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刑事事件を弁護士に依頼するタイミングは?11のケースに分けて解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。
刑事事件を弁護士に依頼するタイミング-逮捕された場合
1.逮捕後に弁護士に依頼するタイミング
家族が逮捕された場合は、可能な限り早いタイミングで弁護士に依頼すべきです。早期に弁護士に依頼することによって、次の3つの可能性が高まります。
①勾留を阻止する
②自白調書の作成を阻止する
③解雇を回避する
それぞれについて見ていきましょう。
①勾留を阻止する
被疑者の身柄拘束は逮捕⇒勾留というステップで進みます。逮捕は最長3日ですが、勾留は最長20日も続きますので、勾留されると解雇や退学のおそれがあります。
勾留は検察官の勾留請求⇒裁判官の勾留質問を経て決められます。逮捕されてから勾留が決まるまでの期間は最短1日、最長でも3日しかありません。
勾留阻止の可能性を高めるためには、この期間内に弁護士が本人と接見したり、検察官や裁判官に意見書を提出する必要があります。
②自白調書の作成を阻止する
逮捕容疑を否認している場合、弁護士が接見する前に、「私がやりました」という内容の自白調書をとられてしまうと、その後に争うのが難しくなります。
捜査員もそのことをわかっているので、逮捕直後で弁護士がまだ接見に来ないタイミングで、いっきにプレッシャーをかけて自白調書をとろうとしてきます。
そのため、逮捕されれば可能な限り早いタイミングで弁護士が接見に行き、安易に供述調書にサインしないようアドバイスします。
③解雇を回避する
逮捕されれば、本人がスマートフォンを使って職場に連絡することもできないので、無断欠勤になっているケースが多いです。
職場に怪しまれないように、弁護士が本人と接見し、どのように会社に報告すればよいのか打ち合わせます。
弁護士が職場に連絡するとかえって怪しまれるため、弁護士が本人と家族の間に入って、職場に対して家族にどのようなことを言ってもらうのかを調整することができます。
【関連ページ】逮捕後すぐに弁護士を呼ぶには?弁護士の呼び方やタイミングを解説
2.勾留後に弁護士に依頼するタイミング
「勾留された時点で弁護士がいない」というケースはほとんどありませんが、万一、弁護士がいなければ、可能な限り早いタイミングで弁護士に依頼すべきです。
経済的な事情で私選弁護人に依頼することが難しければ、国選弁護人を選任してください。
起訴前の勾留は最長20日です。被害者がいる刑事事件では、この期間内に示談をまとめることができれば、起訴されずに釈放される可能性が高くなります。
示談が成立する前であっても、準抗告という手段によって釈放へ持ち込めることもあります。
「国選弁護人がいるけれども動いてくれない」という場合は、可能な限り早いタイミングで国選弁護人から私選弁護人への切り替えをご検討ください。
3.釈放後に弁護士に依頼するタイミング
「逮捕されたけれども勾留されずに釈放された」というケースでは、既に釈放されている以上、1分1秒を争うというわけではありません。
ただ、被害者との示談を希望する場合は、検察官も示談が成立するまで長期間待ってくれるわけではありませんので、できるだけ早いタイミングで弁護士に依頼した方がよいでしょう。
刑事事件を弁護士に依頼するタイミング-逮捕されていない場合
1.検挙されていない場合に弁護士に依頼するタイミング
犯罪行為をしてしまい現場から逃げてしまった場合は、自首を検討することになります。殺人や放火といった重大犯罪を除き、警察に出頭して自首すれば、逮捕や報道の可能性は低くなります。
もっとも、被疑者として特定された後に出頭しても自首にはなりません。既に逮捕状が出ていて出頭後に逮捕されることもあります。
そのため、自首を検討しているのであれば、できるだけ早いタイミングで弁護士に依頼した方がよいでしょう。
2.警察への連行後に弁護士に依頼するタイミング
刑事事件を起こして検挙されれば、必ず逮捕されるわけではありません。任意捜査が原則ですので、逮捕されない事件の方がずっと多いです。
逮捕されなくても、刑事事件の被疑者になっている以上は、早めに弁護士に依頼した方がよいでしょう。もっとも、逮捕された場合のように1分1秒を争うというわけではありません。
あせって高額の弁護士費用を払って依頼することがないよう、弁護士費用についても十分にリサーチして、いくつかの法律事務所を比較した上で依頼するとよいでしょう。
なお、容疑を否認している場合は、後日逮捕されるリスクがあるため、なるべく早いタイミングで弁護士に相談した方がよいでしょう。
また、依存性のある刑事事件については、専門のクリニックへ通院し治療状況を証拠化しておいた方が処分が軽くなりやすいため、なるべく早いタイミングで弁護士に依頼するとよいでしょう。
【依存性のある刑事事件】
①性犯罪
③違法薬物
3.家宅捜索後に弁護士に依頼するタイミング
家宅捜索を受けたがその場で逮捕されなかった場合、家族らの身元引受があれば、今後も逮捕される可能性は低いため、弁護士への依頼のタイミングは上記2と同様にお考えください。
これに対して、家族らの身元引受がなければ、後日逮捕される可能性が十分にあるため、可能な限り早いタイミングで弁護士に依頼した方がよいです。
詳しくは以下のページをご覧ください。
⇒家宅捜索後に弁護士を選ぶタイミングや弁護士の種類について
4.「検察に送ります」と言われた後に弁護士に依頼するタイミング
