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売春防止法違反とは?成立要件や逮捕後の流れについて弁護士が解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

 

売春防止法違反とは?

売春は、人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良な風俗を乱すものです。売春を助長する行為等を処罰するために定められた法律が売春防止法です。

 

 

売春防止法は、売春自体は処罰の対象とせず、主として、売春のあっせんや売春する場所の提供、管理売春など売春を助長する行為を処罰しています。

 

 

売春自体も責められるべき行為ですが、女性の貧困や無知が原因になっていることが少なくありません。そのため、売春防止法は、売春の勧誘等を行った女子を婦人補導院に収容して必要な補導を行う処分を定めています。

 

 

また、売春を行うおそれのある女子の保護更生を図るため、都道府県に婦人相談院を設置し、相談に応じたり、必要な調査等を行っています。

 

 

売春とは?

売春とは、対価を受けて、または受ける約束で、不特定の相手方と性交することです。児童ポルノ法で定められている児童売春と異なり、手淫、口淫などの性交類似行為は含まれません。売春の主体は女性に限られます。

 

 

性交の対価としては現金が一般的ですが、他にも物品や借金の免除などの経済的利益であれば対価になり得ます。

 

 

売春防止法違反-売春勧誘罪

売春をする目的で、公衆の目にふれるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すると売春勧誘罪が成立します。罰則は6か月以下の懲役または2万円以下の罰金です。

 

 

売春防止法の条文では1万円以下の罰金とされていますが、罰金等臨時措置法2条1項により、2万円以下の罰金に修正されています。

 

 

実際に勧誘していなくても、勧誘するために道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがったりつきまとったりした場合も、上記の法定刑が科されます。

 

 

勧誘の方法としては、言葉による勧誘が一般的ですが、目線や身振りによる勧誘でもよいとされています。

 

 

売春防止法違反-客待ちの罪

売春をする目的で、公衆の目にふれるような方法で客待ちをすると、売春防止法の客待ちの罪が成立します。罰則は6か月以下の懲役または2万円以下の罰金です。

 

 

売春防止法の条文では1万円以下の罰金とされていますが、罰金等臨時措置法2条1項により、2万円以下の罰金に修正されています。

 

 

客待ちとは、相手方からの買春の申込みを待つ行為です。もっとも、ただ待っているだけで客待ちの罪が成立するわけではなく、自ら売春をする意思があることを多数の人に表示することが必要とされています。

 

 

具体的には、行為の日時・場所、行為者の服装・外見(髪型や化粧等)、通行人に対する態度(成人男性にのみ視線を向ける等)等によって判断されます。

 

 

売春防止法違反-売春誘引罪

売春をする目的で、公衆の目にふれるような方法で、広告その他これに類似する方法により、人を売春の相手方となるように誘引すると、売春誘引罪が成立します。罰則は6か月以下の懲役または2万円以下の罰金です。

 

 

売春防止法の条文では1万円以下の罰金とされていますが、罰金等臨時措置法2条1項により、2万円以下の罰金に修正されています。

 

 

現在では、売春誘引罪は、売春目的で、愛人募集のネット掲示板に投稿した女性がサイバーパトロールで検挙されて事件化することが多いです。

 

 

現行犯逮捕される売春勧誘罪や客待ちの罪のケースと異なり、売春誘引罪のケースでは、家宅捜索を受けた後に在宅事件として捜査されることが多いです。

 

 

売春防止法違反-売春周旋罪

売春の周旋をすると売春周旋罪が成立します。罰則は2年以下の懲役または5万円以下の罰金です。懲役と罰金の両方が科されることもあります。

 

 

「周旋」(しゅうせん)とは、売春をしようとする者とその相手になろうとする者を仲介し売春・買春をさせようとする一切の行為です。

 

 

典型的な周旋は、路上で通行人に声をかけて買春をもちかけ、売春しようとする女性がいる部屋に案内することです。周旋行為が行われれば、売春が行われていなくても、売春周旋罪が成立します。

 

 

売春の周旋をする目的で、以下の行為をした場合も上記の法定刑が科されます。

 

 

①人を売春の相手方となるように勧誘すること

②売春の相手方となるよう勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがったり、又はつきまとうこと

③広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。

 

 

売春防止法違反-売春させる罪

売春防止法は、女性に不当な影響力を行使して売春させる行為を処罰しています。具体的には以下の類型があります。

 

