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在宅事件とは?呼び出しはいつ?流れや不起訴についても解説

起訴前の流れ

 

 

在宅事件とは、被疑者を逮捕しないで捜査を進める事件です。在宅事件の被疑者になってしまった方は、以下のような疑問をお持ちのことと思います。

 

 

☑ 在宅事件の流れは?

☑ 在宅事件の呼び出しはいつ?

☑ 在宅事件で連絡がこないのはなぜ?

☑ 在宅事件の不起訴率は?

☑ 在宅事件で不起訴になる方法は?

☑ 在宅事件の不起訴はいつわかる?

 

 

これらの疑問点について刑事事件に詳しい弁護士 楠 洋一郎ががわかりやすく解説しました。ぜひ参考にしてみてください!

 

 

 

在宅事件とは?身柄事件との違い

1.在宅事件とは

在宅事件とは被疑者を逮捕しないで捜査を進める事件です。これに対して、被疑者を逮捕して捜査を進める事件を身柄事件といいます。

 

 

在宅事件の被疑者は、取調べを受けるために警察署や検察庁に行く必要がありますが、基本的にはこれまで通りの生活をすることができます。会社や学校に行くこともできますし、出張や旅行に行くことも可能です。

 

 

2.在宅事件になる?ならない?

刑事事件の被疑者になれば必ず逮捕されるわけではありません。被疑者を逮捕するためには「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」がなければなりません(刑訴法199条1項)。「何となく怪しい」というだけでは逮捕できないのです。

 

 

罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合でも、逃亡や証拠隠滅のおそれといった逮捕の必要性がなければ、逮捕することはできません(刑訴法199条2項但書、刑訴規則143条の3)。

 

 

これらの要件を満たさない場合は、逮捕されず在宅事件として捜査されます。

 

 

3.在宅事件になる確率は?

刑事事件における在宅事件の割合は約63%、身柄事件の割合は約37%です。

根拠:2023年検察統計年報:罪名別 既済となった事件の被疑者の逮捕及び逮捕後の措置別人員

 

 

上記の数字は最初から逮捕されていない在宅事件の比率です。逮捕された後に釈放され途中から在宅事件になったケースも含めるとさらに比率は上がります。

 

 

刑事事件の被疑者になれば必ず逮捕されると思っている人がいますが、任意捜査が原則で、逮捕のような強制処分は必要な場合に限られます。

 

 

【刑事訴訟法】

第197条 捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。

 

 

在宅事件は長すぎる!?どうして?

1.刑事事件の流れ

刑事事件の捜査はまず警察によって行われ、その後に検察官に引き継がれます。検察官は、警察での捜査をふまえ、被疑者を起訴するか不起訴にするかを決めます。警察から検察官への引継ぎを「送検」といいます。

 

 

身柄事件では、被疑者の身柄と捜査資料を検察官に引き継ぎます。この引き継ぎのことを「身柄送検」といいます。在宅事件では、捜査資料のみを検察官に引き継ぎます。この引き継ぎのことを「書類送検」といいます。

書類送検とは?逮捕との違いは?会社にバレる?流れについても解説

 

 

2.在宅事件が長くなる理由

身柄事件の場合は、48時間以内に身柄送検しなければなりません。送検を受けた検察官は20日以内に被疑者を起訴するか釈放するかを決めなければなりません。このように身柄事件では、送検の前後で厳格なタイムリミットが定められています。

 

 

これに対して、在宅事件は書類送検するまでのタイムリミットも送検後のタイムリミットもありません。そのため、身柄事件に比べて捜査が長くなるのです。

 

 

 

検察官送致までのタイムリミット

送致後のタイムリミット

身柄事件

逮捕から48時間

最長20日

在宅事件

なし

なし

 

 

在宅事件の流れは?

1.書類送検までの流れ

在宅事件では書類送検までのタイムリミットはありません。通常は、被疑者を検挙してから書類送検するまで2,3か月程度かかります。事件が複雑だったり、否認している場合は、6か月以上かかることもあります。

 

 

2.書類送検後の流れ

書類送検された時点で担当の検察官が決まります。検察官が起訴・不起訴を決めるにあたってタイムリミットはありません。

 

 

通常は検察官が起訴するか不起訴にするかを決めるまで書類送検された日から2,3か月程度かかります。ひと月単位で手続が進んでいくイメージです。

 

 

在宅事件で警察の呼び出しはいつ?