警察の取調べを受けた後、警察官から「事件を検察に送ります」と言われた場合は、1週間から1か月前後で捜査資料が検察官に引き継がれる可能性が高いです(この引継ぎのことを「書類送検」といいます)。
書類送検されれば、起訴・不起訴の処分が決まるまでに残された時間は多くはないことから、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談した方がよいでしょう。
特に被害者との間で示談を成立させたい場合は、時間切れにならないよう、送検「前」のタイミングで示談交渉に入っておきたいところです。
5.検察官から連絡がきた後に弁護士に依頼するタイミング
書類送検されたら担当の検察官が決まります。検察官は被疑者を呼び出して取調べをしてから、起訴・不起訴の処分を決めることが多いです。
検察官は、取調べの日時を記載した呼出状を被疑者の自宅に送ることもあれば、被疑者に電話して日時を調整することもあります。
いずれにせよ検察官から連絡があれば、起訴・不起訴が決まるまでに残された時間は多くはないため、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談した方がよいでしょう。
なお、「事件について同居の家族にばれたくない」という方は、事前に弁護士が検察官とお話して自宅に呼出状を送らないように依頼する必要があるため、遅くとも前記4のタイミングで弁護士に依頼すべきです。
⇒刑事事件が家族に知られるタイミングと知られないようにする方法
6.検察官の取調べを受けた後に弁護士に依頼するタイミング
検察官の取調べを受けた場合は、既に捜査の最終段階に入っているため、可能な限り早いタイミングで弁護士に相談した方がよいでしょう。
検察官の取調べの内容に応じて場合分けして解説します。
①検察官から示談の話をされた場合
検察官から「示談は検討していませんか?」、「示談をしたいのであれば弁護士に相談して〇月〇日までに連絡してください。」等と言われることがあります。
この場合は弁護士に依頼して示談交渉に入れば、示談がまとまり不起訴になる可能性が高いです。検察官から指定された期限までに弁護士に依頼し、弁護士から検察官に連絡してもらうとよいでしょう。
②略式手続の同意書にサインした場合
略式手続の説明を受けて同意書にサインした場合、放置していれば近日中に略式起訴されます。取調べを受けた日から1日、2日で略式起訴されることもあります。
いったん略式起訴されれば、どんなに頑張っても不起訴を獲得することはできません。
そのため、一刻も早いタイミングで弁護士に相談した方がよいでしょう。できれば検察官の取調べを受けた当日、遅くとも翌日までには弁護士に相談しておきたいところです。
ただ、このタイミングで弁護士事務所に電話しても、「遅すぎる」、「すいませんが何もできません」等と言われて断られてしまうこともあります。
③起訴すると言われたが同意書へのサインを求められなかった場合
検察官に「起訴します」、「近日中に起訴状が届きます」と言われたものの、略式手続の説明がなく、同意書へのサインも求められなかった場合、公判請求される可能性が高いです。
公判請求されると正式裁判で審理され、検察官から懲役刑を請求される可能性が高いです。決して多くはありませんが、このタイミングで弁護士に依頼することにより、公判請求を回避できることもあります。
ウェルネスの弁護士もこのタイミングで依頼を受け公判請求を回避したことがあります。
公務員の場合は、公判請求されると失職する可能性が高いので、大至急弁護士に相談してください。
7.略式命令が届いた後に弁護士に依頼するタイミング
既に罰金または科料の処分が出ているため、不起訴を獲得することは不可能です。
弁護士事務所に電話して法律相談を予約しようとしても、「できることはありません」等と言われて断られることが多いです。
略式命令が自宅に届いてから2週間が経過していなければ、まだ確定しておらず、正式裁判を請求することにより、改めて審理してもらうことも可能です。
「否認していたにもかかわらず、不当な取調べで強引に自白調書をとられてしまった」-このようなケースであれば、弁護士に依頼して正式裁判で主張を尽くし、無罪を獲得できる可能性もあります。
略式命令を受けとってから2週間が経過すれば確定するため、その前に弁護士に依頼をすべきです。
ただ、確定直前に弁護士に相談しようとしても「対応できません」と言われることが多くなるため、可能な限り早いタイミングで弁護士に相談しましょう。
8.起訴状が届いた後に弁護士に依頼するタイミング
起訴状が自宅に届いた場合は、公開法廷において正式裁判で審理されることになります。
裁判では検察官から懲役刑を請求される可能性が高いです。検察官が罰金相当と考えた場合は、略式起訴しているはずだからです。
刑の上限が懲役3年以下の場合は、弁護士がいないと開廷できない必要的弁護事件ではないため、弁護士をつけなくても裁判を受けることは可能です。
もっとも、弁護士なしで裁判に臨むと、検察官の主張に対して効果的に反論できなかったり、自己の言い分を十分に尽くせないおそれがあるため、弁護士に依頼した方がよいでしょう。
起訴された時点で弁護士が選任されていなければ、裁判所から起訴状と一緒に弁護士の選任についての質問用紙が送られてきます。質問用紙には回答期限が定められています。
その回答期限までに弁護士に依頼して、弁護士から裁判所に連絡してもらうとよいでしょう。
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