示談の相談は弁護士へ

示談の相談は弁護士へ

 

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

示談とは

示談とは、当事者同士が話しあいでトラブルを解決することです。話しあいの内容は様々ですが、加害者が被害者に対して、「示談金」、「解決金」、「和解金」などの名目でお金を払うことが一般的です。

 

示談の5つのメリット

加害者にとって示談のメリットは次の5つです。

 

1.警察が動いていない場合のメリット

刑事事件化しない

 

【解説】

被害者が警察に被害届や告訴状を出す前に示談をして、それらの提出を控えてもらえれば、刑事事件にはなりません。刑事事件にならなければ、逮捕や取調べもなく、前科・前歴もつきません。

 

 

知人女性への強制わいせつや勤務先での横領については、弁護士をつけて被害申告の前に示談をすることで、刑事事件化を阻止できるケースが多々あります。

 

2.逮捕された場合のメリット

釈放される可能性が高まる

 

【解説】

逮捕されるのは、逃亡のおそれと証拠隠滅のおそれがある場合です。被害者との間で示談が成立すれば、より軽い処分が見込めるため、逃亡のおそれは低くなります。

 

 

また、示談という形で許してもらった以上、被害者に働きかけて自己に有利な供述をさせようとするおそれ(=証拠隠滅のおそれ)も低くなります。そのため、示談が成立すれば、釈放される可能性が高まります。

 

3.刑事処分についてのメリット

①不起訴になる可能性が高まる

②起訴されても執行猶予になる可能性が高まる

 

【解説】

検察官や裁判官は、加害者の処分を決めるにあたって、被害者の処罰感情を重視しています。示談書の中に「被害者は加害者を許す」といった文言があれば、不起訴処分執行猶予を獲得できる可能性が高まります。

 

 

また、器物損壊罪等の親告罪は、告訴がなければ起訴することができないので、示談で告訴を取り下げてもらえれば、確実に不起訴になります。

 

4.刑事事件以外のメリット

被害者から損害賠償を請求されるおそれがなくなる

 

【解説】

示談書には、通常、「精算条項」といって紛争の蒸し返しを防止するための条項がつけられています。そのため、示談が成立すれば、被害者から、民事で損害賠償を請求される心配はなくなります。つまり、示談によって民事事件も完全に解決できるのです。

 

5.仕事関係のメリット

懲戒解雇のリスクが下がる

 

【解説】

刑事事件が勤務先に発覚している場合、仮に懲戒処分があるとしても、被害者と示談が成立し円満に解決していれば、勤務先にも本人に有利な事情として考慮してもらえることが多いです。

 

被害者が示談をする3つのメリット

刑事事件の被害者にとっても示談をするメリットはあります。示談金以外のメリットは次の3つです。

 

1.被害者の個人情報を加害者に秘密にできる

刑事事件で示談が成立しなければ、加害者が起訴される可能性が高まります。

 

 

起訴されれば、加害者のもとに事件の内容が記載された起訴状が送られます。被害者の氏名と事件当時の年齢もこの起訴状に記載されていますので、加害者に知られてしまいます。

 

 

これに対して、示談が成立すれば、加害者は不起訴となる可能性が高まります。不起訴になれば起訴状が加害者のもとに届くことはありません。

 

 

示談書には加害者と被害者の氏名が記載されますが、被害者が希望すれば、弁護士は被害者の氏名をマスキングした上で加害者に渡しますので、氏名が知られるおそれがなくなります。

 

2.証人として出廷する必要がなくなる

刑事事件で示談が成立しなければ、加害者は起訴され刑事裁判になる可能性が高くなります。裁判で加害者が否認すれば、多くの場合、被害者が証人として出廷し、被告人の面前で検察官や弁護士から尋問を受けることになります。

 

 

法廷で、被告人から被害者が見えないよう両者の間に遮へいボードを置くことも可能ですが、それでも、被害者にとって大きな心理的負担になります。

 

 

一方、示談が成立すれば不起訴になる可能性が高まりますし、仮に起訴されても、被告人が法廷で否認することは考えにくいです。そのため、被害者が証人として出廷することはないでしょう。

 

3.再発防止のルール作りができる

刑事事件の被害者は、示談交渉の中で、加害者の弁護士に対して、再発防止のためのルール作りを求めることができます。

 

 

痴漢事件の被害者であれば、「今後〇〇線を利用しない。」といった条項を示談書に入れるよう求めることができます。最終的には話し合いによって決まりますが、加害者側としても被害者の求めを軽視することはできないでしょう。

 

 

このように示談は加害者だけではなく被害者にもメリットがあります。弁護士が被害者にもメリットがあることをきちんと説明した上で、お互いが納得できる形で示談をまとめることが大切です。

 

示談金の相場

示談金の相場は刑事事件の種類によって変わってきます。例えば、痴漢や盗撮の示談金の相場は30万円から50万円ですが、より重い強制わいせつの示談金の相場はもっと高くなります。

 

 

個別のケースにおける示談金額は、被害の内容や被害者の処罰感情、加害者側の経済状況、担当弁護士の交渉能力などによって異なってきます。

 

