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特殊詐欺(闇バイト)のリクルーターとは?不起訴はとれる?
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
特殊詐欺のリクルーターとは?
1.リクルーターの役割は?
特殊詐欺のリクルーターとは、オレオレ詐欺や振り込め詐欺の受け子になるよう第三者を勧誘し、詐欺グループに引きこむ人間のことです。受け子とは、特殊詐欺の被害者と接触しお金やキャッシュカードをだましとる役割の者です。
受け子は詐欺を完遂するためには不可欠の存在ですが、逮捕されるリスクが高いため、なかなか引き受ける人がいません。そこで、リクルーターが受け子になりそうな人を勧誘して、詐欺グループに引きこみます。
2.リクルーターの勧誘方法は?
リクルーターはX(旧Twitter)や求人サイトに「即金」、「ホワイト案件」等と書き込み不特定多数の人を勧誘します。知人や後輩に直接声をかけて勧誘することもあります。
リクルーターは興味をもった人にテレグラムやシグナルをダウンロードさせ、それらのアプリを使って仕事のやり方を説明します。また「荷物を受けとるだけの仕事なんで問題ない。」等と言って安心させます。
リクルーターは勧誘相手に運転免許証等の画像を送らせます。後に相手から「やめたい」と言われたら、「家族がどうなってもいいんだな?」等と脅して受け子を続けさせることもあります。
3.リクルーターが勧誘した後はどうなる?
リクルーターは、勧誘した相手が受け子になれば、その受け子と詐欺グループの指示役との間に入って、連絡役を務めることが多いです。
また、受け子が詐欺に成功すると、だましとった金額の一部を詐欺グループから報酬として受けとることが多いです。
特殊詐欺のリクルーターと共謀共同正犯
特殊詐欺のリクルーターは、かけ子のように自ら被害者をだましているわけではありませんし、受け子のように被害者から金品を受けとっているわけでもありません。それでも、詐欺で逮捕・起訴され実刑になることが多いです。
どうして詐欺に直接関与していないリクルーターに詐欺罪が成立するのでしょうか?ポイントになるのは「共謀共同正犯」(きょうぼうきょうどうせいはん)という考え方です。
1.共同共謀正犯とは?
本人が逮リクルーターが逮捕されると、詐欺の「共謀共同正犯」として起訴されることが多いです。「犯人」と聞いて皆さんがイメージするのは、「自ら犯罪行為をした人」だと思います。
殺人罪の犯人であれば「人を殺した人」、傷害罪の犯人であれば「人をけがさせた人」をイメージするでしょう。ところが、自ら犯罪行為をしていないのに、実行犯と同じように扱われる者がいます。これが共同共謀正犯です。
共謀共同正犯は、自ら犯罪行為を実行していないものの、実行犯と犯罪について打ち合わせ(謀議)をし、お互いに利用しあって特定の犯罪を自らの犯罪として実現します。そのため、実行犯と同程度の責任を負う「正犯」として扱われます。
2.リクルーターも共謀共同正犯になる
特殊詐欺のリクルーターは、電話で被害者をだましたり、被害者の家に行って金品をだましとったりしているわけではありません。
もっとも、詐欺グループに受け子を紹介し、その後も受け子や指示役と連絡をとりあって、チームプレーで詐欺を実現しています。そのため、共謀共同正犯とされるのです。
逮捕状や起訴状にも、「共犯者と共謀して」という文言が入ります。「共謀」という言葉が入っていれば、共謀共同正犯と見なされています。共謀共同正犯の法定刑は実行犯と同じです。詐欺の場合は10年以下の懲役です。
特殊詐欺のリクルーター-否認して不起訴を狙うケース
☑ 先輩から人を紹介してほしいと言われて紹介しただ
☑ まさか特殊詐欺の受け子をしているとは思わなかった
☑ もし紹介した人が受け子をするとわかっていたら絶対紹介しなかった
特殊詐欺のリクルーターとして逮捕された人の中には、自分が詐欺グループに人を紹介していることを知らずに、先輩や友人から頼まれて、人助けのつもりで動いてしまった人もいます。このようなケースでは、詐欺の故意も共謀もないため、詐欺罪は成立しません。
もっとも、逮捕された後に、「詐欺グループかもしれないと思っていました。」等という内容の供述調書をとられてしまうと、裁判になった後に、「詐欺グループとは知りませんでした。」といくら言っても、裁判官は信用してくれません。
弁護士が速やかに本人と接見し、黙秘権について説明し、不利な調書をとらせないようにする必要があります。
特殊詐欺のリクルーターと詐欺ほう助
1.リクルーターが詐欺ほう助になるケース
☑ 紹介先が詐欺グループだとわかっていた
☑ 先輩に頼まれて知人を紹介しただけで報酬はもらっていない
☑ 紹介後は先輩とも知人とも連絡をとっていない
このようなケースでは、詐欺の共謀共同正犯ではなく、ほう助犯になる可能性が高いです。
共謀共同正犯もほう助犯も、「自ら犯罪行為を実行していない」という点では共通しています。違いは、共謀共同正犯が「正犯」として実行犯と同様に扱われるのに対し、ほう助犯は「従犯」として補助者にとどまることです。
法定刑についても、共謀共同正犯は実行犯と同じですが、ほう助犯は正犯の半分になります。
法定刑 | |
詐欺の共謀共同正犯 | 10年以下の懲役 |
詐欺のほう助犯 | 5年以下の懲役 |
起訴されてもほう助犯と判断されれば、刑が軽くなるので執行猶予を獲得できる可能性が高まります。
2.報酬の有無がポイント
詐欺の共謀共同正犯とほう助犯を分けるポイントは報酬の有無です。報酬をもらっていなければ、たとえ詐欺で逮捕されても、起訴の時点で詐欺ほう助となる余地が十分にあります。
リクルーターと紹介先は友人同士とか先輩・後輩の間柄だったりすることが多いです。そのような間柄の人からお金をもらったからといって、それがリクルートの報酬とは限りません。
「たぶん報酬だろう。」と早合点して、捜査段階で「報酬をもらいました。」等と自白調書をとられてしまうと取り返しのつかないことになりかねません。逮捕されたら一刻も早く弁護士に相談すべきです。
⇒逮捕されたらすぐに弁護士を呼ぼう!弁護士費用や呼び方を解説
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