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勾留質問とは?流れや勾留を阻止するための活動を弁護士が解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しております。
勾留質問とは?
勾留質問とは裁判官が被疑者の話を聞いて勾留するかどうかを決める手続です。検察官の勾留請求を許可するか却下するかを判断するために実施されます。
勾留質問は刑事訴訟法で規定されています。
【刑事訴訟法】
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この条文は、起訴後に始めて被告人を勾留する際に適用される規定です。もっとも、実際はそのようなケースはほとんどありません。勾留する場合は、起訴前に被疑者を勾留するケースが圧倒的に多いです。
起訴前の勾留についても、以下の準用規定によって上記の条文が適用されます。
【刑事訴訟法】
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勾留質問はいつ行われる?
勾留質問は検察官の勾留請求を受けて実施されます。検察庁と裁判所は隣接していることが多いので、勾留請求されれば、被疑者は当日中に裁判所に連行されて勾留質問を受けます。
検察官の勾留請求は逮捕の翌日または翌々日になされますので、勾留質問も逮捕の翌日または翌々日に実施されることになります。
もっとも、東京地裁や東京地裁立川支部では、被疑者の数が多すぎて1日で被疑者を検察庁と裁判所の両方に連行する時間がないため、勾留質問は勾留請求の翌日に実施されます。
【東京地裁・東京地裁立川支部】
勾留請求のタイミング | 勾留質問のタイミング |
逮捕の翌日 | 逮捕の2日後 |
逮捕の2日後 | 逮捕の3日後 |
勾留質問は土日もある?
勾留質問は土日でも平日と同様に実施されます。祝日や年末年始でも通常通り実施されます。
裁判所には土日専用の非公開の電話番号があります。出入口も平日とは異なるため、土日に意見書を提出する弁護士は注意が必要です。
勾留質問の流れは?
勾留質問の流れは次の通りです。
①勾留請求書の提出
検察官が勾留請求書と事件の記録を裁判所に提出します。
②記録の検討
裁判官が勾留質問に入る前に検察官から提出された勾留請求書と捜査資料を検討します。この時点で被疑者を勾留するか釈放するかを決めていることが多いです。
③勾留質問室への入室
裁判官が書記官と一緒に勾留質問室に入ります。その後、被疑者が手錠や腰縄を外された状態で勾留質問室に入ります。護送の警察官は部屋の外で待機します。勾留質問は公開されませんので、弁護士であっても同席することはできません。
④黙秘権の告知
裁判官が被疑者に対して、氏名・年齢・住居・職業を確認した後、「ずっと黙っていることもできますし、一つ一つの質問に対して黙っていることもできます。」と言って黙秘権の告知をします。
⑤被疑者の言い分を聞く
裁判官が勾留請求書に書かれている被疑事実を被疑者に読み聞かせ、「何か言いたいことはありますか?」と尋ねます。被疑者が発言した場合は、書記官がその内容を勾留質問調書に記載します。
⑥弁護人選任権の告知
裁判官が被疑者に対して弁護人を選任する権利があることを説明します。国選弁護人についても説明します。
⑦勾留するかどうかの決定
裁判官が勾留請求を許可する場合は勾留状を発付します。却下する場合は勾留請求書に「勾留請求却下」のゴム印を押して、記録と一緒に検察官に戻します
勾留質問後の流れは?
裁判官が勾留請求を却下した場合、検察官は被疑者を釈放するよう警察に指示します。
⇒勾留されなかったときの釈放の流れ-何時にどこに迎えに行く?
裁判官が勾留請求を許可した場合は、被疑者は原則10日にわたって勾留されます。
裁判官は、やむを得ない事由があると認められときは、検察官の請求により、10日を限度として勾留を延長することができます。そのため、勾留の最長期間は20日になります。
検察官は、勾留期間内に被疑者を起訴するか釈放しなければなりません。弁護士であれ、検察官であれ、裁判官の判断に不服がある場合は、裁判所に対して準抗告を申し立てることができます。
勾留請求を却下する判断に対して、検察官が準抗告を申し立てた場合、裁判所の判断が出るまで被疑者は釈放されません。検察官の申立てが棄却されたら被疑者は釈放されます。
勾留質問の問題点
裁判官は、中立の立場から検察官の勾留請求に理由があるかどうかを判断します。といっても、被疑者の話を親身に聞いてくれるわけではありません。
勾留質問ははっきり言ってやっつけ作業になっています。東京地裁のような大きな裁判所では、裁判官は一人あたり20人程度の被疑者を担当しています。
裁判官はいったん勾留質問室に入ると、ぶっ続けで被疑者の勾留質問をこなしていきます。一人当たり5分から10分くらいで、流れ作業のように次から次へと進めていきます。
帰りの護送バスが出発する時間帯も決まっていますので、「とにかく早く終わらせよう。」と考えている裁判官が多いです。
そのため、建前上は、被疑者は言い分を述べることができるとされていますが、実際は、時間をかけて話をできるような雰囲気ではありません。話をしようとしても、「~ということですね。」と裁判官に短くまとめられてしまうことが多いです。
「あっという間に終わってしまい何も言えなかった。」と感じる被疑者がほとんどです。
勾留質問と接見
弁護士は勾留質問の前後に裁判所の接見室で被疑者と接見することができます。警察署での接見と異なり、裁判所で接見する場合は時間が制限されることが多いです。東京地裁では最長20分に制限されています。
なお、一般の方は裁判所で接見することはできません。
勾留質問の前に弁護士がすべきこと
1.意見書を提出する
裁判官は勾留質問をする前に、勾留するか釈放するかを事実上決めていることが多いです。また、前述したように、被疑者が勾留質問で言い分を述べる時間はほとんどありません。
そのため、勾留を阻止するためには、事前に弁護士が意見書を作成し、勾留質問が始まる前に裁判官に提出しておきます。
2.裁判官と話をする
ほとんどの裁判官は、勾留質問に入る前のタイミングであれば、弁護士と対面または電話で話をしてくれます。弁護士が裁判官と直接話をすることにより、裁判官がどのようなことを問題と考えているのかがわかります。
3.被疑者と接見する
裁判官と話しをした後、弁護士が裁判所で被疑者と接見し、裁判官の問題意識をフィードバックして、勾留質問に備えてもらいます。
【勾留質問前の弁護活動】(イメージ)
7月1日午後6時 | 弁護士が被疑者と接見 |
7月2日午前11時 | 弁護士が意見書を裁判所に提出 |
7月2日午前11時10分 | 弁護士が裁判官と面接 |
7月2日午前11時20分 | 弁護士が被疑者と接見 |
7月2日午後3時 | 勾留請求却下 |
7月2日午後6時30分 | 警察署で釈放 |
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