 

万引きのケースでは1万円で示談できる場合もありますが、強制性交等の重い性犯罪のケースや相手に後遺症が残るけがを負わせた場合は200万円を超えることもあります。

 

示談書とは

示談交渉がまとまった場合は、合意の証として示談書を作成します。一般的な示談書は以下のようになります。

 

 

示 談 書

 

 〇〇(以下「甲」という)と 〇〇(以下「乙」という)との間において、令和〇年〇月〇日〇時〇分頃、〇〇において発生した、甲を被害者、乙を加害者とする暴行事件(以下「本件」という)につき、以下のように示談が成立したので、示談成立の証として本書面2通を作成し、甲乙各1通ずつ保管する。

 

 乙は、甲に対し、本件について深く謝罪し、甲はこれを受け入れる。

 乙は、甲に対し、本件の示談金として、金○万円の支払義務があることを認める。

 乙は、甲に対し、前項の金○万円を本日支払い、甲はこれを受領した。

 甲は、本件について、乙を許すこととし、乙の刑事処罰を求めない。

 甲と乙は、本件及び本示談書の内容につき、捜査機関の担当者に開示するなど合理的な理由のある場合を除き、第三者へ開示しないことを誓約する。

 甲と乙は、本示談書記載のほか、甲乙間に何らの債権債務が存しないことを相互に確認する。

 以 上

令和  年  月  日

(甲)

 

 

(乙代理人)

 

 

 

 

*冒頭部分について

甲が被害者、乙が加害者になります。事件の発生日時や場所については警察や検察の担当者に確認します。

 

*第2項について

示談金について規定しています。

 

*第3項について

弁護士が被害者にお会いして示談金をお支払いする場合の定めです。銀行振込の場合は、「乙は、甲に対し、前項の金員を、一括して、令和〇年〇月〇日までに、甲の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は乙の負担とする。」等とします。

 

*第4項について

示談で最も重要な部分です。「許す」とか「刑事処罰を求めない」という文言のことを宥恕文言(ゆうじょもんごん)といいます。宥恕文言があることによって不起訴の可能性が高まります。

 

*第5項について

守秘義務条項とよばれるものです。第三者への情報漏洩を防止します。

 

*第6項について

精算条項とよばれるものです。精算条項によって、示談成立後に追加で損害賠償を請求されるリスクがなくなります。

 

*署名欄について

甲欄…被害者に氏名を記載してもらい捺印していただきます。

 

乙代理人欄…加害者側弁護士の氏名と法律事務所の住所を記載し職印を押印します。弁護士が代理人となる場合は加害者が住所を記載する必要はありません。

 

示談交渉と弁護士

警察や検察は、刑事事件の加害者や家族に、被害者の氏名・住所・電話番号等の個人情報を教えてくれません。そのため、加害者や家族が被害者と示談交渉を行うことは困難です

 

 

もし被害者の住所や電話番号を知っている場合であっても、加害者が示談交渉をすることは避けた方がよいでしょう。被害者をより一層不安にさせて加害者にとって裏目になることも十分に考えられるからです。

 

 

性犯罪で加害者が被害者に接触すると、警察からも警戒されて逮捕の可能性が上がる場合もあります。逆に被害者から多額のお金を請求されて、犯罪行為をした弱みからそれに応じてしまうリスクもあります。

 

 

示談交渉は経験を積んだ弁護士に依頼するのがよいでしょう。

 

弁護士なしで示談できるケース

弁護士なしで示談できれば、弁護士費用を節約できるというメリットがあります。次の3つの事情に全てあてはまるケースについては、弁護士なしでの示談もあり得るでしょう。

 

 

①相手方の連絡先がわかる

②刑事事件になっておらず、事件化するおそれもない

③事案がそれほど複雑ではない

 

具体的には近隣同士の騒音トラブル、夫婦の離婚、友人に貸したお金の返済トラブル等です。

 

 

ただ、弁護士なしで示談すると、示談書の内容が不十分になることも予想されますので、法律相談という形で弁護士に示談書の内容をチェックしてもらってから示談をするとよいでしょう。

 

 

ウェルネスの示談対応

ウェルネス法律事務所の弁護士は、これまでに数多くの示談を成立させてきました。一口に示談といっても、事案の性質によって対応方法は様々です。

 

犯罪の種類は何か(性犯罪、暴力犯罪、財産犯罪)。

交渉相手は被害者本人か、被害者の両親か、被害者が選任した弁護士か。

万引き事案の場合、被害店舗は個人商店かチェーン店か。

チェーン店の場合、店長に決裁権限があるのか。本社マターなのか。

業務上横領罪の場合、被害会社は中小企業なのか、大企業なのか。

相手会社に顧問弁護士がいるのか。

 

これら様々な類型によって交渉方法も交渉期間も異なってきます。ウェルネスの弁護士は、豊富な示談交渉の経験に基づき、事案の性質に応じたきめ細かい対応を実践しています。

 

 

【示談のページ】

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