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痴漢の後日逮捕とは?現行犯以外でも逮捕される?弁護士が解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
目次
痴漢は現行犯逮捕しかない?後日逮捕はある?
現行犯とは「現に犯罪を行っている者」と「今まさに犯罪を行い終わった者」をいいます。現行犯は、犯人と犯罪が明白なため、逮捕状なしで逮捕することができ、私人でも逮捕することができます(私人逮捕)。
【刑事訴訟法】
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痴漢をした場合、その場で被害者や目撃者に取り押さえられ、現行犯逮捕されることが多いです。ただ、なかには被害者や目撃者を振り切ってその場から逃げる人もいます。
ネット上では「痴漢は現行犯以外では逮捕されない」等と言われていますが、それは事実ではありません。その場から逃げた場合でも、後日、逮捕状をもった捜査員に逮捕されることがあります。
これが後日逮捕です。法律上は「通常逮捕」といいます。現行犯逮捕と異なり、後日逮捕する場合は裁判官の発付する令状(逮捕状)が必要になります。
痴漢で後日逮捕されるケースは?
後日逮捕するためには、司法警察員が逮捕状を請求し、裁判官によって逮捕状が発付される必要があります。後日逮捕の要件は以下の2つです。
①被疑者が犯人であるといえる相当な理由があること
②逃亡のおそれまたは証拠隠滅のおそれがあること
これらの要件を満たすと判断された場合、<逮捕状の請求⇒発付⇒後日逮捕>となる可能性が高くなります。防犯カメラ等によって犯人として特定された時点で①の要件が満たされます。
②の要件については、被害者等に取り押さえられそうになり逃げた場合は、現に逃げている以上、逃亡のおそれがあると判断される可能性が十分にあります。
痴漢の加害者は被害者の個人情報まで把握していないと思われますので、被害者に接触して自己に有利な供述をするよう迫るおそれ(=証拠隠滅のおそれ)は小さいと考えられます。
もっとも、同じ被害者に対して何度も痴漢しているケースでは、被害者に対する執着が認められますので、再び接触するおそれがあると判断される場合もあります。
痴漢の後日逮捕-防犯カメラで特定される?他の証拠は?
痴漢の犯人特定につながる証拠として、防犯カメラ、交通系ICカード、DNA情報が挙げられます。
1.防犯カメラによる特定
ほとんどの駅には防犯カメラが設置されています。最近では電車内にも防犯カメラが設置されるようになってきました。
防犯カメラのデータの保存期間は1,2週間しかありませんので、警察が被害申告を受けた場合、まずは防犯カメラ映像を確認し、証拠として保全します。防犯カメラによって痴漢をしている状況や犯人の前後の足取りがわかれば、特定される可能性が高くなります。
2.交通系ICカードによる特定
最近ではほとんどの人が交通系ICカードを使って電車に乗っています。
記名式の交通系ICカードには氏名や電話番号等の個人情報が紐づいているため、痴漢の犯人が交通系ICカードを使っている状況が防犯カメラに写っていれば、鉄道会社に照会することによって、カードに紐づいた犯人の個人情報を特定することが可能になります。
3.DNAによる特定
被害者のスカート等に付着した犯人の皮膚片からDNAが検出される場合があります。前科・前歴のある方は警察庁のデータベースにDNA情報が保管されています。そのDNA情報と被害者の衣類から抽出されたDNA情報が一致すれば、犯人として特定されます。
前科・前歴のない方についても、捜査員が被疑者の尾行捜査をしてタバコの吸い殻などを押収し鑑定に回すことにより、DNA情報を取得されることがあります。
痴漢の後日逮捕-痴漢をすれば何罪になる?
