盗撮の示談金(慰謝料)の相場は?示談しないとどうなるかも解説

盗撮の示談

 

 

盗撮事件においては、被害者との間で示談をまとめることが重要と言われています。盗撮で捕まった方やそのご家族は、盗撮の示談について次のような疑問を抱かれていることでしょう。

 

 

☑ 盗撮で示談をするメリットは?

☑ 盗撮の示談金(慰謝料)はいくら?

☑ 盗撮の示談の流れは?

☑ 盗撮の示談の内容は?

 

 

このような方のために、数多くの盗撮事件を担当してきた弁護士 楠 洋一郎が、盗撮の加害者側が示談について知っておきたいことを解説しました。ぜひ参考にしてみてください!

 

 

盗撮の示談とは

盗撮事件における示談とは、盗撮の被害者に慰謝料をお支払いして許してもらうことです。

 

 

口約束で示談をしても検察官や裁判官から評価してもらえないため、「許す」等と記載された示談書に被害者に署名・捺印してもらうことが必要です。

 

 

被害者は盗撮されたことにより大きな精神的ショックを受けています。盗撮画像がネット上に流出するのではないかという不安にも悩まされています。

 

 

示談金(慰謝料)をお支払いして被害者の受けた苦痛を慰謝し、被害者から許しを得ること-これが示談です。

 

 

盗撮で示談をするメリット

1.不起訴の可能性が高まる

盗撮で捕まっても、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴になる可能性が高まります。不起訴とは刑事裁判にかけないということです。裁判にかけないということは処罰されないこと、すなわち前科がつかないことを意味します。

 

 

検察官は、盗撮の被疑者を処分するにあたって、被害者の処罰感情を重視します。示談という形で被害者の許しを得ていれば、被害者の処罰感情がないということになり、不起訴の可能性が高まります。

 

 

2.釈放の可能性が高まる

盗撮(迷惑防止条例違反)で逮捕されると、検察官の勾留請求⇒裁判官の勾留質問を経て、勾留されるか否かが決まります。

 

 

盗撮で勾留されると原則10日、勾留が延長されれば最長20日にわたって身柄が拘束されます。長期間にわたり拘束されると、会社にも盗撮で逮捕されたことが発覚し、解雇されるリスクが生じます。

 

 

もっとも、盗撮の被害者との間で示談が成立すれば、釈放される可能性が高くなります。弁護士が示談書のコピーを検察官に提出すれば、当日または翌日に釈放されることが多いです。

 

 

3.民事事件も解決できる

盗撮は迷惑防止条例違反という犯罪であると同時に、民法の不法行為(民法709法)に該当するため、民事事件にもなり得ます。

 

 

盗撮で捕まった場合、示談をしなければ略式起訴され罰金30万円程度になる可能性が高いです。罰金は国に対して支払うものであり、被害者に支払うものではありません。

 

 

そのため、被害者から民事で損害賠償を請求されるリスクが残ります。盗撮の被害者と示談をして、示談書に「これ以上の支払義務がない」という精算条項を付けておけば、民事も含め完全に事件を解決することができます。

 

盗撮の示談交渉は弁護士が行う

盗撮の被害者と示談交渉をするためには、警察官や検察官から被害者の連絡先を教えてもらう必要があります。

 

 

盗撮の被害者は加害者に個人情報を知られたくないと思っています。警察官や検察官も被害者の思いを尊重しますので、加害者には被害者の連絡先を教えてくれません。

 

 

弁護士が間に入れば被害者も安心できるため、連絡先を教えてもらえることが多いです。そのため、盗撮の示談交渉は弁護士を通じて行うことになります。

 

 

盗撮の示談の流れ

弁護士は次の5つのステップを経て示談書を検察官に提出します。

 

 

1.弁護士が捜査担当者に連絡する

弁護士が担当の警察官に「盗撮の被害者と示談をさせていただきたいので、被害者の連絡先を教えてもらえますでしょうか?」と依頼します。送検されている場合は、担当の検察官に依頼します。

 

 

2.被害者の意向を確認

担当者が被害者に電話し、弁護士に電話番号を教えてもよいか確認します。被害者が「電話番号を教えてもよい」と言った場合、担当者が弁護士に被害者の電話番号を教えてくれます。

 

 

3.示談交渉

弁護士が盗撮の被害者と面談して示談交渉を行います。被害者の希望により、電話やメール、リモート会議システム等で交渉することもあります。弁護士が被害者の希望にあわせて柔軟に対応していきます。

 

 

交渉の仕方としては、まずは弁護士から謝罪文をお渡しするのが一般的です。その後に、弁護士から示談金(慰謝料)を含めた具体的な提案をします。金額については、相場をふまえて、弁護士が事前に依頼者と協議して決めておきます。

 

 

4.示談の成立

話し合いがまとまると、弁護士が盗撮の被害者と面談し、示談金(慰謝料)の支払と引きかえに示談書に署名・捺印してもらいます。

 

 

被害者が郵送でのやりとりを希望される場合は、示談書を郵送し、署名・捺印された示談書が返送された後に弁護士が指定された口座に示談金を振り込みます。

 

 

5.捜査担当者へ示談書を提出する

弁護士が示談書や領収書のコピーを警察の担当者に提出します。送検されている場合は、担当の検察官に提出します。

 

 

盗撮の示談の決め手は?

