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横領した人の末路は?業務上横領に強い弁護士が解説

横領した人の末路は?業務上横領に強い弁護士が解説

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

横領した人の末路-懲戒解雇される

業務上横領が会社に発覚すると懲戒解雇される可能性が高いです。

 

 

従業員を即時解雇する場合、会社は解雇予告手当として1か月分の給与に相当する金額を支払わなければなりません。例外として、会社が労基署に除外認定を申請して認められると、解雇予告手当なしで即時解雇が可能になります。

業務上横領と労基署の解雇予告除外認定

 

 

懲戒解雇されると会社から離職票が交付されます。離職票の「重責解雇」の欄にチェックが付けられている可能性が高いです。

 

 

懲戒解雇の事実を隠して別の会社に入社した場合、その後に懲戒解雇されたことが発覚すると経歴詐称となり、再び解雇されるリスクがあります。

 

 

【懲戒解雇を避けられる?】

中小企業の場合は、弁護士が交渉することによって懲戒解雇を回避できる余地があります。

 

 

横領した人の末路-逮捕・勾留される

業務上横領が発覚すると逮捕されることが少なくありません。数百万円のお金を横領すれば逮捕される可能性が高くなります。数千万円になれば重い病気を患っているなど特別の事情がない限り逮捕されます。

業務上横領で逮捕されるケースとされないケース

 

 

業務上横領は手口や金銭の流れを解明するために時間がかかることが多く、逮捕されれば勾留される可能性が高くなります。勾留されれば原則10日、勾留が延長されれば最長20日わたって拘束されます。勾留中は連日取調べが実施されます。

 

 

起訴する場合は、勾留を延長した上で勾留19日目または20日目に起訴することが多いです。起訴されるとその後も勾留が続きます(起訴後勾留)。起訴後勾留の期間は起訴から2か月ですが、その後も1か月単位で判決の日まで更新されます。

 

 

業務上横領のケースでは、長期間にわたって着服を繰り返していることが多いです。そのようなケースでは何度か再逮捕されることが多く、身柄拘束が長くなりがちです。

再逮捕とは?報道や執行猶予との関係など「気になること」を全解説!

 

 

【逮捕されたらいつ釈放される?】

業務上横領で逮捕されたら勾留される可能性が高いです。最長20日の勾留期間内に会社と示談が成立すれば起訴されずに釈放される可能性が高くなります。

 

示談が成立しなければ起訴される可能性が高くなります。起訴された場合は、保釈請求をすることができます。保釈請求が許可され保釈金を裁判所に納めれば釈放されます。

保釈に強い弁護士|保釈金や弁護士費用の相場を解説

 

 

横領した人の末路-報道される

業務上横領で逮捕されると報道されることがあります。 

 

 

最も報道されやすいタイミングは逮捕直後です。逮捕されると48時間以内に検察官に送致されます。逮捕翌日または翌々日の朝に護送バスで検察庁まで連行されます。

逮捕後に東京地検・東京地裁に連行されるときの流れ

 

 

報道される場合は、護送バスに乗り込むために警察の庁舎から出たタイミングでカメラマンに撮影されることが多いです。そのため、警察の庁舎から一歩でも出たら下を向いて歩いた方がよいでしょう。

刑事事件で顔が報道されないためにするべきたったひとつのこと

 

 

逮捕直後に報道されれば、その後に報道されることは少ないです。もっとも、一度でも報道されるとネット上で拡散され、デジタルタゥ-として残り続けるので、今後の社会復帰に重大な支障が生じます。家族にも影響が及ぶこともあります。

 

 

【報道されない場合】

業務上横領が刑事事件になっても、逮捕されなければ実名報道されることはありません。逮捕されていなければ起訴された時点でも実名報道されることはないでしょう。

 

 

横領した人の末路-仮差押えされる

業務上横領が発覚すると、不動産や銀行預金が仮差押えされることが多いです。

 

 

民事裁判を起こすと判決までに数か月はかかります。1年以上かかることも少なくありません。その間に債務者が財産を処分したり隠してしまうと、債権者が裁判に勝っても賠償金を回収できなくなります。

 

 

このような事態にならないよう、債権者が民事裁判を起こす前に、裁判所を通じて債務者の資産を保全するのが仮差押えです。

 

 

不動産が仮差押えされても売却することはできますが、差押えされる可能性が高い不動産を購入する人はいないでしょう。銀行預金が仮差押えされると預金を引き出すことができなくなります。

業務上横領と仮差押え

 

 

資産が仮差押えされると、示談金を準備できなくなったり、日々の生活にも支障が生じることがあります。

 

 

【仮差押えされたら】

不動産が仮差押えされても、会社と交渉して、不動産の売却代金から仲介手数料などの諸経費を控除した金額を会社に弁済することを条件として仮差押えを取り下げてもらえることがあります。このようなスキームによって、仮差押えされた不動産であっても任意売却し被害弁償にあてることが可能になります。

 

預金債権についても、会社と交渉して仮差押えを取り下げてもらった上で全額を引き出して、被害弁償にあてることが考えられます。

 

 

横領した人の末路-刑事裁判を起こされる

業務上横領で逮捕された場合、逮捕されてから48時間以内に検察官に送致されます。

逮捕後に東京地検・東京地裁に連行されるときの流れ

 

 

逮捕されずに在宅事件として捜査される場合は、最初の取調べから検察官に送致されるまで短くても数か月、長い場合は1年以上かかることもあります。

 

 

いずれにせよ送致されたら、検察官が起訴するか不起訴にするかを決めることになります。会社と示談が成立しており、示談書に「許す」とか「刑事処罰を求めない」といった宥恕文言(ゆうじょもんごん)が記載されていれば、不起訴になる可能性が高いです。

不起訴処分とは?