痴漢をした場合は、都道府県の迷惑防止条例違反・不同意わいせつ罪・不同意性交等罪のいずれかになります。以下、個別にみていきます。
1.迷惑防止条例違反になるケース
服の上からでん部や太ももを触った場合は迷惑防止条例違反になります。罰則は、多くの自治体で6か月以下の懲役または50万円以下の罰金です。常習者の場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科されることが多いです。
2.不同意わいせつ罪になるケース
下着の中に手を入れてでん部や陰部を直接触ると不同意わいせつ罪になります。罰則は懲役6か月から10年です。罰金刑がありませんので、起訴されれば公開の法廷で審理され、検察官から懲役刑を請求されます。
3.不同意性交等罪になるケース
下着の中に手を入れただけではなく、陰部の中に手指を入れると不同意性交等罪になります。不同意性交等罪の罰則は懲役5年~20年です。不同意性交等罪は性犯罪の中で最も重い犯罪であり、初犯でも実刑になることが少なくありません。
不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立するケースでは、「被疑者が重い処罰をおそれて逃げるおそれが大きい。」と判断されやすくなります。
痴漢で後日逮捕されるまでの流れ
電車内で痴漢をして後日逮捕されるまでの流れは次の通りです。
*ウェルネスの弁護士が後日逮捕された事件の被害者から直接教えてもらった情報を参考にしています。
①痴漢発生→被害者が犯人の腕をつかむ→犯人がふりきって逃走
②被害者が警察に被害を申告する
③捜査員が防犯カメラを解析したり、鉄道会社に交通系ICカードの所有者情報を照会することにより被疑者を犯人として特定する
④捜査員が被疑者を尾行し、ばれないように写真撮影する
⑤捜査員が被害者に被疑者を含む何人かの写真をみせて、「この人に触られました」と特定できるか確認→特定できた
⑥被疑者の逮捕状を請求→逮捕状が出る
⑦捜査員が被害者と一緒に被疑者を待ち伏せ→被害者が被疑者を見て「この人が犯人で間違いありません。」と言えれば、その場で被疑者を通常逮捕
痴漢で後日逮捕された後の流れ
1.検察官の処分
痴漢で後日逮捕された後の流れは現行犯逮捕されたときと同じです。後日逮捕されたら、翌日または翌々日に検察庁に連行され検察官の取調べを受けます。
検察官が逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが大きいと判断すれば、裁判官に勾留を請求します。そのようなおそれが小さいと判断すれば勾留請求しないで被疑者を釈放します。
⇒【逮捕】勾留されなかったときの釈放の流れ-何時にどこに迎えに行く?
釈放されれば在宅事件として捜査が進められます。
⇒在宅事件の流れは?逮捕される身柄事件との違いや起訴・不起訴について
2.裁判官の処分
被疑者が勾留請求されると当日または翌日に裁判所に連行され、裁判官の勾留質問を受けます。裁判官も逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが大きいと判断すると、検察官の勾留請求を許可します。その結果、被疑者は勾留されます。
裁判官が逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが小さいと判断すると、検察官の勾留請求を却下します。その結果、被疑者は釈放されます。
釈放されれば在宅事件として捜査が進められます。
⇒在宅事件の流れは?逮捕される身柄事件との違いや起訴・不起訴について
3.勾留後
被疑者が勾留されると原則10日、勾留が延長されると最長20日にわたって拘束されます。検察官は最長20日の勾留期間内に被疑者を釈放するか起訴しなければなりません。
起訴には簡易な裁判での審理を求める略式起訴と公開法廷での審理を求める正式起訴があります。迷惑防止条例違反が成立する場合、示談が成立していなければ、略式起訴され罰金になることが多いです。
不同意わいせつや不同意性交等が成立する場合、示談が成立していなければ、正式起訴される可能性が高くなります。
痴漢で後日逮捕された場合、早期に刑事事件に強い弁護士に依頼すれば、ほとんどのケースで勾留を阻止することができます。
⇒逮捕されたらすぐに弁護士を呼ぼう!弁護士費用や呼び方を解説
痴漢で後日逮捕されるタイミングは?
1週間後に後日逮捕される?
