• トップ
  • > 不同意性交等致傷とは?不起訴や執行猶予を獲得する方法を解説

不同意性交等致傷とは?不起訴や執行猶予を獲得する方法を解説

不同意性交等致傷とは

 

2023年6月の刑法改正により、強制性交等致傷罪は不同意性交等致傷罪に改められました。それに伴い処罰の対象となる行為が追加され、刑罰も重くなりました。

 

 

改正刑法が施行されたのは2023年7月13日です。この日以後に同意のない状況で性交等をして相手にケガを負わせた場合は、不同意性交等致傷罪の成否が問題になります。

 

 

2023年7月12日以前の行為については、強制性交等致傷罪の成否が問題になります。

*2017年7月12日以前の行為については、強姦致傷罪が問題になります。

 

 

このページでは不同意性交等致傷罪の成立要件や罰則、時効から不起訴・執行猶予を獲得する方法まで弁護士 楠 洋一郎が解説しました。ぜひ参考にしてみてください。

 

 

不同意性交等致傷と強制性交等致傷の違い

1.不同意性交等致傷の成立要件

(1)相手が16歳以上の場合

次の状況で、以下の行為をし又はしようとして、相手にケガを負わせると不同意性交等致傷罪が成立します。

 

【状況】

①同意がない状況

②行為がわいせつなものではないと勘違いしたり、行為の相手について人違いしている状況

 

 

【行為】

①性交

②肛門性交

③口腔性交

④膣・肛門に身体の一部や物を挿入する行為であってわいせつなもの

 

(2)相手が16歳未満の場合

以下の行為をし又はしようとして、相手にケガをさせると不同意性交等致傷罪が成立します。

 

【行為】

①性交

②肛門性交

③口腔性交

④膣・肛門に身体の一部や物を挿入する行為であってわいせつなもの

 

 

2.強制性交等致傷の成立要件

(1)相手が13歳以上の場合

暴行・脅迫を手段として、以下の行為をし又はしようとして、相手にケガをさせると強制性交等致傷罪が成立します。

 

【行為】

①性交

②肛門性交

③口腔性交

 

 

(2)相手が13歳未満の場合

以下の行為をし又はしようとして、相手にケガをさせると強制性交等致傷罪が成立します。

 

【行為】

①性交

②肛門性交

③口腔性交

 

 

3.どこが違う?

①行為の違い

強制性交等致傷の「性交等」とは性交、肛門性交、口腔性交を意味しますが、不同意性交等致傷の「性交等」とは、これら3つの行為に加え、「膣・肛門に身体の一部や物を挿入する行為であってわいせつなもの」も含まれます。

 

 

②年齢の違い

強制性交等致傷については、性交同意年齢が13歳であることを前提として、13歳未満の者に対して性交等をすることが犯罪の成立要件になっています。

 

 

一方、不同意性交等致傷については、性交同意年齢が16歳であることを前提に、16歳未満の者に対して性交等をすることが要件になっています。

 

 

ただし、13歳以上16歳未満の者については、年齢が近い者同士であれば、特定の相手と性行為をすることの意味を十分に理解できるとして、5歳以上年上の者による行為のみが対象とされています。

 

不同意性交等致傷の罰則は?

不同意性交等致傷罪の罰則は懲役6年~20年または無期懲役です。罰則については、強制性交等致傷罪と同じです。無期懲役刑があるので、起訴されたら裁判員裁判で審理されます。

裁判員裁判の流れ

 

 

不同意性交等致傷の時効は?