現行犯で検挙された場合、すぐに1回目の取調べが行われます。2回目以降の取調べについては、事前に警察から被疑者や身元引受人に呼び出しの連絡が入ります。

 

 

いつ呼び出しがくるかは事件によって様々です。早い場合は検挙後1週間以内に呼び出しがくることもありますが、1か月たっても呼び出しがこないこともあります。

 

 

性犯罪など被害者がいる事件では、被害者の話を聞いてから被疑者の取調べをするため、被害者が忙しくてなかなか警察署に行けない場合は、連動して被疑者の呼び出しも遅くなります。

 

 

違法薬物の事件については、鑑定で陽性反応が出てから取調べをするため、鑑定待ちに数か月かかることもあります。

 

 

【警察からの呼び出しの回数は?】

被疑者が容疑を認めていれば、呼び出しの回数は1,2回になることが多いです。否認している場合は3回以上呼び出されることもあります。

 

 

在宅事件で検察官の呼び出しはいつ?

身柄事件では送検された当日に検察官の取調べがあります。これに対して、在宅事件では、書類送検されてから起訴・不起訴を決めるまでのタイムリミットがありません。

 

 

そのため、送検当日に取調べが行われることはありません。通常は送検されて1か月程度たってから取調べが行われることが多いです。

 

 

自白事件で弁護士が被害者と示談交渉をしている場合は、交渉が終わるまで呼び出しを待ってもらえることが多いです。否認事件の場合は、検察官が被害者や関係者から事情を聴きますので、呼出しまでに2,3か月かかることもあります。

 

 

上記は書類送検された日を基準として解説していますが、弁護士に依頼していなければ、そもそもいつ書類送検されたのかを知ることができません。

 

 

通常であれば、最後に警察で取調べを受けた日から1か月前後で書類送検されます。そのため、最後に警察で取調べを受けてから2か月前後で呼出しが来ると考えることができます。

*一応の目安であり大幅にずれることもあります。

 

 

【検察官からの呼び出しの回数は?】

検察官の呼出しは通常1回ですが、否認事件では2回以上呼び出すこともあります。呼び出しの方法は、被疑者に電話をして呼び出す方法と取調べの日時を記載した呼出状を被疑者の自宅に送付する方法の二つがあります。

 

器物損壊などの親告罪で示談が成立し告訴が取り下げられている場合は、検察官からの呼び出しはありません。暴行や万引きなどの軽微な事件で示談が成立している場合も、一度も呼び出されずに不起訴になることが多いです。

 

 

在宅事件で検察官の取調べ後はどうなる?

検察官は被疑者を取調べた上で、起訴するか不起訴にします。起訴には略式起訴と正式起訴があります。

 

 

1.不起訴にする場合

検察官が不起訴にする方針であれば、取調べは短時間で終わることが多いです。供述調書を作成せずに口頭注意だけで終わることもあります。

 

 

検察官によっては「不起訴にします。」とか「月末までに連絡がなければ不起訴と思ってください。」等と言ってくれる方もいます。

 

 

2.略式起訴する場合

検察官が略式起訴する方針であれば、略式手続について被疑者に説明し、同意書にサインさせます。

略式裁判とは?罰金の金額や払えない場合について弁護士が解説

 

 

おおむね1か月後くらいに自宅に裁判所から略式命令が届くことになります。

 

 

3.公判請求する場合

公判請求する方針であれば、検察官から「起訴状が届きます」とか「裁判を受けてもらいます」といった発言があることが多いです。

刑事裁判の流れは?

 

 

罰金や懲役の前科があれば公判請求される可能性が高くなります。

 

 

在宅事件の不起訴率は?

不起訴とは被疑者を刑事裁判にかけないこととする処分です。

不起訴処分とは?無罪との違いは?弁護士が分かりやすく解説

 

 

起訴するか不起訴にするかは検察官が決定します。不起訴になれば刑事裁判にならないので処罰されず前科がつくこともありません。

 

 

在宅事件と身柄事件をまとめた刑事事件全体の不起訴率は約60%です。

根拠:2023年検察統計年報:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員

 

 

在宅事件の方が身柄事件に比べて軽微な事件が多いため、不起訴率はやや高くなると思われます。

 

 

在宅事件で不起訴を獲得する方法は?

1.自白事件(容疑を認めている事件)

容疑を認めている場合は、起訴猶予での不起訴を目指すことになります。起訴猶予とは起訴するだけの証拠は揃っているが、検察官が裁量的に不起訴にすることです。

不起訴処分とは?無罪との違いは?弁護士がわかりやすく解説

 

 

性犯罪や財産犯など被害者がいる事件では、被害者との間で示談がまとまっていれば、起訴猶予で不起訴になる可能性が高くなります。

 

 

薬物犯罪など被害者がいない事件では、充実した再発防止プランを立てて実行することにより、不起訴になる余地があります。

 

 

2.否認事件(無罪を主張している事件)

否認事件では、嫌疑不十分での不起訴を目指すことになります。嫌疑不十分とは起訴できるだけの証拠が揃っていないため不起訴にすることです。

 

 

嫌疑不十分での不起訴を獲得するためには、黙秘権を適切に行使し、取調官に不利な供述調書をとられないようにすることが重要です。

否認事件の取調べ-黙秘によって不利な調書をとらせない!