 

行為罰則
欺いて売春させた

3年以下の懲役または10万円以下の罰金

*懲役と罰金の両方科されることもあります。

困惑させて売春させた
親族関係による影響力を利用して売春させた
脅迫して売春させた3年以下の懲役または3年以下の懲役及び10万円以下の罰金
暴行して売春させた

*未遂も処罰されます。

*これらの犯罪をした者が、売春の対価の全部若しくは一部を受けとったり、要求したり、受けとる約束をしたときは、5年以下の懲役及び20万円以下の罰金を科されます。

 

 

売春防止法が施行された昭和32年当時は、貧困などの事情から女性に不当な影響力を行使して売春させることが頻繁にありました。現在では、ホストが売掛金を回収する手段として、女性に影響力を行使して売春させるケースが増えています。

 

 

売春防止法違反-売春契約罪

人に売春をさせることを内容とする契約をすると売春契約罪が成立します。罰則は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。懲役と罰金が両方科されることもあります。

 

 

売春契約罪の典型的なケースは、他人に売春をさせようとする者が自ら売春をしようとする女性との間で、売春をすることを内容とする契約を結ぶ場合です。

 

 

この場合、売春契約罪にあたるのは、他人に売春をさせようとする者のみです。契約の相手方である自ら売春をしようとする女性には売春契約罪は成立しません。売春契約罪の未遂も処罰されます。

 

 

売春防止法違反-売春場所提供罪

1.罰則

情を知って売春を行う場所を提供した場合、売春場所提供罪が成立します。罰則は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。懲役と罰金が両方科されることもあります。

 

 

売春を行う場所を提供することを業とした場合、7年以下の懲役及び30万円以下の罰金なります。

 

 

2.「提供」とは

売春場所提供罪の「提供」とは、マンションやホテルの一室等を、売春に利用できる状態にして引き渡すことです。

 

 

引き渡しの約束をしただけでは提供したことにはなりません。実際に引き渡していれば、その場所で一度も売春が行われていなくても「提供」したことになります。

 

 

3.「情を知って 」とは

「情を知って」とは、提供する場所が売春に利用されることを知っていることです。「売春に利用されるかもしれないがそれでもいい。」という未必的な認識でも足りるとされています。

故意とは?確定的故意と未必の故意について弁護士が解説

 

 

引き渡した時点でその場所が売春に利用されることを全く知らなかった場合は、その後に売春に利用されることを知って黙認していても、場所提供罪は成立しません。

 

 

ただ、黙認したまま賃貸借契約を更新した場合は、更新した時点で場所提供罪が成立します。

 

 

4.「業として」とは

「売春を行う場所を提供することを業とする」とは、反復継続する意思で売春の場所を提供することです。

 

 

反復継続する意思がある限り、一回提供しただけでも業として提供したことになります。場所を提供したことの対価を受け取っていなくても本罪が成立します。

 

 

売春防止法違反-管理売春罪

1.罰則

人を自己の占有し、もしくは管理する場所または自己の指定する場所に居住させ、売春をさせることを業とした場合、管理売春罪が成立します。罰則は10年以下の懲役及び30万円以下の罰金です。

 

 

売春防止法が施行された昭和32年当時は、女性を部屋に住ませて囲い込み、逃げないように監視して売春をさせる娼家が存在していました。

 

 

娼家は人身売買や人権侵害の温床になっていたため、これを根絶するために管理売春罪が定められました。

 

 

2.「居住させ」とは

「居住させ」とは、娼家のように、女性を生活の本拠となる部屋に常時住ませることです。ただ、そこまでではなくても、日常生活の相当部分において所在場所を拘束していればよいとされています。

 

 

そのため、一定の時間に女性を待機場所で待機させ、客から申し込みを受けた時点でホテル等に派遣して売春させた場合も「居住させ」たといえる場合があります。居住させたか否かは、以下のような点から判断されます。

 

 

・遅刻や欠勤にともなうペナルティがあるか

・女性の判断で待機場所から自由に出てよいか

・監視役がいるか

・派遣先への送迎があるか

・客と合意したサービス内容について店に報告義務があるか

 

 

3.「業として」とは

「業として」とは、反復継続する意思で管理売春を行うことです。反復継続する意思があれば一回売春させただけでも管理売春罪が成立します。

 

 

また、管理者が報酬を得ていなかったとしても管理売春罪が成立します。

 