痴漢をしてから1週間後に後日逮捕される可能性は低いです。警察としても、犯人特定のための捜査や被害者・目撃者の事情聴取、現場検証など多岐にわたる捜査をしますので、1週間で<逮捕状請求⇒発付⇒逮捕>まで進むケースは少ないです。
1ヶ月後に後日逮捕される?
痴漢をしてから1ヶ月程度で後日逮捕されることもありますが、それほど多くはありません。被害者が捜査に協力的でスムーズに進めば1ヶ月程度で逮捕されることもあるでしょう。
たまたま手掛けている事件が少なかったり、地方の警察署でもともと事件が少ない場合は1ヶ月程度で後日逮捕されることもあります。
3ヶ月後に後日逮捕される?
痴漢で後日逮捕される場合、3ヶ月後あたりになることが多いです。「意外に時間がかかるな」と思われるかもしれませんが、警察も他の多くの事件と同時並行で捜査しているので、結果的に3か月程度かかかることが多いのです。
6ヶ月後に後日逮捕される?
痴漢で後日逮捕される場合、6ヶ月前後かかることも少なくありません。そのため6か月たったからといってまだ安心はできません。
1年後に後日逮捕される?
痴漢で1年たってから逮捕されるケースは少ないです。そのため、逮捕が絶対にないとまでは言いきれませんが、1年たてばまず後日逮捕はないと言えるでしょう。
被害者の陰部などから犯人と思われる人物のDNAが採取されていた場合、同じ人物が後日何らかの犯罪を犯してDNAを採取された場合、痴漢の犯人として特定され逮捕されることがあります。この場合は1年以上たってから後日逮捕されることもあります。
痴漢の後日逮捕と任意の出頭要請
痴漢で後日逮捕されることはそれほど多くはありません。まずは警察から連絡が入り出頭を求められることが多いです。
出頭するか否かは任意ですが、この時点で出頭を拒否したり無視していると、逃亡や証拠隠滅のおそれが推認され、後日逮捕される可能性が高くなります。出頭しても、取調べで否認や黙秘をすると後日逮捕される可能性が高くなります。
痴漢の容疑を認めれば、逮捕されずに在宅事件として進められる可能性が高くなりますが、その場合、警察から家族に連絡が入り、身元引受人として署まで迎えにきてもらうことが多いです。
あらかじめ弁護士に依頼していれば、弁護士が家族に代わって身元引受人になれることも多々ありますのでご相談ください。
⇒刑事事件の身元引受人とは?必要なケースやデメリット、弁護士費用
痴漢の後日逮捕と報道
痴漢で後日逮捕されると現行犯逮捕に比べて報道されやすくなります。。痴漢のような刑事事件に関する報道は、警察が事件や被疑者についての情報をマスコミに流したことがきっかけになります。
現行犯逮捕のケースでも報道される可能性はありますが、警察としても事前に予想していなかった事件であり、48時間以内の送致に向けて急ピッチで捜査資料を整えなければならないので、マスコミへの情報提供まで手が回らないケースが多いです。
これに対して、後日逮捕するケースでは、逮捕するまでに警察が入念に準備を進めており、時間的な余裕もあるため、マスコミに情報提供され報道されることも少なくありません。
痴漢で後日逮捕を回避する方法-自首
警察に自首することによって後日逮捕を回避できる可能性が高まります。自首とは、犯罪と犯人の両方が捜査機関に発覚する前に、自発的に捜査機関に出頭して犯行を自供することです。
自首という形で自ら警察署に出頭している以上、逃亡のおそれは低いといえますし、弁護士を立てて被害者と示談交渉をするのであれば、被害者に接触するおそれ(=証拠隠滅のおそれ)が低いと判断されやすくなるため、後日逮捕の可能性は下がります。
一般の方の場合は、逮捕されなければ報道されることもありませんので、自首することにより報道回避も見込めることになります。
痴漢の自首に強い弁護士が解説!