出稼ぎ型のオレオレ詐欺について弁護士が解説

出稼ぎ型のオレオレ詐欺

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

 

 

出稼ぎ型のオレオレ詐欺が増えている

最近、オレオレ詐欺の受け子が、詐欺グループの指示役から、遠方に出張するよう指示され、出張先で被害者から現金やカードをだましとるケースが増えています。

 

 

例えば、東京を拠点にしている受け子が、福岡に行くよう指示され、そこで受け子をして東京に戻ってくるようなケースです。反対に地方から上京して受け子をするケースもあります。

 

 

出稼ぎ型のオレオレ詐欺と逮捕

出稼ぎ先でオレオレ詐欺の受け子をした場合、刑事手続はどのように進んでいくのでしょうか?

 

次のケースを例としてみていきましょう。

 

①ふだんは東京23区内やその周辺で詐欺の受け子をしている

②指示役に指示されて、1回だけ福岡市内に出張し受け子をした

③被害者が地元の警察に被害届を提出

④東京に戻って受け子を何件かした後、だまされたふり作戦によって詐欺未遂で新宿警察の捜査員に現行犯逮捕された

 

このケースでは、まず現行犯逮捕された詐欺未遂で東京地方裁判所に起訴されます。その後、東京都内の余罪について再逮捕追起訴されます。東京都内の余罪捜査がひととおり終わると、身柄が福岡の警察署に移され、そこで逮捕される可能性が高いです。 

 

 

埼玉、千葉、神奈川など東京の近郊で受け子をしたのであれば、新宿警察がこれらの事件もあわせて捜査することになりますが、福岡のような遠隔地になると新宿警察が捜査する可能性は低いです。

 

 

オレオレ詐欺の捜査の一環として、被害者への事情聴取や、犯行現場の実況見分、引き当たり等を実施する必要がありますが、遠方の警察署ではこれらの捜査を機動的に行うことが難しいためです。

 

 

先に起訴された東京の詐欺(未遂)の裁判で、東京地検の検察官が裁判官に、福岡でも逮捕・起訴することやその時期について説明します。その点についての説明がないと、裁判官も審理のスケジュールを立てられず、裁判の進行に支障が生じるからです。

 

 

出稼ぎ型のオレオレ詐欺と起訴

上のケースで福岡の警察に逮捕されると、その翌日か2日後に、福岡地方検察庁に連行され、検察官に勾留請求されます。その後、福岡地方裁判所で裁判官の勾留質問を受け、福岡の警察署で勾留されます。

 

 

約20日間勾留された後、福岡地方裁判所に起訴されます。既に起訴されている東京都内の詐欺(未遂)事件は東京地裁で審理されます。もし、福岡地裁に起訴された事件がそのまま福岡地裁で審理されると、被告人は東京地裁と福岡地裁を行ったり来たりする必要があります。

 

 

実際は、東京地裁と福岡地裁の2つの裁判所で別々に審理されることはなく、「審判の併合」(刑訴法8条)という手続をとって、どちらかの裁判所に一本化されます。

 

 

設例のようにふだんは東京都内で受け子をしており、1回だけ福岡に出張したのであれば、東京地裁に併合され、東京地裁の裁判官が福岡の事件もまとめて審理します。

 

 

福岡地裁に起訴されてすぐに東京地裁に併合されますので、福岡地裁では一度も公判が開かれません。判決についても東京地裁で全てまとめて一つの判決が言い渡されます。

 

 

出稼ぎ先での逮捕を防ぐために

出稼ぎ先で受け子をしたからといって必ず逮捕されるわけではありません。被疑者や被告人には「言いたくないことは言わない」という黙秘権が保障されています。

 

 

上の設例で、福岡の捜査員が新宿警察署までやってきて出稼ぎ先の事件について取調べをすることもありますが、供述する義務はないのです。

 

 

キャッシュカード受け取り型の受け子については、防犯カメラ等の証拠があるので、黙秘しても逮捕を回避するのは難しいですが、現金受けとり型の受け子については、黙秘することによって逮捕を避けられる余地が十分にあります。

 

 

逮捕され不安な状況のなかで、さらになじみのない遠隔地の警察署で逮捕されると、よりいっそう不安な状況に追いやられてしまいます。出稼ぎ先での逮捕を防ぐためには、刑事事件の経験豊富な弁護士のサポートを受け、適切に黙秘権を行使することが必要です。

 

 

出稼ぎ先で逮捕された場合に弁護士はどうなる?

国選弁護人をつけている場合

国選弁護人は地方裁判所の管轄を単位として選任されますので、遠隔地で逮捕された場合、新たな国選弁護人を選任してもらう必要があります。

 

 

逮捕された警察署の職員に「国選をつけてください。」と言えば、地元の弁護士が新たな国選弁護人として選任されます。

 

 

今までついていた国選弁護人も辞任することなく活動を続けますが、出稼ぎ先の事件については弁護人ではないため活動してくれません。逆に出稼ぎ先の国選弁護人も、出稼ぎ前の事件については弁護人ではないため活動してくれません。

 

 

遠隔地の裁判所に起訴された後、審判の併合により最初に起訴された裁判所に一本化されれば、遠隔地の国選弁護人の業務は終了し、もともとの国選弁護人が遠隔地の事件についても弁護を担当することになります。

 

 

私選弁護人をつけている場合

私選弁護人は国選弁護人と異なり、ご本人が遠隔地で逮捕された場合であっても引き続き弁護活動を継続することができます。

 

 

ただ、長距離の接見が必要となるため、交通費や日当については事前に私選弁護人と協議する必要があるでしょう。もし交通費や日当が予算を超えてしまう場合は、出稼ぎ先の事件については、国選弁護人に任せることになります。

 

 

私選弁護人も必要に応じて、出稼ぎ先の国選弁護人と連絡をとりあいます。審判が併合された後は私選弁護人があわせて担当することになります。

 

 

 

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