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凶器準備集合罪とは?構成要件や凶器準備結集罪との違いを解説

凶器準備集合罪とは?構成要件や凶器準備結集罪との違いを解説

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

 

凶器準備集合罪とは?

1.凶器準備集合罪の条文は?

凶器準備集合罪は刑法208条の2第1項に規定されています。凶器準備集合罪の条文は以下のとおりです。

 

 

刑法208条の2第1項】

二人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

 

 

2.凶器準備集合罪の構成要件は?

犯罪が成立する要件のことを構成要件といいます。凶器準備集合罪の構成要件は次の2つです。

 

 

2人以上の者が他人の生命・身体・財産に対して共同して害を加える目的で集合したこと

①の状況で、凶器を準備して、または凶器の準備があることを知って集合したこと

 

 

3.凶器準備集合罪の罰則は?

凶器準備集合罪の罰則は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

 

 

凶器準備集合罪の「害を加える目的」とは?

「害を加える目的」とは、積極的に攻撃する意図を有している場合だけではなく、相手の攻撃に対する反撃として害を加える目的でもよいとされています。その場合、相手の攻撃が間近に迫っていることまでは要求されません。

 

 

相手の攻撃があり得るということを予想し、攻撃があった場合に生命・身体・財産に共同して害を加える認識があればよいとされています。

 

 

凶器準備集合罪の「凶器」とは?

凶器には性質上の凶器用法上の凶器の2つがあります。性質上の凶器とは、拳銃や日本刀など人を殺傷するために作られた器具のことです。

 

 

用法上の凶器とは、本来は人を殺傷するために作られた器具ではないものの、金属バットのように、用途によっては人を殺傷しうる器具のことです。

 

 

【判例で認められた用法上の凶器】

木刀、竹刀、空気銃、コンクリートの塊、角材、火炎瓶

 

 

凶器準備集合罪の保護法益は?

刑罰を科すことによって守ろうとしている利益を保護法益といいます。凶器準備集合罪の保護法益は、個人の生命・身体・財産の安全ですが、それらにとどまらず社会生活の平穏という公共の利益も保護しています。

 

 

凶器準備集合罪が定められた昭和33年当時は、暴力団による抗争が激化し社会問題になっていました。凶器を準備して集合した時点で取り締まれるようにすれば、抗争を未然に防ぐことできます。

 

 

それによって、社会生活の平穏が維持され、抗争によって誘発される殺人・傷害・器物損壊などの犯罪を防止することができます。そのために凶器準備集合罪が定められました。

 

 

凶器準備結集罪とは?

1.凶器準備結集罪の条文は?

凶器準備集合罪は刑法208条の2第2項に規定されています。条文は以下のとおりです。

 

 

【刑法208条の2第2項】

前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、三年以下の懲役に処する。

 

 

2.凶器準備結集罪の構成要件は?

凶器準備結集罪の構成要件は次の2つです。

 

2人以上の者が他人の生命・身体・財産に対して共同して害を加える目的で集合したこと

①の状況で、凶器を準備して、または凶器の準備があることを知って人を集合させたこと

 

 

3.凶器準備結集罪の罰則は?

凶器準備結集罪の罰則は、3年以下の懲役です。凶器準備集合罪と異なり罰金刑はありません。

 

 

凶器準備集合罪と凶器準備結集罪との違いは?

凶器準備集合罪は、一定の要件のもとに「集合した者」を処罰する犯罪です。これに対して、凶器準備結集罪は、一定の要件のもとに人を「集合させた者」を処罰する犯罪です。

 

 

人を集合させる者がいれば凶器準備集合事件が発生しやすくなることから、凶器準備結集罪の罰則の方が凶器準備集合罪の罰則よりも重くなっています。

 

 

凶器準備集合罪で逮捕された後の流れは?

