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【提供罪】盗撮動画の販売で逮捕・起訴を回避する方法
このページでは自分で盗撮した動画をウェブサイトで販売した場合に成立する犯罪や逮捕・前科を回避する方法について弁護士 楠 洋一郎が解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
目次
盗撮動画の販売
下着等を盗撮した動画が、インターネットの販売サイトを通じて、不特定多数の人に提供されることがあります。
実際は盗撮したものであっても、販売サイトでは、「盗撮風動画」、「本人の同意を得ています。」等と説明されています。
盗撮動画をネット販売している人は、動画販売サイトに銀行口座を登録しており、販売した動画ファイルの数に応じて、サイトの運営元から売上金が振り込まれます。
許されないことですが、盗撮動画の販売者のなかには、1年で1000万円以上稼いでいる人もいます。
販売目的の盗撮も撮影罪になる
下着や胸、陰部等の性的な部位を盗撮すると、販売目的の有無にかかわらず、撮影罪が成立します。撮影罪は、「性的姿態撮影等処罰法」という法律によって新たに定められた犯罪です。
この法律は2023年7月13日に施行されましたので、その日以降の盗撮に適用されます。撮影罪の罰則は3年以下の拘禁刑(2025年までは懲役刑)または300万円以下の罰金です。
【撮影罪の導入前は?】 撮影罪を定めた性的姿態撮影等処罰法は2023年7月13日に施行されましたが、それより前の盗撮は、各都道府県の迷惑防止条例で処罰されます。
例えば、東京都の迷惑防止条例では、盗撮の罰則は1年以下の懲役または100万円以下の罰金(常習者は2年以下の懲役または200万円以下の罰金)です。
迷惑防止条例は各都道府県で処罰の要件や程度が異なっていましたが、2023年7月13日以降は、撮影罪で全国一律に処罰されることになりました。 |
盗撮動画を販売すると提供罪になる
盗撮動画をインターネットの販売サイトを通じて不特定多数に提供した場合、性的影像記録提供罪(これから「提供罪」といいます)が成立します。
提供罪は性的姿態撮影等処罰法により新設された犯罪であり、同法が施行された2023年7月13日以降の販売に適用されます。
提供罪の罰則は、提供した相手が特定少数の場合は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、不特定多数の場合は5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金です。
ネットで盗撮動画を販売した場合、不特定多数の者が購入できるため、罰則は5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金と重くなります。
【提供罪が導入される前は?】 提供罪を定めた性的姿態撮影等処罰法は2023年7月13日に施行されましたが、それより前の盗撮動画の販売は、名誉棄損罪で処罰されていました。
動画の販売ページに「女性の同意を得ています」といった説明があれば、「お金のために下着等をとらせる女性」といった印象を閲覧者に与えることになり、その女性の社会的評価を下げたといえるからです。 |
盗撮動画の販売はこうして刑事事件になる
営利目的で盗撮している人の中には、複数のカメラを使って、下着等だけではなく、被害者の顔まで撮影している人がいます。
被害者が盗撮された動画を見た友人や知人が、そのことを被害者に知らせます。自分が盗撮されていることを知ってショックを受けた被害者が、警察に相談に行き捜査が始まります。
「そんなことあるのか?」と思われるかもしれませんが、ウェルネスの弁護士は、実際にこのような流れで刑事事件になったケースを複数受任しています。
盗撮動画の販売者はこうして特定される
盗撮動画の販売者は、ハンドルネームを使ってネット上に画像を上げていますが、警察が捜査すれば身元は容易に特定されます。
まず警察は、動画販売サイトに対して販売者の銀行口座を照会します。その後、銀行に対し口座開設者の身元情報を照会します。この2段階の照会により販売者の氏名・住所・電話番号等の個人情報が特定されます。
盗撮動画の販売者はこうして逮捕される
1.日時と場所の特定
警察は被害者が盗撮された動画を分析し、データの更新日時、背景の特徴、被害者の服装などから、盗撮された日時と場所を割り出します。被害者の供述や事件当時の予定が書かれた手帳、スマートフォン等も捜査します。
2.家宅捜索
警察は販売者の自宅を捜索し、盗撮用カメラや編集用のパソコン、保存用の外付けハードディスクドライブ、SDカード、交通系ICカード、売上金振込口座の通帳・キャッシュカードなどを差し押さえます。
パソコンやハードディスクから被害者が写っている編集前の盗撮動画が発見され、その動画に、盗撮している販売者の顔が写りこんでいることもあります。
3.被疑者の行動調査
被疑者の自宅から押収した交通系ICカードの解析を鉄道会社に依頼し、盗撮画像が撮影された日に、被疑者がどこにいたのかを精査し、被害者の足どりと突き合わせます。
4.逮捕
盗撮しただけでなく、その動画を営利目的で不特定多数に提供している点で通常の盗撮より悪質であり、逮捕される可能性が高くなります。
盗撮動画の販売で逮捕を回避するために
盗撮動画を販売したケースでは、まずは家宅捜索をして各種の証拠を分析する必要があるため、いきなり逮捕される可能性は低いです。
家宅捜索を受けたり、警察から呼び出しがきた場合は、弁護士が警察に意見書を提出し、逮捕の要件(逃亡や証拠隠滅のおそれ)を満たしていないことや、在宅捜査が適切であることを指摘します。ご家族の身元引受書も警察に提出します。
盗撮動画の販売-不起訴のためには示談が必須
不起訴を獲得するためには被害者と示談をすることが必須になります。
たとえ販売サイトから盗撮動画を削除しても、いったんサイトを通じて不特定多数に拡散されてしまったら、拡散先から動画を回収することは不可能です。
被害者は、いつかまた自分の盗撮画像がネット上にアップされるのではないかと、ずっと不安な思いをしています。
少なくとも被害者の盗撮動画を販売して得た売上金については、被害弁償として被害者にお支払いした方がよいでしょう。
販売目的の盗撮は通常の盗撮よりも悪質であるため、示談が成立しなければ、初犯でも公判請求される可能性が高いです。公判請求されると公開法廷で審理され、検察官から懲役刑を請求されます。
盗撮動画の販売-示談以外の弁護活動
自分で盗撮した動画をネットで販売している人は、もともと盗撮をしたいという衝動があり、販売に乗り出す前から盗撮にはまっている人が大半です。
再犯を防止するためには、盗撮機材の処分や家族の監督など二度と再犯をしない環境づくりが必要です。依存症を克服するためには、専門のクリニックに通院して専門家のサポートを受ける必要もあるでしょう。
ウェルネスの弁護士は、盗撮動画の販売事件について複数の取扱い経験があります。お悩みの方はウェルネス(03-5577-3613)にお気軽にご相談ください。
盗撮に強い弁護士が解説!