不同意性交等致傷罪の時効は20年です。強制性交等致傷罪の時効(15年)より5年長くなっています。

 

 

不同意性交等致傷の被害を受けた方は、心に大きな傷を受けており、被害を訴える決心がつくまでに長期間かかる場合もあることから、従来より5年延長されました。

 

 

また、18歳未満の方が不同意性交等致傷の被害を受けた場合は、自分がされたことの意味をすぐには理解できない場合もあることから、20年の時効期間に<18歳になるまでの期間>が加算されることになりました。

 

 

不同意性交等致傷とケガの関係

1.性交等自体によってケガが生じた場合

この場合は当然に不同意性交等致傷罪になります。

 

【具体例】

性交するために陰茎を膣に挿入したところ膣壁が裂傷を負った。

 

 

2.性交等の手段である暴行によってケガが生じた場合

この場合も強制性交等致傷罪になります。

 

【具体例】

強姦するために被害者の顔を殴ってケガをさせた。

 

3.性交等の機会にケガが発生した場合

1と2以外のケースでも、性交等と密接に関連する行為によってケガが生じた場合は不同意性交等致傷罪が成立すると考えられています。

 

 

【具体例】

・被害者が逃げる際に転倒してケガをした。

・加害者が逃げる際に被害者の足を踏んでケガをさせた。

 

 

不同意性交等致傷はいつ成立する?

不同意性交等の実行に着手した上で、被害者にけがをさせれば、たとえ性交等が未遂に終わったとしても不同意性交等致傷罪が成立します。

 

 

つまり性交等が基準となるのではなく、ケガが生じたか否かが基準になるということです。

 

 

【具体例】

加害者が被害者を強姦しようと押し倒したところ、通行人に見られたためその場から逃げたが、被害者は押し倒された際、肩を強打して打撲した⇒不同意性交等致傷罪が成立します。

 

不同意性交等致傷-ケガをさせた自覚がないケース

加害者が全く暴力をふるっていないのに不同意性交等致傷罪が成立することがあります。

 

 

それが膣壁裂傷や肛門裂傷のケースです。膣や肛門に陰茎を挿入した場合、摩擦で膣壁や肛門に裂傷が生じることがあります。その場合、被害者が医師の診断書を取得して警察に提出すると、不同意性交等致傷として立件されます。

 

不同意性交等致傷は不起訴を目指すべき

不同意性交等致傷は、法定刑に無期懲役が定められていることから、起訴されると裁判員裁判で審理されることになります。性犯罪の裁判員裁判の特徴は次の2点です。

 

 

1.裁判が始まるまでの期間が長い

裁判員裁判の審理は数日から1週間程度で終わることが多いです。ただ裁判が始まるまでの準備(「公判前整理手続」といいます)に半年から1年程度かかります。

 

この公判前整理手続には裁判員は参加しません。裁判官・検察官・弁護士のみで、争点や証拠の整理を行います。裁判までに時間がかかるということは、保釈が認められない限り、長期間にわたって勾留されるということを意味します。

 

2.性犯罪は厳罰化の傾向

裁判員裁判の大きな特徴として、性犯罪で厳しい判決が相次いでいるという点があります。裁判員はプロの裁判官以上に性犯罪に厳しい目をもっています。

 

不同意性交等致傷の前身である強制性交等致傷についても、多くのケースで10年近くの実刑が下されています。

 

 

これらの点から、不同意性交等致傷については、裁判員裁判を回避するために不起訴を目指す弁護活動が重要になります。

 

不同意性交等致傷で不起訴を獲得する方法

1.容疑を認めている場合

不同意性交等致傷の容疑を認めている場合、不起訴になるためには、被害者と示談をすることが必須です。

 

 

検察官は、起訴するか不起訴にするかを判断するにあたって、被害者の意思を重視します。そのため、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴になる可能性が高くなります。

 

 

検察官は、加害者やその家族に被害者の連絡先などの個人情報を教えてくれませんので、示談交渉は弁護士を通じて行うことになります。

 

 

逮捕されてから起訴されるまでの期間は約3週間しかありません。不起訴を獲得するためには、この期間内に弁護士が示談をまとめる必要があります。そのため、逮捕されれば一刻も早く弁護士をつけて示談交渉を始めるべきです。

 

