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不同意性交等で執行猶予を獲得する方法は?
不同意性交等罪を新設した改正刑法が2023年7月13日に施行されました。
この日以降に同意のない状況で性交等をした場合は、これまでの強制性交等罪や準強制性交等罪ではなく、不同意性交等罪が問題になります。
このページでは、不同意性交等罪で執行猶予を獲得する方法について弁護士 楠 洋一郎が解説しました。ぜひ参考にしてみてください!
目次
不同意性交等で起訴された!執行猶予はとれる?
1.不同意性交等で起訴されたらどうなる?
不同意性交等罪で起訴されたら刑事裁判が始まり、最終的には判決が言い渡されます。不同意性交等罪の判決は次の3種類です。
①無罪判決
②執行猶予付きの懲役刑
③執行猶予なしの懲役刑(=実刑)
執行猶予とは条件つきで刑罰を執行しないことです。執行猶予付きの刑であれば、再犯に及んで執行猶予が取り消されない限り、社会の中で生活することができます。
これに対して、実刑判決であれば刑事施設に収容され、刑務所で服役することになります。
2.不同意性交等罪の罰則
不同意性交等罪の罰則は、5年以上20年以下の拘禁刑です。
拘禁刑とは、刑務作業が義務とされている懲役刑と異なり、受刑者の状況に応じて刑務作業や更生プログラムを柔軟に科すことができる刑罰です。
拘禁刑は現時点ではまだ導入されていません。2025年6月までに導入されることになっており、それまでの間は懲役刑として扱われます。
3.懲役3年以下でないと執行猶予はつかない
どんな犯罪であっても、執行猶予を付けるためには3年以下の懲役刑・禁錮刑であることが必要です。
3年を上回る懲役刑・禁錮刑の場合は、法律上、執行猶予を付けられませんので、刑務所で服役することになります。
【刑法25条】
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4.不同意性交等-3年要件をクリアできない?
執行猶予が付くためには、懲役にせよ禁錮にせよ3年以下の判決である必要があります。例えば、懲役4年という判決であれば100%実刑になってしまいます。
不同意性交等罪の罰則は最短でも懲役5年ですので、執行猶予の3年要件をクリアできないように思われます。
もっとも、酌量減軽されれば、刑罰の下限が懲役5年から懲役2年6月に減軽されるため、執行猶予の3年要件をクリアすることができます。
「酌量減軽」(しゃくりょうげんけい)とは、具体的な情状に照らして、条文を適用して導かれる刑罰が重すぎると考えられる場合に、裁判官の裁量によって減軽することです(刑法66条)。
【刑法66条】
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酌量減軽されると懲役刑の最短と最長がそれぞれ半分になります。不同意性交等罪の罰則は懲役5年から懲役20年ですので、酌量減軽されると、懲役2年6月から懲役10年となり、この範囲で実際の刑罰が言い渡されます。
そのため、酌量減軽されると、執行猶予の3年要件をクリアする道が開けることになります。
【刑法68条】
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5.最終的には「情状」で決まる
言い渡される懲役刑が3年以下であれば必ず執行猶予が付くわけではありません。
最終的に執行猶予が付くか否かは「情状により」判断されます(刑法25条)。刑法25条の情状と酌量減軽の理由となる情状は、どちらも「被告人にとって有利な事情」という意味で違いはありません。
不同意性交等で執行猶予を獲得するためには示談が必要
不同意性交等で執行猶予をとるためには、<酌量減軽→執行猶予>に値する情状が認められる必要があります。
この情状のうち最も重要なものは被害者との示談です。不同意性交等罪で起訴されると、被害者との間で示談が成立しなければ、他にどんなに有利な情状があっても執行猶予は付かず、実刑になる可能性が高いです。
この点が不同意わいせつ罪とは異なる点です。不同意わいせつのケースでは、示談がとれなくても、①初犯の方で、②再犯防止策をとっており、③家族が情状証人として出廷すれば、執行猶予がとれる余地は十分にあります。
これに対して、不同意性交等のケースでは、他にどれほど有利な事情があったとしても、示談が成立しなければ、執行猶予までは難しいでしょう。
弁護士のなかには、「供託や贖罪寄付をすれば執行猶予になることもあります。」とアドバイスする方もいるようですが、見通しが甘いです。
不同意性交等で起訴された本人としても、家族としても、「示談がとれない限り執行猶予は難しい。」ということを理解した上で、「何がなんでも示談をとりにいく」という覚悟で臨む必要があります。
不同意性交等-示談の中身で執行猶予の確率が変わってくる?
不同意性交等で執行猶予を獲得するためには、被害者との間で示談を成立させることが必要です。しかし、示談がまとまれば内容は何でもいいというわけではありません。
執行猶予の可能性を高めるためには、示談書に「被告人を許す」とか「寛大な処分を求める」といった宥恕文言(ゆうじょもんごん)が入っている必要があります。
宥恕文言が入っていなければ、示談がまとまっても実刑になる可能性がかなり高いです。
示談金の額についても、10万円など不相当に低額であれば、被害者が示談金を受けとってくれたとしても、裁判官から「被害弁償が不十分」と評価され、実刑になる可能性が高まります。
被害者の言い値にそのまま従う必要はありませんが、被告人側の資力を念頭におきつつ、行為の内容にみあった金額で示談をした方が執行猶予の可能性が高まります。
具体的な金額については個別のケースによって異なってきますので、刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。
不同意性交等-示談以外の情状も指摘すべき!
不同意性交等罪で起訴されても、宥恕文言が入った示談がまとまれば、執行猶予になる可能性は高まります。
もっとも、それで執行猶予が保証されるわけではなく、手口が悪質であったり、前科があれば、実刑になる可能性も十分にあります。そのため、示談以外にも以下のような活動を行い、有利な情状として裁判所に指摘すべきです。
①再犯防止のために性依存症のクリニックに通院する
②家族に監督してもらう→情状証人として裁判に出廷してもらう
不同意性交等-示談なしで執行猶予を狙える2つのケース
不同意性交等で執行猶予をとるためには、被害者との間で示談を成立させることが必要です。もっとも、示談がとれなくても執行猶予を狙えるケースもあります。それが以下の2つのケースです。
【ケース1】 風俗嬢から性的サービスを受けた際に行き過ぎた行為をしたケース 【具体例】 デリヘル嬢に素股をしてもらっていたが興奮してしまい、強引に挿入してしまった。 |
【ケース2】 被害者が性行為の一部について同意していたが、挿入までは同意していなかったケース 【具体例】 知人女性と飲酒した後、女性の部屋に行き、キスしたり胸をもんだら嫌がっていなかったので、最後までやっていいだろうと思い、強引に挿入してしまった。 |
このようなケースでは、示談が成立しなかったとしても、①初犯の方で、②被害弁償を行い、③再犯防止策をとっており、④家族が情状証人として出廷すれば、執行猶予を獲得できる余地はあります。
風俗嬢が被害者となる不同意性交等では、店の責任者や本人から高額な示談金を請求されることがあります。
典型的な不同意性交等と異なり、執行猶予をとるためには示談が必須というわけではありませんので、このようなケースでは、相手の言いなりになるのではなく、弁護士が毅然と交渉することも必要です。
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