1.電話番号を教えてもらえるかがポイント

盗撮の被害者から電話番号を教えてもらうことができれば、多くのケースで示談が成立します。逆に電話番号を教えてもらえない場合は、示談交渉に入ることができないため、示談が成立しないということになります。

 

 

そのため、盗撮事件の示談においては、「被害者から電話番号を教えてもらえるか否か」が大きな意味を持ちます。

 

 

2.電話番号を教えてもらえないときはどうする?

被害者の電話番号を教えてもらえない場合、弁護士が検察官に対して、「被害者へ伝えてもらいたいこと」を記載した上申書を提出し、被害者へ伝えていただくよう依頼します。

 

 

被害者の不安や負担をふまえた対応策を上申書に盛り込むことにより、一度断られた被害者から電話番号を教えていただけることも少なくありません。

 

 

被害者の不安や負担対応策
氏名や住所等の個人情報が加害者に知られてしまうのではないか?

弁護士が被害者の個人情報を依頼人(加害者)に教えない。

示談書に記載された個人情報はマスキングして依頼人に渡す。

こちらからお金の話なんてしたくない弁護士の方から具体的な示談金額を提案する。
忙しいのに弁護士と何度も話をするのは面倒対面での交渉以外に、メールや電話等でも対応する。

 

盗撮の示談金(慰謝料)の相場

盗撮の示談金(慰謝料)の相場は30万円から50万円です。

 

 

被害者側も示談交渉に入る前に、インターネットで示談金の相場を調べていることが多いです。そのため、相場から大きくずれた金額になることはほとんどありません。

 

 

エスカレーターや階段上での盗撮と比較して、トイレ内での盗撮は性的侵害の程度が強く、示談金が高めになる傾向があります。

 

盗撮の示談金-相場より低くても示談できる?

1.相場より低くても示談の余地はある

盗撮の示談金の相場は30万円から50万円ですが、相場より低い金額で示談をすることは可能でしょうか?

 

 

示談金の相場は一応の目安であり、法的な拘束力はありません。そのため、相場より低い金額で示談がまとまることもあります。

 

 

2.金額が低いとリスクもある

盗撮の被害者と交渉する際、相場の下限(30万円)より低い金額を提案すると、被害者の感情を逆なでしてしまい、交渉が決裂してしまうリスクもあります。

 

 

経済的に厳しい場合は20万円程度から交渉を始めることもありますが、スムーズに示談をまとめるためには、示談金の相場をふまえた上での交渉をした方がよいでしょう。

 

 

3.10万円で示談できる?

弁護士事務所の中には「盗撮の示談金の相場は10万円前後」と説明しているところもあるようですが、10万円で示談が成立することはまずありません。

 

 

示談金をなるべく低く言った方が、相談者を安心させることができ集客につながると思われますが、真に受けると途中で予算不足になるリスクがありますのでご注意ください。

 

 

盗撮の弁護士費用をおさえて示談金を準備する

盗撮の弁護士費用の中には示談金は含まれていません。そのため、ご依頼者が負担する費用は弁護士費用と示談金の合計額になります。

 

 

費用を節約するために示談金を削ると、被害者の気持を逆なでして示談不成立となるリスクがあります。

 

 

予算が限られている場合は、示談金ではなく弁護士費用を節約することにより、余裕をもって示談金を確保しておいた方がよいでしょう。

盗撮の弁護士費用を節約する方法

刑事事件の弁護士費用が安い法律事務所

 

 

盗撮の示談の内容は?

被害者との間で示談の話がまとまると、示談の内容を記載した示談書に署名・捺印してもらいます。盗撮の示談書の書式(テンプレート)を以下に紹介します。

 

 

示 談 書

 

 〇〇〇〇(以下「甲」という)と 〇〇〇〇(以下「乙」という)との間において、令和〇年〇月〇日、〇〇駅構内エスカレーター上において発生した、甲を被害者、乙を加害者とする盗撮事件(以下「本件」という)につき、以下のように示談が成立したので、示談成立の証として本書面2通を作成し、甲及び乙代理人各1通ずつ保管する。

 

