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強制性交等と尾行捜査
このページはウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
目次
強制性交等では尾行捜査が多い
強制性交等(強姦)は、密室やひとけのない野外で行われるため、現行犯逮捕や緊急逮捕されるケースはあまりなく、ある程度の期間が経過してから後日逮捕されるケースが多いです。
警察は後日逮捕する前に被疑者を尾行捜査します。
強制性交等で尾行捜査をする理由
捜査機関にとって、強制性交等(強姦)の最も重要な証拠は、「被害者の膣内から加害者のDNAが検出されたこと」です。裁判では、検察官がDNAの鑑定書を証拠として提出します。
被害者が事件直後に警察に被害を訴えた場合、警察から医療機関を紹介され、そこで、医師から膣の内容物を採取されます。
警察は、医師から膣内容物の任意提出を受け、科学捜査研究所(科捜研)に提出します。その後、科捜研の法医研究員が、科学的手法を用いて、膣内容物に含まれるDNA型を特定します。
強姦の被害にあった場合は、膣内容物の中に、被害女性に由来するDNAと加害男性に由来するDNAが混在していますが、科学的分析により、混在するDNAを人ごとに分別することができます。
この鑑定により、「被害女性の膣内容物の中に第三者のDNAが混在していること」が科学的に証明されます。もっとも、第三者が誰なのかはわかりません。
*被疑者に前科・前歴がある場合は、DNA情報が警察庁のデータベースに登録されているので、この時点で特定されることになります。
そこで、警察が捜査線上に浮上した被疑者を尾行して、被疑者が捨てたタバコの吸い殻や飲食した際のコップ等を取得し、これを科捜研に提出します。
科捜研の法医研究員は、それらに付着した被疑者の唾液からDNAを抽出します。吸い殻等に付着していたDNAのタイプと被害女性の膣内容物から採取された第三者のDNAのタイプが同一であれば、被疑者が被害者を強姦したことの証拠になります。
強制性交等の尾行捜査はこうして行われる
尾行捜査は通常2名の捜査員によって行われます。「被疑者の唾液が付着した物を回収する」という目的があるため、徒歩で移動中の被疑者を徒歩で尾行することが多いです。
捜査員によって尾行のスキルに差があり、全く気づかれない捜査員もいれば、尾行中に被疑者に気づかれ何度も目があう捜査員もいます。
捜査員は、被疑者と一定の距離をとって尾行し、被疑者が電車に乗れば、同じ車両に乗ってきます。何食わぬ顔をして被疑者のすぐ目の前の座席に座っていることもあります。
尾行中、被疑者が飲食店や喫茶店に入ったときは、捜査員も続いて入店し、被疑者が店を出た後に、従業員に警察手帳を示し、被疑者の使用したコップなどを任意提出させ領置します。
被疑者がタバコや缶ジュースを路上に捨てたときは、それらを回収します。被疑者は、DNAを解析されることを許容した上で捨てたわけではありませんので、たとえ廃棄物であっても、裁判所の差押令状を取得する必要があります。
警察は回収したものを科捜研に提出してDNA鑑定を依頼します。
強制性交等で尾行捜査されたら逮捕が近い
警察は被疑者を特定してから尾行捜査を行います。その後、科捜研で作成されたDNAの鑑定書を、逮捕状請求の疎明資料として裁判所に提出し、逮捕状の発付を受けます。
ふだんの生活で「なぜかあの人をよく見かけるなあ。」と思っていたところ、逮捕の現場でその人物の姿を目にして、「あのとき尾行されていたのか。」と初めて気づくこともあります。
尾行捜査に気づいた後に出頭しても自首にならない
尾行捜査されている時点で既に被疑者として特定されています。被疑者として特定された後に警察署に出頭しても自首にはなりません。
もっとも、実際は尾行捜査されていないのに、本人がナーバスになって尾行捜査されていると勘違いしているだけの場合もあります。出頭するか否かは刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。
強制性交等で尾行捜査されたときの対応方法
警察に尾行捜査をされていれば、遠からず逮捕される可能性が高いです。
強制性交等(強姦)をした覚えがあれば、弁護士を通じて、早急に示談交渉を行い、被害届を取り下げてもらいます。もっとも、被害者が知らない方の場合は、連絡先がわかりませんので、示談交渉をすることはできません。
この場合は、弁護士が、警察署にご家族の身元引受書や本人の上申書を提出したり、疾患がある場合は医師の診断書を提出する等して、逮捕回避を目指すことになります。
逮捕が避けられないケースでは、被疑者に「尾行捜査を受けているが逃亡や証拠隠滅を行わない」旨の書面を作成してもらい、公証人の確定日付をとります。
起訴後に保釈請求をするときに、逃亡や証拠隠滅の可能性が低いことをアピールするために、確定日付をとった書面を裁判所に提出します。
捜査員は捜査の一環として尾行状況についての捜査報告書を作成しています。本人の勘違いでないことを明らかにするため、捜査報告書を検察官に開示させ、裁判所に提出します。
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