再逮捕とは?再逮捕されると罪が重くなる?執行猶予への影響も解説

再逮捕とは?再逮捕されると罪が重くなる?執行猶予への影響も解説

 

ニュースで「再逮捕」という言葉を耳にした方もいらっしゃると思います。このページでは、刑事事件に詳しいウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎が、逮捕された方やそのご家族のために、再逮捕について知っておいた方がよいことをわかりやすく解説しています。ぜひ参考にしてみてください!

 

 

 

再逮捕とは?

再逮捕とは?

 

再逮捕には次の2つのケースがあります。

 

 

①同じ事件で再逮捕するケース

②別の事件で再逮捕するケース

 

 

同じ事件で何度も再逮捕できるのであれば、法律が逮捕や勾留の期間を厳しく定めた意味がなくなってしまいます。そのため、同じ事件で再逮捕することは原則としてできません(一罪一逮捕一勾留の原則)。

 

 

これに対して、別の事件で再逮捕することは認められています。この場合の再逮捕は、最初に被疑者を逮捕した事件について不起訴処分となるか判決が出るまでの間に、別の事件の容疑で逮捕するという意味です。

 

 

ニュースで報道される再逮捕も別の事件で再逮捕されたケースになります。このページでも別の事件での再逮捕について解説しています。

 

 

再逮捕と追起訴の違いは?

再逮捕と追起訴の違い

 

追起訴とは余罪を刑事裁判にかけることです。

追起訴とは?裁判の流れや執行猶予の可能性について解説

 

 

再逮捕も追起訴も余罪について問題になるという点では同じですが、問題となる局面が異なります。再逮捕の方が常に追起訴よりも先行します。

 

 

再逮捕されれば必ず追起訴されるわけではありません。再逮捕された後に不起訴になることもあります。逆に再逮捕されずに追起訴されることもあります。

 

 

この点については逮捕と起訴の関係と同じです。逮捕されて起訴される被疑者もいれば不起訴になる被疑者もいます。逮捕されずに在宅起訴される被疑者もいます。このように(再)逮捕と(追)起訴は完全に連動しているわけではないことにご注意ください。

 

 

なぜ再逮捕するのか?

なぜ再逮捕するのか?

 

再逮捕する理由は、捜査をする時間を確保するためです。刑事訴訟法という法律で、逮捕は最長3日、起訴前の勾留は最長20日と定められています。検察官は最長20日の勾留期間内に被疑者を起訴するか釈放するかを決めなければなりません。

逮捕後の流れを図でわかりやすく解説!

 

 

1人の被疑者が複数の刑事事件に関わっている場合、複数の事件でまとめて逮捕・勾留すると、検察官の手持ち時間は全部で20日しかなく、事件によっては十分な捜査を尽くせないことがあります。

 

 

事件ごとに個別に逮捕すれば検察官の手持ち時間は<20日×事件数>となり、捜査する時間を確保することができます。事件が複数ある場合、逮捕の可否は事件ごとに判断されます。裁判官に別件についての逮捕状を請求して許可されれば再逮捕が可能になります。

 

 

再逮捕は何回できる?

再逮捕は何回できる?

 

1.再逮捕の回数には限界がある

同一の事件で再逮捕することは許されませんが、別の事件については逮捕状が発付されれば再逮捕することができます。

 

 

余罪が100件ある場合、100件全てについて逮捕状が発付されれば100回再逮捕できることになります。もっとも、実務ではそこまで何度も再逮捕することはありません。

 

 

2.限界がある理由

警察は限られた人員で日々発生する刑事事件の捜査をしなければなりません。被疑者が関与した刑事事件を洗いざらい調べて全て再逮捕していると、他の被疑者の事件まで手が回らなくなってしまいます。

 

 

そのため、被疑者が多数の事件に関与していても、ある程度のところで捜査を打ち切ることが多いです。

 

 

3.再逮捕の目安は5回

実務では、再逮捕の回数が5回を超えることはほとんどありません。ウェルネスの弁護士は2000件以上の刑事事件を取り扱ってきましたが、再逮捕が5回を超えたことはほとんどありませんでした。

 

 

再逮捕されたらニュースで報道される?