1 乙は、甲に対し、本件について深く謝罪し、甲はこれを受け入れる。

2 乙は、甲に対し、本件の示談金として、金〇万円の支払義務があることを認める。

3 乙は、甲に対し、前項の金〇万円を本日支払い、甲はこれを受領した。

4 乙は、甲に対し、今後、故意に甲に近づかないことを誓約する。

5 乙は、甲に対し、下記①ないし③を表明保証する。

①甲の画像データ(以下「本件データ」という)を、本件に使用したスマートフォン(以下「本件スマートフォン」という)以外の媒体に転送していないこと。

②本件データを、クラウド上に保存していないこと

③本件データを第三者(捜査機関の人間を除く)へ開示(SNS、電子メール、ショートメール、電子掲示板等のインターネットを通じて開示する行為を含む)していないこと

6 乙は、甲に対し、本件スマートフォンが返還される際、同スマートフォンに本件データが保存されていれば、警察官の面前で、同データを削除することを誓約する。

7 甲と乙は、本件及び本示談書の内容につき、捜査機関の担当者に開示するなど合理的な理由のある場合を除き、第三者(甲乙の家族を除く)へ開示しないことを誓約する。

8 甲は、本件について、乙を許すこととし、捜査機関に提出した被害届を取り下げる。

9 甲と乙は、本示談書記載のほか、甲乙間に何らの債権債務が存しないことを相互に確認する。

以 上

令和  年  月  日

 (甲)

東京都~

〇〇 〇〇 印

 

(乙代理人)

東京都~

〇〇法律事務所

 弁護士 〇〇 〇〇 印

 

盗撮の被害者は加害者に個人情報を知られたくないと思っていますので、ご依頼者には、グレーで網掛けした部分をマスキングしたコピーをお渡しし、示談書の原本は弁護士が保管することが多いです。

 

盗撮の示談書の2つのポイント

盗撮の示談書を作成する上でおさえておきたいポイントは以下の2つです。

 

 

1.宥恕文言を入れる

「許す」という言葉を宥恕文言(ゆうじょもんごん)といいます。示談書の中に宥恕文言が入っていれば、不起訴になる可能性が非常に高くなります。

 

 

被害者が「許す」という言葉を入れることに納得されない場合、「刑事処罰を求めない」という文言があるだけでも、不起訴になる確率は高くなります。

 

 

「許す」という言葉も「刑事処罰を求めない」という言葉もなければ、示談が成立しても処罰される可能性が十分にあります。そのため、少なくともどちらかの文言を入れることは必須といえるでしょう。

 

 

2.精算条項を入れる

精算条項とは、加害者側から見ると「示談書に記載されている義務を除いて一切の義務を負いません」という意味の条項です。

 

 

示談金を支払って示談書で定めたルールを守っているにもかかわらず、被害者から追加で損害賠償を請求されれば、示談をした意味がありません。

 

 

示談書に精算条項を入れることによって、そのようなリスクを排除することができます。上で紹介した書式の一番最後の条項が精算条項になります。

 

 

盗撮の示談交渉で示談金を吊り上げられたら?

「被害者から示談金を吊り上げられたらどうすればいいですか?」-盗撮事件の依頼者からこのような質問を受けることがあります。

 

 

盗撮のような刑事事件の示談は、悪いことをした加害者が被害者に許してもらうものである以上、どうしても被害者優位の交渉にならざるを得ない面があります。

 

 

そのため、加害者の覚悟が決まっていないと被害者のペースで交渉が進んでいくことになります。

 

 

示談金を吊り上げられて支払えない場合は、「この金額が限界で、これ以上であれば示談不成立でもやむを得ない」と覚悟をもって交渉に臨む必要があるでしょう。そうすれば、結果的には適切な金額で示談がまとまることが多いです。

 

 

盗撮で示談しないとどうなる?

1.盗撮の被害者が特定されているケース

初犯であれば、示談をしないと略式起訴され罰金になる可能性が高いです。罰金であっても前科がつきますので、前科を回避したい場合は示談を目指すことになります。

 

 

前科がある場合は、公判請求され検察官から懲役刑を請求される可能性が十分にあります。執行猶予中の場合は、示談をしないと実刑になる可能性が非常に高いので、何としても示談を成立させたいところです。

 

 

2.盗撮の被害者が特定されていないケース

盗撮は被害者が特定されていなくても、事件化することが少なくありません。そのようなケースの具体例を以下に紹介します。

 

 

【被害者が特定されていない盗撮事件】

駅のエスカレーター上で前に立っていた女性を盗撮したところ、後ろに立っていた男性に見つかり、駅員に突き出された。その後、警察署に連行され取調べを受けた。盗撮の被害者は盗撮されたことに気づかず、そのままどこかに立ち去ってしまった。

 

 

捕まった時点で盗撮の被害者が特定されていない場合、後日、警察が捜査して被害者を特定することは通常ありません。被害者が特定されていない以上、示談交渉に入れないことになります。

 

 

もっとも、次の4つの活動を行うことによって、示談なしでも不起訴になる余地があります。

 

 

①反省文の作成

②クリニックへの通院

③家族による監督プランの作成

贖罪寄付

 

 

自首をしていれば不起訴の可能性がさらに上がります。

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