振り込め詐欺と詐欺グループの弁護士

振り込め詐欺グループの弁護士

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

 

 

詐欺グループの弁護士から電話がきた!

☑ 私は息子さんの弁護士です

☑ 息子さんの先輩から依頼を受けました

☑ 弁護士費用のことは心配しないでください

 

 

息子が振り込め詐欺やオレオレ詐欺で逮捕された後、見知らぬ弁護士からご家族にこのような電話がかかってくることがあります。電話の向こう側の弁護士は詐欺グループの弁護士である可能性が高いです。

 

 

このページでは、刑事事件の経験豊富な弁護士が、詐欺グループの弁護士やその問題点について解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

 

 

詐欺グループの弁護士とは

1.上層部を守るための弁護士

詐欺グループの弁護士はグループの上層部に雇われています。上層部が弁護士を雇う目的は、逮捕されたメンバーが上層部について供述し、捜査の手が上層部に及ぶことを避けるためです。

 

 

要は上層部が自分達を守るために弁護士をつけたのであって、必ずしも逮捕されたメンバーを守るために、弁護士をつけたわけではありません。

 

 

2.詐欺グループの弁護士の動き

アジトが警察に突入され詐欺グループのメンバーがいっせいに逮捕されると、メンバー間の通謀を防ぐため、一つの警察署に全員が収容されるわけではなく、別々の警察署に一人ずつ収容されます。

 

 

詐欺グループの弁護士は、それぞれのメンバーが収容されている警察署に行き、順次メンバーと接見していきます。

 

 

弁護士は、逮捕されたメンバーが捜査機関にどのような供述をしているのかをヒアリングし、すぐさま雇い主である上層部に報告します。

 

 

逮捕されたメンバーには黙秘するよう指示したり、グループにとって都合のよいストーリーを供述させようとします。

 

 

このようにして、詐欺グループの弁護士が逮捕された各メンバーをまとめあげ、同じような供述をさせて、捜査の手が上層部に伸びないようにするのです。

 

詐欺グループの弁護士によくある5つの問題点

「詐欺グループの弁護士に大切な家族の弁護を任せるのはどうなのか?」という問題は当然あるでしょう。それに加えて、刑事手続上は次の5つの問題点があります。

 

1.利益相反のおそれがある

刑事裁判で、リーダー的な立場にあったと認定されてしまうと、他のメンバーよりも刑が重くなってしまいます。逆に、下っ端であると認定されれば、他のメンバーよりも刑が軽くなるでしょう。

 

 

誰しも自分の刑罰ができるだけ軽くなることを望んでいます。そのため「誰がリーダーだったのか」、「どちらが上役だったのか」について共犯者間で争いになることが少なくありません。

 

 

もしメンバーそれぞれに別の弁護士がついていれば、各弁護士は自分の担当しているメンバーのためだけに弁護活動をすることができます。

 

 

ところが、複数のメンバーをまとめて弁護している場合は、あるメンバーの利益になるように活動すれば、他のメンバーにとって不利益になることがあります。

 

 

例えば、Aが「Bがリーダーです」と言っており、Bは「Aがリーダーです」と言っている場合に、AとBを1人の弁護士がどうやって弁護するのかという問題があります。

 

 

このような状況を「利益相反」といいます。詐欺グループの弁護士は複数のメンバーをまとめて弁護することが多く、利益相反になりやすいという問題があります。

 

 

詐欺グループの弁護士もそのことはわかっており、利益相反を避けるため、「どの共犯者もグループ内で同じくらいの立場である」ことを前提として弁護する傾向があります。

 

 

弁護されている側としても、自分の弁護士が他のメンバーの弁護もしていると、他のメンバーに不利な主張をすることをためらいがちです。

 

そのため、本来であれば末端であったにもかかわらず、中堅として他のメンバーと同様の責任を負わされてしまうリスクがあります。

 