 

 

宥恕文言付きの示談が成立していなければ、起訴される可能性が高いです。業務上横領罪で起訴されれば、非公開の簡易な略式裁判で審理されることはなく、公開の法廷で審理され、検察官から懲役刑を請求されることになります。

 

 

起訴されれば、無罪とならない限り懲役刑が言い渡されるので、前科がつくことになります。

前科のデメリットについて弁護士が解説

 

 

【必ず実刑になるわけではない】

業務上横領で起訴された場合、十分な被害弁償を行っていれば、執行猶予がつく可能性が高くなります。執行猶予がつけば直ちに刑務所に収容されることはありません。猶予期間内に新たに罪を犯さない限り、懲役刑に服することはありません。

業務上横領を認めている場合、起訴されれば執行猶予を目指して活動することになります。

 

 

横領した人の末路-民事裁判を起こされる

業務上横領が発覚すると、民事裁判を起こされることがあります。数百万円以上のお金を横領すれば民事裁判を起こされる可能性が高いです。

 

 

民事裁判になると、「調査費用」や「第三者委員会の開催費用」として、横領した金額に加えて、数百万円~1億円以上の金額を請求されることもあります。

 

 

また、会社側の弁護士費用も請求されます。実務では、裁判で認められた金額の1割が原告(会社)の弁護士費用として上乗せされます。

 

 

さらに、裁判で認容された金額につき、横領した時点から支払いまで年3%の遅延損害金が付加されます。*2020年3月31日以前に発生した横領については年5%の遅延損害金が付加されます。

 

 

民事裁判になると裁判が終了するまで少なくとも半年~1年はかかります。また、判決は一括払いを命じるものしかありません。支払ができなければ財産が差し押さえられます。給与が差し押さえられることもあります。

*給与差押えは手取り給与額の4分の1までとされています。

 

 

【裁判上の和解になることも】

民事裁判になれば必ず判決までいくわけではありません。民事裁判になった事件の多くが裁判上の和解で終了しています。和解であれば分割払いを受け入れてもらえる可能性が高くなります。

 

 

横領した人の末路-離婚を迫られる

会社が業務上横領で被害届や告訴状を出すと、刑事事件として立件され、逮捕されることがあります。

 

 

逮捕されない場合は、警察で取調べを受けた後に配偶者に連絡が入り、身元引受人として署まで迎えに来てもらいます。そのため、業務上横領が事件化すると配偶者に発覚する可能性が高いです。

 

 

事件化しなかったとしても、懲戒解雇される可能性が高いので、いずれにせよ配偶者に横領について言わざるを得なくなるでしょう。

 

 

業務上横領の事実を知った配偶者の中には、返済に向けて協力してくれる方もいますが、離婚を希望する方もいます。事件化した場合は、逮捕されて報道される可能性も十分にあるため、子どもへの影響を考え離婚を望む方が多いです。

 

 

業務上横領で懲戒解雇された事実は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたる可能性が高いため、離婚を切り出された場合に調停や裁判で争うことは難しいでしょう。

 

 

離婚を余儀なくされると、会社への返済と共に、配偶者への財産分与や子への養育費も問題となります。離婚に際し財産分与の名目で資産のほとんどを配偶者に移転した場合は、後日、会社から詐害行為取消権(民法424条)を行使されることがあります。

 

 

【離婚にならないことも】

事件化しない場合は逮捕・報道されることはありませんし、分割払いで示談がまとまることが多いので、離婚に至らないケースも多々あります。

 

 

横領した人の末路-刑務所に収容される

業務上横領で起訴されると刑事裁判が始まります。300万円以上のお金を横領した場合、被害弁償を一切しなければ実刑となり刑務所行きになる可能性が高くなります。

 

 

5000万円以上のお金を横領した場合は、5年以上の懲役刑になる可能性が高いです。

 

 

業務上横領をしてしまった方は、前科・前歴がない初犯の方が多いです。普通に大学を卒業して会社では責任のあるポジションについていた方が多いので、刑務所でこれまで接したことがない人達に囲まれ、茫然とすることが多いです。

 

 

【仮釈放について】

業務上横領で収監された人は、刑務所の中ではかなり優秀な層になりますので、エリートとされ受刑者の本等を管理する図書係に任命され、多めの仮釈放がもらえることもあります。

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