長でも3日間しかできませんが、勾留されると原則10日、勾留が延長されると最長20日わたって拘束されます。

 

 

勾留の要件は逃亡や証拠隠滅のおそれがあることです。逮捕後に検察官と裁判官に「勾留の要件を満たす。」と判断されると勾留されます。

 

 

逮捕されると48時間以内に検察庁に連行され検察官の取調べを受けます。検察官が勾留の要件を満たすと判断すると、裁判官に勾留請求をします。裁判官は、勾留質問という手続で被疑者の言い分を聞いた上で、勾留するか否かを決めます。

 

 

不法侵入で被疑者が勾留される確率は77%、勾留が延長される確率は62%です。

起訴前の流れ(逮捕・勾留あり)

 

 

不法侵入で勾留を阻止するためには?

不法侵入で逮捕されても、検察官が勾留請求しなかった場合や裁判官に勾留請求を却下された場合は、勾留されずに釈放されます。

勾留されなかったときの釈放の流れ

 

 

不法侵入の被疑者は、被害者の住所を知っているため、検察官や裁判官にお礼参りや証人威迫のおそれがあると判断されやすく、勾留されることが多いです。

 

 

勾留を阻止するためには、家族に身元引受人として監督してもらったり、一人暮らしの被疑者であれば当分の間、実家に戻ってもらうなどして、被害者への接触のおそれがないといえることを検察官や裁判官に納得してもらう必要があります。

早期釈放を実現する

 

 

不法侵入で自首して逮捕を回避する

不法侵入で逮捕を回避するための方法として、警察に自首することが考えられます。自首とは犯罪と犯人が発覚する前に自発的に捜査機関に出頭し、自己の犯罪行為を申告することです。

 

 

のぞきや盗撮目的での不法侵入については、自首することにより逮捕を回避できる可能性が高くなります。逮捕の要件は逃亡や証拠隠滅のおそれが大きいことですが、自首という形で自ら出頭している以上、これらのおそれが大きいとは必ずしも言えないからです。

 

 

不法侵入で自首する場合、出頭する警察署は侵入した場所を管轄する警察署になります。管轄外の警察署に出頭しても受けてくれないことが多いためご注意ください。

自首に弁護士が同行するメリットや同行の弁護士費用について

住居侵入と自首-同じアパートの別の部屋に侵入したケース