2.家族へひんぱんに連絡してくれない

振り込み詐欺やオレオレ詐欺などの特殊詐欺で逮捕されると、裁判所から接見禁止を付けられるため、弁護士以外の方は本人と面会することができません。本人の状況を知るためには、弁護士からの連絡が不可欠です。

 

 

もっとも、詐欺グループの弁護士は、逮捕されたメンバーがどのような状況にあるのかを、家族にひんぱんに報告してくれるわけではありません。

 

 

詐欺グループの弁護士は、お金を払ってくれる上層部のために活動しているのであって、逮捕されたメンバーのために活動しているわけではないからです。

 

 

状況を確認するために、家族の方から弁護士に電話してもなかなかつながらないことが多いようです。家族としても、自分たちが弁護士費用を払っているわけではないので遠慮してしまい、「もっと連絡してください」等とリクエストすることは難しいでしょう。

 

 

たまに家族のもとに弁護士から電話がかかってくるだけで、「自分の息子(夫)がどうなっているのかよくわからない」という状況が続くことになります。

 

3.保釈が難しくなる

保釈が認められるか否かのポイントは証拠隠滅のおそれがあるかどうかです。裁判官に「証拠隠滅のおそれが高い」と判断されると、保釈は認められません。

 

 

振り込め詐欺やオレオレ詐欺のような特殊詐欺のケースでいうと、「証拠隠滅」とは、保釈後に逮捕されたメンバー同士が口裏合わせをしたり、逮捕されたメンバーが逮捕されていない上層部と接触して、捜査状況を知らせること等が想定されます。

 

 

詐欺グループの弁護士は、1人で複数のメンバーを担当していることが多いです。1人の弁護士が複数のメンバーに接見して、他のメンバーがどのような供述をしているのかを教えたり、グループに都合がよいストーリーを供述するようアドバイスします。

 

 

このように「逮捕されたメンバーが1人の弁護士を通じてつながっている」という状況そのものがメンバー間の口裏合わせにつながるものです。

 

 

また、「逮捕された各メンバーとつながっている弁護士が詐欺グループの上層部に雇われている」という状況も、逮捕されたメンバーと上層部との接触につながるものです。

 

 

このような問題があることから、詐欺グループの弁護士が複数のメンバーをまとめて弁護しているケースでは、裁判所によって、証拠隠滅につながりやすいと判断されることが多く、保釈のハードルが上がることは否めません。

 

4.示談交渉を丁寧にしてくれるのか疑問

詐欺を認めていれば、できるだけ刑罰を軽くするため、被害者と示談をすることになります。

 

 

振り込め詐欺やオレオレ詐欺では被害者が複数いるケースが少なくありません。その場合、弁護士が一人一人の被害者やご家族に連絡をとり、示談交渉を進めていきます。

 

 

詐欺グループの弁護士は、上層部からお金をもらってグループを守るために雇われています。また、逮捕された各メンバーに一人の弁護士が専属でついているわけではなく、複数のメンバーを一人の弁護士がまとめて弁護しているのが実情です。

 

 

そのような状況で、弁護士が一人一人の被害者とていねいに示談交渉してくれるのか疑問があります。

 

5.無罪主張をしてくれるのか疑問

振り込め詐欺やオレオレ詐欺は、複数のメンバーが役割分担をして、お互いにフォローしあいながら犯罪を行います。被害者に電話をかけるときも、各メンバーが決められた役割を演じ、チームプレーで被害者をだますことが多いです。

 

 

特殊詐欺にはこのような特徴がありますので、刑事裁判で無罪の主張をするときは、各自の役割について他のメンバーとの間でどのような話をしていたのか(共謀があったのかどうか)が争点になることが多いです。

 

 

詐欺グループの弁護士は、通常、複数のメンバーをまとめて弁護していますので、メンバー間で共謀の状況についての見解が異なっているときに、各メンバーに寄り添った弁護活動が難しくなるという問題点があります。

 

 

ウェルネスの弁護士は詐欺グループとは全く関係がありません。詐欺グループの弁護士から電話がかかってきた場合は、ウェルネス(03-5577-3613)にご相談ください。

 

 

 

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