再逮捕されたらニュースで報道される?

 

刑事事件が最も報道されやすいタイミングは、最初に逮捕された直後です。このタイミングで報道されなければ、再逮捕された後にいきなりニュースになる可能性は低いです。

 

 

それでは最初に逮捕された直後にニュース報道された場合はどうでしょうか?

 

 

業務上横領のように被害者が同一の事件で再逮捕された場合は、再逮捕のタイミングで改めて報道される可能性は低いです。

 

 

被害者を異にする事件で再逮捕された場合でも、特殊詐欺のような財産犯については、再逮捕のタイミングで報道される可能性は低いです。

 

 

これに対して、不同意性交等のような性犯罪で再逮捕された場合は、再逮捕のタイミングで改めて報道される可能性が十分にあります。

 

 

再逮捕されたら罪が重くなる?執行猶予は厳しい?

再逮捕されたら罪が重くなる?執行猶予は厳しい?

 

1.再逮捕された事件で不起訴になった場合

起訴・不起訴は事件ごとに判断されます。再逮捕されたからといって必ず起訴されるわけではありません。

 

 

最初に逮捕された事件で起訴されたとしても、再逮捕された事件で不起訴になれば、その事件は刑事裁判で審理されないので、執行猶予の可能性にはそれほど影響がありません。

 

 

例えば、Bを被害者とする性犯罪で再逮捕された場合、Bとの間で示談が成立して不起訴になれば、Aを被害者とする性犯罪で起訴されていたとしても、執行猶予の可能性はそれほど下がりません。

不起訴とは?無罪との違いや不起訴になるための方法を解説

 

 

2.再逮捕された事件でも起訴された場合

最初に逮捕された事件で起訴された後に、再逮捕された事件で追起訴されれば、審理の対象になる事件が増えますので、無罪にならない限り罪が重くなるのは避けられません。そのため執行猶予の可能性は低くなります。

 

 

ただ、追起訴されれば必ず実刑になるわけではありません。例えば、初犯の方が覚醒剤の所持罪で起訴された後に覚醒剤の使用罪で再逮捕⇒追起訴されても、実刑になる可能性は低いです。

 

 

これに対して、被害額が100万円の特殊詐欺で起訴された後に、被害額が500万円の特殊詐欺で再逮捕⇒追起訴された場合は、実刑になる可能性が高くなります。詳しくは刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

 

 

再逮捕されやすいタイミングは?

再逮捕されやすいタイミングは?

 

再逮捕されやすいタイミングは次の3つです。

 

①前に逮捕された事件で処分保留釈放になった当日

②前に逮捕された事件で起訴された当日かその後数日以内

③前に起訴された事件の公判から数日以内

 

 

①について

処分保留とは起訴・不起訴の処分を決めずに釈放することです。検察官は最長20日の勾留期間内に被疑者を起訴するか釈放しなければなりません。

 

 

そのため、20日以内に起訴するだけの証拠を集められない場合は処分を決めずに釈放することがあります。これが処分保留釈放です。釈放すれば期間制限はなくなりますので、捜査を継続することができます。

処分保留釈放とは?タイミングや起訴・不起訴との関係について

 

 

もっとも、被疑者を本当に釈放してしまうと、逃亡したり証拠を隠滅するおそれがあります。そこで処分保留で釈放した直後に再逮捕することにより、引き続き身柄を拘束するのです。

 

 

②と③について

逮捕してから起訴するまでの期間は最長で約3週間です。この間、警察や検察が起訴に向けて捜査をしていきます。

 

 

もし公判まで3週間を切った時点で再逮捕すると、捜査期間の途中で公判が開かれることになり、被疑者の取調べをスムーズに行えなくなります。

 

 

起訴されてから公判までの期間は約1か月~1か月半です。公判と公判の間の期間は約1か月です。そのため、捜査と公判がバッティングしないようにするためには、②起訴の当日またはその後数日以内か、③各公判から数日以内に再逮捕するしかないということになります。

 

 

再逮捕された後の流れは?

再逮捕された後の流れ

 

1.起訴前

再逮捕後の流れは、最初に逮捕されたときと同じです。逮捕は最長3日、勾留は最長20日の期間制限があり、検察官は最長20日の勾留期間内に、再逮捕した事件で被疑者を起訴するか釈放するかを決めなければなりません。

逮捕後の流れを図でわかりやすく解説!

