盗撮動画の販売と刑事事件

盗撮動画の販売と刑事事件

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

 

 

盗撮動画の販売

盗撮された動画が、インターネットを通じて、不特定多数の人に販売されることがあります。実際は盗撮したものであっても、販売サイト上では、「盗撮風動画」、「本人の同意を得ています。」等と書かれていることが多いです。

 

 

盗撮動画をネットで販売している人は、販売サイトに銀行口座を登録しています。販売数に応じて、サイトの運営元からマージンが振り込まれます。動画販売者のなかには、1年で1000万円以上稼ぐ人もいます。

 

 

盗撮動画の販売-何罪になる?

1.盗撮について

盗撮をすると各都道府県の迷惑防止条例違反になります。地域を問わず迷惑防止条例には罰金刑と懲役刑が定められており、盗撮の最高刑は懲役2年のことが多いです。

 

 

数年前までは、盗撮に迷惑防止条例が適用されるのは、駅や商業施設など誰でも立ち入ることができる「公共の場所」での盗撮に限られていました。

 

 

会社の更衣室など特定の人しか出入りしない場所での盗撮には、迷惑防止条例は適用されなかったのです。

 

 

もっとも、近年、スマホの普及とともに盗撮が社会問題になり、多くの自治体で迷惑防止条例が改正され、特定の人しか出入りしない場所での盗撮にも迷惑防止条例が適用されるようになりました。

【弁護士が解説】迷惑防止条例で規制される盗撮の場所

 

 

2.盗撮動画の販売について

盗撮動画を販売するためにネット上で公開した場合、名誉棄損罪が成立することがあります。

 

 

動画の販売ページに「女性の同意を得ています」といった説明があれば、「お金のために下着等をとらせる女性」といった印象を閲覧者に与えることになり、その女性の社会的評価を下げたといえるからです。

 

 

実際に盗撮動画の販売者が名誉毀損で逮捕・起訴されたケースもあります。

 

 

3.児童ポルノ法違反になることも

18歳未満の児童の裸体を盗撮した場合は、児童ポルノ製造罪が成立します。罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。

 

 

プールや銭湯の脱衣場で盗撮したケースや教員が学校のトイレで生徒を盗撮した場合は、迷惑防止条例違反ではなく、より重い児童ポルノ製造罪になることが多いです。

児童ポルノ製造罪について弁護士が解説

 

 

盗撮動画の販売が刑事事件になるきっかけ

営利目的で盗撮している人の中には、複数のカメラを駆使して、下着等だけではなく、被害者の顔を撮影している人もいます。

 

 

被害者が盗撮された動画を見た友人や知人が、被害者に情報提供します。自分が盗撮されていることを知ってショックを受けた被害者が、警察に相談に行き捜査が始まります。

 

 

「そんなことあるのか?」と思われるかもしれませんが、ウェルネスの弁護士は、このような流れで刑事事件になったケースを複数受任したことがあります。

 

盗撮動画の投稿者は容易に特定される

盗撮動画の投稿者(=撮影者)は、ハンドルネームを使って投稿していますが、警察が捜査すれば、身元は容易に特定されます。

 

 

まず警察は、動画販売サイトに投稿者の銀行口座を照会します。その後、銀行に対し口座開設者の身元情報を照会します。これにより投稿者の氏名・住所・電話番号等の個人情報が特定されます。

 

 

盗撮動画の販売-警察の捜査

1.日時と場所の特定

警察は盗撮動画を分析し、データの更新日時、背景の特徴、被害者の服装などから、盗撮された日時と場所を割り出します。被害者の供述や事件当時の予定が書かれた手帳なども参考にします。

 

 

2.家宅捜索

警察は投稿者の自宅を捜索し、盗撮用カメラや編集用のパソコン、保存用の外付けハードディスクドライブ、SDカード、交通系ICカード、売上金振込口座の通帳などを差し押さえます。

家宅捜索とは?前兆や近所にばれる可能性、対応方法について

 

 

パソコンやハードディスクから被害者が写っている編集前の盗撮動画が発見され、その動画に、撮影中の投稿者の顔が写りこんでいることもあります。

 

 

3.逮捕

販売目的の盗撮は、不特定多数に拡散させている点や利益を得ている点、余罪が多数にわたる点で、通常の盗撮よりも悪質であり、逮捕される可能性が高いです。

 

 

4.被疑者の行動調査

鉄道会社に交通系ICカードの解析を依頼し、盗撮画像が撮影された日に、被疑者がどこにいたのかを精査し、被害者の足どりと突き合わせをします。

 

 

盗撮動画の販売と刑事処分

不起訴を獲得するためには被害者と示談をすることが必須になります。

 

 

たとえ販売サイトから盗撮動画を削除しても、いったんサイトを通じて不特定多数に拡散されてしまったら、拡散先から動画を回収することは不可能です。

 

 

被害者は、いつかまた自分の盗撮画像がネット上にアップされるのではないかと、ずっと不安な思いをされています。

 

 

少なくとも被害者の盗撮動画を販売して得た金銭については、被害弁償として被害者にお支払いした方がよいでしょう。示談だけではなく、盗撮機材の処分や家族の監督など二度と再犯をしない環境づくりをしていく必要があります。

 

 

販売目的の盗撮は通常の盗撮よりも悪質であるため、示談が成立しなければ、前科がなくてもいきなり公判請求されることもあります。

 

 

ウェルネスの弁護士は、盗撮動画の販売事件について複数の取扱い経験があります。警察の捜査を受けている方はお気軽にご相談ください。

示談の相談は弁護士へ

 

 

【盗撮のページ】

盗撮を弁護士に無料相談-示談・逮捕・弁護士費用について

盗撮の弁護士費用の相場は?節約のポイントや慰謝料相場との関係