 

売春防止法違反の流れ

1.逮捕された場合

売春防止法違反は逮捕されることが非常に多い犯罪です。

 

 

売春防止法違反で逮捕されると、翌日か翌々日に検察庁に連行され、検察官の取調べを受けます。検察官が勾留を請求すれば、当日か翌日に裁判所に連行され裁判官の勾留質問を受けます。

 

 

裁判官が検察官の勾留請求を許可すれば、原則10日にわたり拘束されます。勾留が延長されると最長20日にわたり拘束されます。検察官が勾留を請求しなかったり、裁判官が勾留請求を却下すると、被疑者は釈放されます。

早期釈放を実現する

 

 

検察官は最長20日の勾留期間内に被疑者を釈放するか起訴しなければなりません。具体的には以下の3つの流れが考えられます。

 

 

 より詳しい解説はこちら
①処分保留で釈放→その後に不起訴処分保留釈放とは?タイミングや起訴・不起訴との関係について
②略式起訴→罰金

逮捕・勾留中に罰金となり釈放される流れ

③公判請求→(執行猶予付き)懲役刑刑事裁判の流れ

 

 

公判請求された場合は、保釈請求等が許可されない限り、勾留が続きます。

保釈を弁護士に相談-保釈金・申請が通る確率・保釈の流れ

 

 

2.逮捕されなかった場合

売春防止法違反は逮捕されることが多い犯罪ですが、ネット掲示板に愛人募集の書き込みをした場合は、逮捕されずに在宅事件になることが多いです。

 

 

最初に家宅捜索を受けてから、おおむね2,3か月後に警察から検察に捜査資料が引き継がれます(「書類送検」といいます)。

 

 

書類送検されたタイミングで担当の検察官が決まります。検察官は、被疑者の取調べをした上で起訴するか不起訴にするかを決めます。送検から起訴・不起訴が決まるまでの期間は2か月前後になることが多いです。

 

 

売春防止法違反の弁護活動

1.売春勧誘罪

売春勧誘罪は現行犯逮捕されることが多い犯罪です。歓楽街で取り締まりをしている捜査員が売春を勧誘していると思われる女性を見つけると、客のふりをして近づき、勧誘を受けた時点で現行犯逮捕します。

 

 

本人から勧誘をしていないのに、捜査員の誘導に返事をしただけで逮捕された場合は、違法なおとり捜査の可能性が高いです。

 

 

早期に弁護士を呼び、不利な調書をとられないようにすれば、嫌疑不十分で不起訴を獲得できる余地が十分にあります。

不起訴とは?無罪との違いや前歴・罰金との関係

 

 

2.客待ちの罪

客待ちは勧誘のように明確な言動がないため、不利な調書をとられなければ、嫌疑不十分で不起訴になる余地も十分にあります。弁護士が本人と接見し、取調べにどのように対応すればよいのかをアドバイスします。

弁護士が教える取調べ対応の極意-録音・弁護士の立ち会いは?

 

 

3.売春誘引罪

ネット掲示板に愛人募集のメッセージを書き込んだ場合、メッセージが証拠として残っているため、嫌疑不十分で不起訴を獲得することは困難です。

 

 

もっとも、反省文を提出したり贖罪寄付を行うことによって、起訴猶予で不起訴を獲得できる余地は十分にあります。ウェルネスでも多くの事件で不起訴を獲得しています。

贖罪寄付とは?金額・タイミング・方法について

売春防止法違反と愛人募集掲示板

 

 

弁護士が身元引受人になることによって、家族に発覚しないように進めていける場合も多々あります。

刑事事件の身元引受人

 

 

4.その他の売春防止法違反

売春しようとする女性以外の第三者が売春防止法違反で逮捕されると、初犯であっても公判請求される可能性が十分にあります。弁護士が以下の事情を検察官に指摘して不起訴や罰金を求めます。

 

 

①反省している

②家族の監督が期待できる

③新しい仕事を始めた

④客や女性との連絡用に使っていた携帯電話を解約した

⑤売春場所の賃貸借契約を解約して引き渡した(場所提供)

⑥待機場所の賃貸借契約を解約して引き渡した(管理売春⑦集客用のホームページを閉鎖した(管理売春)

 

 

売春防止法違反で家宅捜索をされたり、家族が逮捕された方はお気軽にウェルネス(03-5577-3613)にご相談ください。