痴漢で後日逮捕されるケースは?後日逮捕の流れや回避する方法を解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

 

痴漢の後日逮捕とは?

痴漢はその場で被害者や目撃者に取り押さえられ、現行犯逮捕されることが多い犯罪です。もっとも、現行犯逮捕されなかったからといって安心することはできません。後日逮捕されることもあるためです。

 

 

現行犯逮捕と異なり、後日逮捕する場合は裁判官の発付する令状(逮捕状)が必要になります。

 

 

後日逮捕する場合、まず捜査員が裁判官に逮捕状を請求します。逮捕状が出れば、捜査員が被疑者を逮捕しに行きます。通常は平日の朝に被疑者の自宅に行き身柄をおさえることが多いです。

 

 

痴漢で後日逮捕されるケース

次の3つの事情を全て満たした場合、痴漢で後日逮捕される可能性が高くなります。

 

 

①被害者が警察に申告した

②犯人として特定された

③警察に逮捕の要件を満たすと判断された

 

 

それぞれの事情について見ていきましょう。

 

 

痴漢の後日逮捕につながる事情①-被害者が警察に申告した

痴漢の被害者が犯人をとり逃がした場合、その時点であきらめてしまい、警察に被害を申告しないことがあります。

 

 

被害申告がなければ、警察が独自に捜査することはありませんので、後日逮捕されることもありません。被害者があきらめずに警察に被害申告をした場合、警察が痴漢の捜査を開始します。

 

 

痴漢の後日逮捕につながる事情②-犯人として特定された

警察が捜査をした結果、犯人として特定されれば後日逮捕されることがあります。痴漢の犯人特定につながる証拠として、防犯カメラ、交通系ICカード、DNA情報が挙げられます。

 

 

1.防犯カメラ

ほとんどの駅には防犯カメラが設置されています。最近では電車内にも防犯カメラが設置されるようになってきました。防犯カメラによって痴漢をしている状況や前後の足取りがわかれば、他の証拠と組み合わせることによって犯人を特定することが可能になります。

 

 

2.交通系ICカード

最近ではほとんどの人が交通系ICカードを使って電車に乗っています。

 

 

記名式の交通系ICカードには氏名や電話番号等の個人情報が紐づいているため、痴漢の犯人がICカードを使っている状況が防犯カメラに写っていれば、鉄道会社に照会することによって、ICカードに紐づいた犯人の個人情報を特定することが可能になります。

 

 

3.DNA情報

被害者のスカート等に付着した犯人の皮膚片からDNAが検出される場合があります。前科・前歴のある方は警察庁のデータベースに自身のDNA情報が保管されています。そのDNA情報と被害者の衣類から抽出されたDNA情報が一致すれば、犯人として特定されます。

 

 

前科・前歴のない方についても、捜査員が被疑者の尾行捜査をしてタバコの吸い殻などを押収し鑑定に回すことにより、DNA情報が取得されることがあります。

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痴漢の後日逮捕につながる事情③-逮捕の要件を満たすと判断された

逮捕の主な要件は、逃亡のおそれと証拠隠滅のおそれです。それぞれの要件についてみていきましょう。

 

 

1.逃亡のおそれ

痴漢をして逃げた場合は、逃亡のおそれがあると判断されやすくなります。痴漢は都道府県の迷惑防止条例違反になりますが、下着の中に手を入れて胸やでん部、股間を触るとより重い不同意わいせつ罪成立します。

 

 

迷惑防止条例違反

6か月以下の懲役または50万円以下の罰金

不同意わいせつ罪

懲役6か月~10年

 

 

そのため不同意わいせつ罪で立件された場合は、「重い刑罰をおそれて逃げるのでは?」と判断されやすくなります。

 

 

前科・前歴がある方は、初犯の方に比べて処分が重くなりやすいため、重い処分をおそれて逃亡するのではと考えられやすくなります。

 

 

2.証拠隠滅のおそれ

被疑者が事件後も同じ駅から同じ時間帯の電車に乗り続けている場合は、被害者と再び接触して口止め(=証拠隠滅)を図るのではと警戒されてしまいます。

 

 

また、同じ被害者に対して複数回痴漢をしている場合は、被害者に対して執着が認められるため、より一層口裏あわせを警戒されます。

 

