勾留取消請求とは?保釈金なしで起訴前からできる釈放請求
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
勾留取消請求とは?
☑ 保釈請求したいが保釈金を用意できない
☑ 保釈支援協会の審査に落ちてしまった
☑ 保釈金を貸してくれる親族や友人もいない
このような場合でも保釈金なしで釈放が可能になる制度があります。それが勾留取消請求です。
いったん勾留されても、その後、勾留の理由や必要性がなくなった場合、裁判所は勾留を取り消さなければいけません。裁判所にこの取消しを求める申立てが勾留取消請求です。
勾留の理由や必要性がなくなれば、裁判所は、弁護士からの請求がなくても、職権で勾留を取り消さなければいけません。
ただ、裁判所が職権で勾留を取り消すケースはまずありませんので、実際は、弁護士からの請求が必要となります。
勾留取消請求と保釈の3つの違い
1.勾留取消請求は保釈金がいらない
弁護士が勾留取消請求をして、裁判所に勾留の要件がなくなったと判断されれば、被告人はすぐに釈放されます。保釈のように、事前にお金を裁判所に納める必要はありません。
軽微な事件であっても、保釈金の相場は150万円以上になりますので、被告人の家族にとってはかなりの負担になります。勾留取消請求はお金の負担がないということが最大のメリットです。
2.勾留取消請求の方が難しい
勾留取消請求の方が保釈よりも難易度は高くなります。保釈の場合は、被告人側に保釈金を納付させることによって、間接的に証拠隠滅や逃亡を防止する効果が期待できます。もし証拠隠滅や逃亡をすると保釈金が没収されてしまう可能性があるためです。
保釈許可決定書にも、「証拠隠滅をしないこと」、「逃亡しないこと」といった条件が挙げられ、これらに反すると保釈金が没収されることがあるとはっきり書かれています。
これに対して、勾留取消請求は、「条件に違反すると保釈金を没収するぞ!」と被告人を威嚇することができないため、「そのような威嚇がなくても証拠隠滅をしたり逃亡しないだろう。」と言えるだけの事情がないと認められません。
3. 勾留取消請求は起訴前からできる
保釈を請求できるは起訴された後に限られます。起訴される前に保釈を請求することはできません。これに対して、勾留取消請求は起訴前から行うことができます。
起訴前に勾留取消請求が認められうるケース
勾留された後に被害者との間で示談が成立した場合は、証拠隠滅の可能性がなくなったとして、勾留取消請求が認められる余地が十分にあります。
もっとも、弁護士が検察官に示談書を提出すれば、勾留取消請求をするまでもなく、検察官の判断ですぐに釈放されることが多いです。
そのため、示談書を検察官に提出してもなお釈放されないケースに限って、裁判所に対して勾留取消請求をすることになります。
起訴後に勾留取消請求が認められうるケース
次の3つの条件を満たした場合は勾留取消請求が認められる余地が十分にあります。
①起訴事実を認めていること
②検察側の証拠調べが全て終了していること
③量刑相場から執行猶予が予想されること
①について
起訴事実を認めている自白事件の場合は、否認事件に比べて、証拠隠滅の可能性が低いと判断されやすいです。
②について
検察側の証拠調べが全て終了しているのであれば、もはや証拠隠滅の余地がないといえるでしょう。
③について
執行猶予が予想されるのであれば、あえて逃亡する動機がないということになります。
そのため、上記3つの条件を満たしているケースでは勾留取消請求が認められる余地は十分にあります。
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