 

 

2.起訴後

最初に逮捕された事件で起訴され、その後、再逮捕された事件でも起訴された場合、最初の起訴を「本起訴」、2回目の起訴を「追起訴」と呼びます。3回目以降の起訴も追起訴と呼びます。

 

 

本起訴事件と追起訴事件は、同じ裁判所の同じ裁判官が審理します。これを「弁論の併合」といいます。もっとも、1回の公判で全ての事件を審理するわけではありません。

 

 

初公判では本起訴事件、第2回公判では1回目の追起訴事件、第3回公判では2回目の追起訴事件というように、各公判でそれぞれの事件の審理が行われるのが一般的です。

公判の流れ(追起訴あり)

 

 

判決についても、事件ごとに個別に言い渡されるのではなく、まとめて一つの判決が言い渡されます。刑罰については、複数の事件についてまとめて判決が下される場合、「併合罪」といって、法定刑の上限が1.5倍になり、その範囲で実際の刑罰を科されます。

 

 

【併合罪の具体例】

①1つの詐欺事件で1回だけ起訴されたケース

判決で下される刑の範囲…拘禁1月~拘禁10年(詐欺罪の法定刑)

 

 

②3つの詐欺事件で3回起訴されたケース

判決で下される刑の範囲…拘禁1月~拘禁15年

*併合罪の規定により刑の上限が10年×1.5倍=15年になります。

 

 

再逮捕と保釈

再逮捕と保釈

 

起訴されると保釈を請求することができます。保釈とは保釈金を裁判所へ納付することを条件として裁判が終了するまで釈放してもらうことです。

保釈を弁護士に依頼しよう!保釈の流れや保釈金、申請が通る確率は?

 

 

起訴された事件が1件だけであれば、起訴直後に保釈請求をするのが一般的ですが、再逮捕が予測されるケースについては注意が必要です。

 

 

保釈は人単位ではなく事件単位で許可されます。そのため、最初に逮捕・起訴された事件で保釈が認められたとしても、保釈後に再逮捕されれば、再び身柄拘束されることになります。裁判所に納めた保釈金も判決後まで戻ってきません。

 

 

再逮捕が予想される場合は、「これ以上再逮捕がない」ということを検察官に確認した後に保釈請求をすることになります。

再逮捕・追起訴と保釈

 

 

再逮捕されやすい4つの刑事事件

再逮捕されやすい4つの刑事事件

 

再逮捕されやすい刑事事件は次の4つです。

 

 

①特殊詐欺

②薬物犯罪

③業務上横領

④集団での不同意強制性交等

 

 

①特殊詐欺

特殊詐欺のケースでは、複数の被害者からお金をだまし取っていることが多いです。特殊詐欺は<多数の被害者に対する1つの詐欺事件>で立件されるわけではなく、<被害者1名ごとに1つの詐欺事件>として立件されます。

 

 

特殊詐欺のよくある再逮捕の流れは以下となります。

 

ア:最初に証拠がそろった被害者Aに対する事件(A事件)で逮捕・勾留される

イ:A事件で起訴される

ウ:イと同じタイミングで被害者Bに対する事件(B事件)で再逮捕される

エ:B事件で追起訴される

オ:エと同じタイミングで、被害者Cに対する事件(C事件)で再逮捕される

カ:C事件で追起訴される

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②薬物犯罪

薬物犯罪の再逮捕でよくあるのは、最初に覚醒剤の所持罪で逮捕され、その後に覚醒剤の使用罪で再逮捕されるケースです。

 

 

家宅捜索や職務質問で覚醒剤に見える白い粉末が発見されれば、捜査員によってその場で予試験が行われ、陽性反応が出れば覚醒剤の所持罪で現行犯逮捕されます。

 

 

覚醒剤の使用罪については、採取された被疑者の尿が科捜研に送られ、そこで鑑定されます。鑑定で陽性反応が出れば再逮捕されます。鑑定結果が出るまで通常、数日~2週間前後かかりますので、ある程度の期間をおいた後に再逮捕されることになります。