痴漢で後日逮捕されるまでの流れ

電車内で痴漢をして後日逮捕されるまでの流れは次の通りです。

*ウェルネスの弁護士が後日逮捕された事件の被害者から直接教えてもらった情報を参考にしています。

 

 

①痴漢発生→被害者が犯人の腕をつかむ→犯人がふりきって逃走

②被害者が警察に被害を申告する

③捜査員が防犯カメラを解析したり、鉄道会社に交通系ICカードの所有者を照会することにより被疑者を犯人として特定する

④捜査員が被疑者を尾行し、ばれないように写真撮影する

⑤捜査員が被害者に被疑者を含む何人かの写真をみせて、「この人に触られました」と特定できるか確認→特定できた

⑥被疑者の逮捕状を請求→逮捕状が出る

⑦捜査員が被害者と一緒に被疑者を待ち伏せ→被害者が被疑者を見て「この人が犯人で間違いありません。」と言えれば、その場で被疑者を通常逮捕

 

痴漢で後日逮捕された後の流れ

痴漢で後日逮捕された後の流れは現行犯逮捕されたときと同様です。

 

 

後日逮捕されたら、翌日または翌々日に検察庁に連行され検察官の取調べを受けます。検察官が逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが大きいと判断すれば、裁判官に勾留を請求します。そのようなおそれが小さいと判断すれば勾留請求しないで被疑者を釈放します。

 

 

被疑者が勾留請求されると当日または翌日に裁判所に連行され、裁判官の勾留質問を受けます。裁判官も逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが大きいと判断すると、検察官の勾留請求を許可します。その結果、被疑者は勾留されます。

 

 

裁判官が逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが小さいと判断すると、検察官の勾留請求を却下します。その結果、被疑者は釈放されます。

 

 

被疑者が勾留されると原則10日、勾留が延長されると最長20日にわたって拘束されます。その間に検察官は被疑者を釈放するか起訴しなければなりません。

逮捕後の流れや釈放のタイミングについてわかりやすく解説

 

 

痴漢で後日逮捕された場合、早期に刑事事件に強い弁護士に依頼すれば、ほとんどのケースで勾留を阻止することができます。

逮捕されたらすぐに弁護士を呼ぼう!弁護士費用や呼び方を解説

 

 

痴漢で後日逮捕されるタイミング

痴漢で後日逮捕されるタイミングは3か月後から6か月後のことが多いです。

 

 

痴漢は決して重大犯罪とまではいえませんので、警察としても最優先で重点的に捜査するわけではなく、他の事件と同時並行で捜査しているので、結果的に3か月~6か月程度かかってしまいます。

 

 

たまたま手掛けている事件が少なかったり、地方の警察署でもともと事件が少ない場合は1か月以内に後日逮捕されることもあります。

 

 

痴漢(迷惑防止条例違反)の時効は3年ですが、1年以上経過してから後日逮捕されることはまずありません。

 

 

痴漢の後日逮捕と報道

痴漢で後日逮捕されると報道される可能性があります。痴漢のような刑事事件に関する報道は、警察が事件や被疑者についての情報をマスコミに流したことがきっかけになります。

 

 

現行犯逮捕のケースでも報道される可能性はありますが、警察としても事前に予想していなかった事件であり、48時間以内の送致に向けて急ピッチで捜査資料を整えなければならないので、マスコミへの情報提供まで手が回らないケースが多いです。

 

 

これに対して、後日逮捕するケースでは、逮捕するまでに警察が入念に準備を進めており、時間的な余裕もあるため、マスコミに情報提供され報道されることも少なくありません。

 

 

痴漢で後日逮捕を防ぐ方法

痴漢で後日逮捕を防ぐためには、警察に自首することが考えられます。自首とは、犯罪と犯人の両方が捜査機関に発覚する前に、自発的に捜査機関に出頭して犯行を自供することです。

 

 

自首という形で自ら警察署に出頭している以上、逃亡のおそれは低いといえますし、弁護士を立てて被害者と示談交渉をするのであれば、被害者に接触するおそれ(=証拠隠滅のおそれ)が低いと判断されやすくなるため、後日逮捕の可能性は下がります。

 

 

一般の方の場合は、逮捕されなければ報道されることもありませんので、自首することにより報道回避も見込めることになります。

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