 

 

在宅事件の不起訴はいつわかる?

検察官は不起訴にしたからといって、必ずしも被疑者にそのことを教えてくれるわけではありません。取調べの際に検察官から「このまま連絡がなければ不起訴です。」と言われることはありますが、不起訴になった時点で改めて連絡してくれることは少ないです。

 

 

弁護士に依頼していれば、弁護士が検察官に不起訴になったか否かを定期的に確認してくれます。不起訴になっていれば不起訴の証明書(不起訴処分告知書)を取得してくれるでしょう。

不起訴処分告知書とは?取得できる時期や取得方法について解説

 

 

弁護士に依頼していなければ、ご自身で担当の検察官に電話して確認してみてください。

 

 

在宅事件で起訴されたらどうなる?

起訴されると被告人として刑事裁判を受けることになります。略式起訴されると簡易な裁判で罰金または科料の支払を命じられます。法廷は開かれず略式命令という書面が被告人の自宅に郵送されます。

略式裁判とは?罰金の金額や払えない場合について弁護士が解説

 

 

正式起訴されれば、裁判所から起訴状が被告人の自宅に届きます。その後、被告人が決められた公判期日に出廷し、公開の法廷で審理を受けます。

公判の流れ

 

 

在宅事件で報道される?

在宅事件で報道されるのは社会の注目を浴びるような事件に限られます。その場合でも、一般人であれば匿名で報道されます。

 

 

有名人や政治家でない限り、通常の在宅事件の被疑者が報道されることはないでしょう。匿名で報道されることもありません。

 

 

在宅事件で会社にバレる?

在宅事件の被疑者はこれまで通り会社に行くことができますし、警察が会社に連絡を入れることも通常ありません。そのため、会社にバレる可能性は低いです。

 

 

もっとも、公務員の場合は、警察が職場に連絡することが多いので、職場にバレる可能性が十分にあります。

 

 

弁護士が職場に通報しないよう警察に求めることにより、通報を阻止できる場合もあるため、まずは刑事事件の経験方法な弁護士にご相談ください。

 

在宅事件で依頼できる弁護士は?

1.在宅捜査中に依頼できる弁護士

刑事事件の弁護士は、当番弁護士、国選弁護人、私選弁護人の3種類です。このうち在宅捜査中に依頼できる弁護士は私選弁護人だけです。

 

 

当番弁護士は、逮捕された方と無料で一回接見してくれますが、身柄拘束されていない限り依頼できません。起訴前の国選弁護人も弁護士費用が無料になることが多いですが、利用できるのは勾留された方に限られるため、在宅捜査中の方は依頼できません。

 

 

ご本人が逮捕・勾留されている場合に私選弁護人に依頼する場合は、家族に動いてもらうことになりますが、在宅捜査中であれば、ご本人が弁護士事務所に直接連絡をして依頼することになります。

 

 

 

在宅捜査中に依頼できる?

当番弁護士

できない

国選弁護人

できない

私選弁護人

できる

 

 

2.在宅起訴後に依頼できる弁護士

被疑者を勾留せずに起訴することを在宅起訴といいます。在宅起訴されれば被告人として裁判を受けることになりますが、身柄拘束されているわけではありませんので、これまで通りの生活をすることができます。

 

在宅起訴された場合に依頼できる弁護士は、私選弁護人か国選弁護人です。当番弁護士は身柄拘束されていない限り依頼することはできません。起訴前の国選弁護人も勾留されていない限り依頼できませんが、起訴後であれば在宅事件でも依頼できます。

 

 

ただ、起訴後からの依頼となりますので、どんなに頑張っても不起訴を獲得することできません。そのため、無罪にならない限り前科がついてしまいます。「前科はつけたくない」という方は起訴前に私選弁護人に依頼することをお勧めします。

 

 

 

在宅起訴後に依頼できる?

当番弁護士

できない

国選弁護人

できる

私選弁護人

できる

 

 

3.在宅事件で私選弁護人に依頼する際のポイント

私選弁護人の弁護士費用は事務所によって様々です。ネット上で目立っている事務所は、膨大な広告費をかけており、弁護士費用も高くなりがちです。

 

 

在宅事件であれば「一刻を争う」というわけではありません。依頼した後に後悔しないよういくつかの事務所に相談して、納得できる弁護士費用の事務所に依頼するとよいでしょう。

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