凶器準備集合罪で逮捕されたら翌日か翌々日に検察庁に連行され検察官の取調べを受けます。検察官が「逃げたり証拠を隠滅するおそれがある。」と判断すると、裁判官に勾留を請求します。

勾留請求とは?流れや阻止する方法について弁護士が解説

 

 

被疑者は勾留請求された当日または次の日に裁判所に連行され、裁判官の勾留質問を受けます。裁判官も「逃げたり証拠を隠滅するおそれがある。」と判断すると、検察官の勾留請求を許可して、被疑者を勾留します。

勾留質問とは?流れや勾留を阻止するための活動を弁護士解説

 

 

勾留されると原則10日、勾留が延長されると最長20日にわたって留置場で拘束されます。検察官はこの期間に被疑者を起訴するか釈放しなければなりません。

逮捕後の流れや釈放のタイミングについてわかりやすく解説

 

 

凶器準備集合罪の逮捕率は?

凶器準備集合罪は、暴力団や暴走族、半グレ等の抗争に伴い発生する犯罪であり、関与者が多数になることが多いです。

 

 

被疑者多数の共犯事件では、共犯者同士の口裏合わせが行われやすいため、全ての被疑者を一斉に逮捕することが多いです。

 

 

逮捕されれば同様の理由で勾留されることが多いです。2023年版の検察統計年報(最新版)によれば、凶器準備集合罪の逮捕率・勾留率・勾留延長率は以下となります。

 

 

逮捕率

76%

勾留率

100%

勾留延長率

85%

*凶器準備結集罪も含まれます。

 

 

凶器準備集合罪の起訴率は?

2023年版の検察統計年報(最新版)によれば、凶器準備集合罪の起訴率は33%です。そのうち略式起訴は87%、正式起訴は13%です。

 

*凶器準備結集罪は2023年に検察庁で3件取り扱われ、うち2件が起訴(公判請求)、1件が不起訴(嫌疑不十分)でした。

 

 

略式起訴されれば、非公開の簡易な略式裁判で審理され罰金刑になります。罰金であっても前科がつきます。

前科のデメリットについて弁護士が解説

 

 

凶器準備集合罪の弁護活動(容疑を認める場合)

1.反社会グループから脱退する

凶器準備集合は、暴力団・暴走族・半グレなどの反社会集団の抗争の一環として発生します。再犯防止のためには、反社会集団から離脱することが必要です。

 

 

具体的には携帯電話の番号を変更して反社会集団の関係者から連絡がこないようにします。暴力団については、警察に脱退したいと相談すれば、離脱を支援してくれたり、雇用先の確保など社会復帰に向けた支援をしてくれます。

 

 

2.従属的であることを主張する

凶器準備集合はグループ同士の抗争に関連して発生します。抗争している各グループにはリーダーもいれば、末端の使い走りのようなメンバーもいます。

 

 

反社会的集団の内部では、強固な上下関係が築かれているため、上位のメンバーから参加するように指示されれば、下位のメンバーは事実上拒否できません。

 

 

そのような事情がある場合は、関与の仕方が従属的であることを弁護士が主張します。

 

 

3.家族に監督してもらう

本人が反社会的な集団から離脱して正業につくためには家族の監督が必要です。具体的な監督プランを記載した誓約書を家族に作成してもらい、弁護士が検察官に提出します。

 

 

起訴された場合は、家族に情状証人になってもらい、法廷で監督プランを証言してもらいます。

情状証人とは?メリット・デメリットや本番で役に立つ5つのポイント

 

 

器準備集合罪の弁護活動(容疑を否認する場合)

☑ 自分は集合場所に行っていない

☑ 「とにかく来い」と言われてよくわからずに行ったら逮捕された

 

 

このような事情がある場合は、嫌疑不十分での不起訴を目指します。

不起訴処分とは?無罪との違いは?弁護士がわかりやすく解説

 

 

不起訴になれば、刑事裁判にかけられることなく手続が終了するため、前科がつくことはありません。起訴(公判請求)された場合に比べ釈放のタイミングも早くなります。

 

 

取調官は、あの手この手を使って「凶器があることを知って集合しました」という自白調書をとろうとしてきます。自白調書をとられてしまうと起訴される可能性が高くなります。

 

 

黙秘権を行使したり、調書への署名押印を拒否することにより、自白調書が作成されることを阻止します。

黙秘とは?黙秘の意味や使い方、デメリットについて解説

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