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大麻を栽培しつつ乾燥大麻を所持していた場合、乾燥大麻については、その場で予試験が行われ陽性反応が出れば現行犯逮捕されます。栽培中の大麻はその場で予試験をすることができないため、科捜研に回され鑑定されます。

 

 

そのため、大麻の所持罪で現行犯逮捕された後に大麻の栽培で再逮捕されることになります

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③業務上横領

業務上横領は、長期間にわたり何度も会社のお金を横領するという形で行われることが多いです。被疑者を逮捕すると最長23日以内に起訴するか釈放するかを決めなければなりません。

 

 

業務上横領で逮捕する場合、全ての横領をまとめて逮捕すると、捜査対象が多すぎて最長20日の勾留期間内に捜査を終えることができません。

 

 

そこで、多数の横領を時系列に沿っていくつかのグループに分けて、グループごとに逮捕することが多いです。逮捕される際、逮捕状に横領をしていた期間が書かれているので、それを見れば再逮捕されるかどうかがわかります。

 

 

自分のしていた横領の期間よりも、逮捕状に書かれている期間の方が短い場合は、再逮捕される可能性が高いです。

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④集団での不同意性交等

性犯罪で再逮捕されやすいのは、男性グループが合コン等と称して女性に大量の酒を飲ませたり、飲み物の中に睡眠薬を混ぜたりして、意識もうろうとなったところを、集団で強姦するケースです。

 

 

このようなケースでは、同一のグループが複数回にわたって、多数の女性に対して同じような行為をしていることが少なくありません。

 

 

そのうちどれか1件で逮捕され実名報道されると、ニュースを見た他の被害者からも被害届が出されて、再逮捕されることがあります。押収されたスマートフォン等から余罪の証拠が見つかり、再逮捕されることもあります。

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再逮捕を回避するための方法は?

再逮捕を回避するための方法

1.余罪捜査の対応がポイント

再逮捕をする理由は余罪捜査の時間を確保するためです。そのため、余罪捜査がスムーズに進めば再逮捕する理由がなくなります。

 

 

具体的に言うと、最初に逮捕された事件で起訴されるまでの間に、余罪についても取調べが行われ自白調書がとられていれば、再逮捕されない可能性が高くなります。自白調書が作成されている以上、あえて再逮捕をして時間をかせぐ必要がないからです。

 

 

そのため、余罪での再逮捕を防ぎたいのであれば、取調べで余罪について聞かれた際に否認や黙秘をしないで自白する必要があります。余罪で再逮捕されない場合は、追送致という形で捜査が進められます。

追送致とは?再逮捕と追送致をわけるポイント等を解説

 

 

2.デメリットもある

自白すれば再逮捕を回避できる可能性が高くなりますが、追起訴される可能性も高くなります。逆に余罪について否認や黙秘をすれば、再逮捕される可能性は高くなりますが、証拠の状況によっては嫌疑不十分で不起訴になる余地もあります。

 

 

どちらの方針で臨むかは弁護士に相談した上で決めてください。

 

再逮捕の相談は弁護士へ

再逮捕の相談は弁護士へ

 

事前に再逮捕される可能性があることを知らなければ、再逮捕された本人は大きなショックを受けてしまいます。状況を理解できず動揺した状態で取調べに臨み、不利な供述をしてしまうこともあります。

 

 

弁護士が適切に再逮捕の可能性や時期を予測し、再逮捕を回避するためのプランや再逮捕された場合のプランを立てて、本人や家族によく説明しておく必要があります。

弁護士が教える再逮捕されるかどうか知るための4つのてがかり

 

 

刑事事件に精通した弁護士でなければ、そのような対応は困難でしょう。特殊詐欺や業務上横領など再逮捕が予測される事件については、刑事事件に強い弁護士に依頼して、再逮捕を見すえた弁護プランを立ててもらいましょう。

 

 

ウェルネスの弁護士は、再逮捕された特殊詐欺、薬物犯罪、性犯罪のいずれのケースについても不起訴・執行猶予の獲得実績があります。

 

 

これらの事件で家族が逮捕された方は、お気軽にウェルネス(03-5577-3613)の弁護士にご相談ください。

 

 

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