2.容疑を否認している場合

逮捕されてから、検察官が起訴するか釈放するかを判断する期間は約3週間です。不同意性交等致傷の事件では目撃者がいない場合が多く、証拠に占める自白調書のウェイトが大きくなります。

 

 

そのため、捜査機関は起訴するために、被疑者に様々なプレッシャーをかけて自白調書をとろうとします。やっていないのに自白調書をとられてしまうと起訴される可能性が高くなります。

 

 

自白調書をとられないようにするためには、取調べに際して黙秘することが基本です。

 

 

取調官もタイムリミットがあるなかで、なんとか自白をとろうと必死です。そのような状況で、黙秘を貫くのは決して容易なことではありません。弁護士がひんぱんに被疑者と接見し、手厚くサポートします。

 

不同意性交等致傷で起訴されたら(認めている場合)

1.刑罰はどう決まる?

不同意性交等致傷で起訴されたら、執行猶予を目指して活動します。自白事件の裁判員裁判では、審理が終わった後に、裁判官と裁判員がどのような刑にするかを評議します。評議では次の2つのステップで刑罰が決められます。

 

 

ステップ①:犯罪に直接関係する事情(犯情)によって刑罰の大まかな枠を決める

ステップ②:犯情以外の一般情状をふまえ、①で決めた大枠の中でどの程度の刑罰にするのか絞り込む

 

 

弁護士としては、このような量刑評議の枠組みを十分に理解した上で弁護活動を行うことが必要です。

 

 

2.犯情について

不同意性交等致傷の犯情で問題になると予想されるのは、行為の計画性、犯行の手口、犯行継続時間、凶器の有無、けがの程度です。

 

 

弁護士がこれらの犯情を検討した上で、被告人の行為が同種の事件に比べて悪質ではないといえる事情があれば、もれなく裁判官・裁判員に指摘します。

 

 

3.一般情状について

最も重要な一般情状は示談です。犯情についてどれだけ有利な事情を指摘できても、示談が成立しなければ、執行猶予を獲得できる可能性は低いです。

 

 

逆に示談が成立すればいっきに執行猶予の可能性が高くなるというわけではなく、示談の内容も問われます。

 

 

「被告人を許す」とか「寛大な処分を求める」という宥恕文言(ゆうじょもんごん)が入った示談書を裁判所に提出できれば、執行猶予の余地は十分にあるといえるでしょう。

 

【関連ページ】不同意性交等で執行猶予を獲得する方法は?

 

不同意性交等致傷で起訴されたら(無罪を主張する場合)

無罪を主張する場合は、公判前整理手続で、具体的にどの点について争うのかを弁護士が明確にします。「被告人は犯人ではありません」と主張するのであれば、裁判員裁判で弁護士がアリバイ事実を主張していくことになります。

 

 

相手の同意があったということであれば、同意があったことを推認させる事情を弁護士が主張・立証していくことになります。

 

 

また、被害者(と称する人物)や目撃者(と称する人物)の供述の信用性を争うため、弁護士が法廷で反対尋問をすることによって、証言の矛盾を明らかにしていきます。

 

 

裁判員裁判に適切に対応するためには、法廷弁護の高度な技法が求められます。ベストな結果を得るためには、裁判員裁判の経験豊富な弁護士に依頼した方がよいでしょう。

 

 

 

関連ページ

不同意性交等罪に強い弁護士

不同意性交等で執行猶予を獲得する方法は?

不同意性交等致傷とは?不起訴や執行猶予を獲得する方法を解説

ワンナイトで逮捕されないためにできることを弁護士が解説

不同意性交等と尾行捜査について弁護士が解説

不同意性交等・不同意わいせつと不当請求-言いがかりへの対処法

不同意性交等・不同意わいせつと民事事件-内容証明への対処法

準強制性交等とは?示談金・弁護士費用の相場や弁護士の選び方

強制性交等・強姦の解決事例

準強制性交等・準強姦の解決事例

不同意性交等のご質問