不同意性交等と尾行捜査について弁護士が解説

不同意性交等と尾行捜査

 

不同意性交等罪を新設した改正刑法が2023年7月13日に施行されました。

 

この日以降、同意のない状況で性交等をした場合、これまでの強制性交等罪・準強制性交等罪に代わって不同意性交等罪の成否が問題になります。

不同意性交等罪に強い弁護士

 

 

不同意性交等は密室やひと気のない野外で行われるため、現行犯逮捕や緊急逮捕されるケースは少なく、ある程度の期間が経過してから後日逮捕されるケースが多いです。

 

 

警察は、後日逮捕する前に被疑者を尾行捜査します。このページでは尾行捜査の流れや対処法について刑事事件の経験豊富な弁護士 楠 洋一郎が解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

 

 

 

 

不同意性交等-尾行捜査はなんのため?

1.被害者の膣の内容物を分析する

捜査機関にとって、不同意性交等(姦淫)の最も重要な証拠は、<被害者の膣から犯人のDNAが検出されたこと>です。裁判では、検察官がDNAの鑑定書を証拠として提出します。

 

 

被害者が事件直後に警察に被害を訴えた場合、警察から病院を紹介されます。被害者は病院で、医師から綿棒などで膣の内容物を採取されます。

 

 

警察は、医師から膣内容物がついた綿棒などを提出してもらい、科学捜査研究所(科捜研)に渡します。その後、科捜研の法医研究員が、科学的な手法を用いて、膣内容物に含まれるDNA型を特定します。

 

 

不同意性交等(姦淫)の被害にあった場合は、膣内容物の中に、被害女性に由来するDNAと第三者(=犯人)に由来するDNAが混在していますが、科学的分析により、混在するDNAを人ごとに分けることができます。

 

 

そのため、「被害女性の膣内容物の中に第三者のDNAが混在していること」が科学的に証明されます。もっとも「第三者が誰なのか」まではわかりません。

 

 

2.被疑者の唾液からDNAを採取⇒鑑定

警察は、捜査線上に浮上した被疑者を尾行して、被疑者が捨てたタバコの吸い殻やコップなどを取得し、これを科捜研に提出します。

 

 

科捜研の法医研究員は、それらに付着した被疑者の唾液からDNAを抽出します。吸い殻などに付着していたDNAのタイプと被害女性の膣内容物から採取された第三者のDNAのタイプが同一であれば、被疑者が犯人であることの強力な証拠になります。

 

 

不同意性交等の尾行捜査はこうして行われる

尾行捜査は通常2名の捜査員によって行われます。「被疑者の唾液が付着した物を回収する」という目的があるため、徒歩で移動中の被疑者を徒歩で尾行することが多いです。

 

 

捜査員によって尾行のスキルに差があり、全く気づかれない捜査員もいれば、尾行中に被疑者に気づかれ何度も目があう捜査員もいます。

 

 

捜査員は、被疑者と一定の距離をとって尾行し、被疑者が電車に乗れば、同じ車両に乗ってきます。何食わぬ顔をして被疑者のすぐ目の前の座席に座っていることもあります。

 

 

尾行中、被疑者が飲食店に入ったときは、捜査員も続いて入店し、被疑者が店を出た後に、従業員に警察手帳を示し、被疑者の使用したコップなどを任意提出させ領置します。

 

 

被疑者がタバコや缶ジュースを路上に捨てたときは、それらを回収します。

 

 

被疑者は、DNA鑑定されることを許容して捨てたわけではありませんので、たとえ廃棄物であっても、取得するためには裁判所の差押令状が必要です。警察は回収したものを科捜研に提出してDNA鑑定を依頼します。

 

 

不同意性交等で尾行捜査されたら逮捕が近い

尾行捜査した結果、被疑者のDNAを取得できれば、膣内容物のDNA鑑定書や被疑者のDNA鑑定書を逮捕状請求書の疎明資料として裁判所に提出し、逮捕状の発付を受けます。

 

 

逮捕状が発付されれば、逮捕までは時間の問題です。

 

 

ふだんの生活で「なぜかあの人をよく見かけるなあ。」と思っていたところ、逮捕の現場でその人物の姿を目にして、「あのとき尾行されていたのか。」と初めて気づくこともあります。

 

 

不同意性交等で尾行捜査されたときの4つの対処法

1.自首できる?

尾行捜査されている時点で既に被疑者として特定されています。被疑者として特定されれば、その後に警察署に出頭しても自首にはなりません。

 

 

もっとも、実際は尾行捜査されていないのに、本人がナーバスになって尾行捜査されていると勘違いしているだけの場合もあります。まずは刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。

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2.示談をまとめる

警察に尾行捜査されていれば、遠からず逮捕される可能性が高いです。

 

 

不同意性交等をした覚えがあれば、弁護士を通じて、早急に被害者と示談交渉を行い、被害届を取り下げてもらいます。被害届を取り下げてもらえれば、逮捕を阻止できる可能性が高いです。

 

 

3.家族の身元引受書等を提出する

被害者が知らない人で連絡先がわからなければ、示談交渉をすることはできません。

 

 

この場合は、弁護士が、警察署にご家族の身元引受書や本人の上申書を提出したり、重い病気にかかっている場合は医師の診断書を提出する等して、逮捕回避を目指します。

 

 

4.書面を作成し確定日付をとる

逮捕が避けられないケースでは、本人に「尾行捜査を受けているが逃亡や証拠隠滅を行わない」旨の書面を作成してもらい、公証役場で確定日付をとります。

 

 

起訴後に保釈請求をするときに、逃亡や証拠隠滅の可能性が低いことをアピールするために、確定日付をとった書面を裁判所に提出します。

 

 

捜査員は捜査の一環として尾行状況についての捜査報告書を作成しています。本人の勘違いでないことを明らかにするため、捜査報告書を検察官に開示させ、あわせて裁判所に提出します。

 

 

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