特殊詐欺の質問に弁護士が回答します-ウェルネス法律事務所

特殊詐欺の質問に弁護士が回答します

 

このページはウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

Q1-1:息子が特殊詐欺で逮捕されました。警察の話では、受け子として高齢者から500万円をだまし取ったとのことです。ただ、息子は「指示役から書類を受け取りに行くよう言われただけで、まさか詐欺とは思わなかった。」と言っているようです。裁判で無罪になることはありますか?

詐欺をしているという認識(故意)がなければ、詐欺罪は成立しませんので無罪になります。しかし、本件のようなケースで、故意がないとして無罪になることはほとんどありません。

 

 

Q1-2:どうしてですか?

受け子が逮捕されたケースでは、一般的に以下の事情が認められます。

 

・受け子がテレグラム等の秘匿性の高いアプリで指示役とやりとりしている

・受け子が事件当日、指示役とひんぱんにやりとりしている

・事件の直前に、指示役から受け取り場所を指定される

・指示役から偽名を名乗るように指示される

・相手が高齢者である

・相手とやりとりしている間、指示役と電話をつないだままにしておくよう言われる

・受け取った紙袋を駅のロッカーに入れるよう指示される

・報酬が通常よりも格段に高い

 

 

裁判官は、これらの事実に基づき、詐欺であることをわかっていたか、少なくとも詐欺かもしれないと認識していた(=未必の故意があった)と認定します。

故意とは?確定的故意と未必の故意について弁護士が解説

 

 

Q1-3:裁判で「詐欺であるとはわからなかった。」と主張することは得策ではないということですか?

裁判で「詐欺であるとは知らなかった。」と主張しても通らないことが多いです。そのような主張を続けた場合、「反省していない」として刑がより重くなる可能性が高まります。

 

 

また、否認した場合、被告人質問が終わるまで保釈が認められない可能性が高いです。そのため、ご質問のような主張を続けるのは必ずしも得策とはいえません。

 

 

もっとも、これは一般論です。個別の事情によっては否認すべき場合もあるでしょう。ウェルネスでも受け子として逮捕されたケースで、嫌疑不十分による不起訴を獲得したことがあります。まずは刑事事件の経験豊富な弁護士に相談してみてください。

 

 

Q1-4:もし、否認を続けて有罪になった場合、息子は実刑判決となるのでしょうか?ちなみに息子に前科はありません。

一被害額が500万円と多額ですので、有罪になれば初犯であっても実刑になる可能性が高いです。

 

 

Q1-5:息子が執行猶予となる見込みはないのでしょうか?

被害者との間で示談が成立すれば執行猶予の見込みが十分にあります。

 

 

Q1-6:示談をするにあたって注意点は何かありますか?

示談書に「許す」という宥恕文言(ゆうじょもんごん)があれば、執行猶予の可能性が高まりますので、入れてもらえるよう交渉すべきです。

 

 

Q2-1:被害金額の10分の1程度しか示談金を準備できない場合、やはり示談は無理でしょうか?

共犯者として逮捕・勾留されている人がいれば、共同で示談交渉をすることが考えられます。弁護士間で話し合って窓口となる弁護士を決め、示談金は共犯者それぞれが負担することになります。

 

 

Q2-2:共犯者と共同で示談する場合、例えば、こちらが示談金として100万円を払ったのに、共犯者が10万円しか支払っていない場合でも、示談の効果は同じでしょうか。

裁判官は示談したことだけではなく、それぞれの被告人が支払った金額も考慮した上で、刑を決めます。そのため、他の事情が同じであれば、息子さんの方が刑が軽くなることが予想されます。

 

 

Q3:息子が詐欺未遂で逮捕・起訴されました。受け子として高齢者からお金をだまし取ろうとしたところ、あらかじめ張り込んでいた警察に逮捕されたとのことです。息子は容疑を認めています。息子の国選弁護人から、「特殊詐欺の場合、初犯でも実刑になる」と言われました。執行猶予はあきらめるしかないのでしょうか?

起訴された事件が詐欺未遂1件のみであれば、被害者との間で示談が成立すれば執行猶予の可能性が高くなりますし、示談が成立しなくても執行猶予の余地は十分にあります。

 

 

Q4-1:特殊詐欺で保釈は認められないと聞いたのですが、本当ですか?

いいえ、そんなことはありません。ほとんどのケースで、遅くとも被告人質問終了後には保釈が認められます。最後まで保釈が認められないことはまずありません。

 

 

Q4-2:特殊詐欺の保釈金はいくらぐらいですか?

保釈金は被告人自身の経済状況によって変わってくるので一概にはいえませんが、被告人に資産がほとんどない場合は200万円になることが多いです。勾留を伴う追起訴がある場合は、追起訴1件あたり50万円ほど加算されます。

 

 

Q5-1:息子が特殊詐欺で逮捕されました。今後、警察から私たち親に連絡が入ることはありますか?

警察が親に連絡し、「息子さんの話を聞かせてもらいたい」と言ってくることが多いです。聞かれる内容は主として息子さんの生活状況です。特に逮捕直前の暮らしぶりや、お金の使い方に変化がなかったかについて聞かれます。

 

 

事情聴取の内容を取調官が供述調書にまとめ、署名・指印するよう言われます。

 

 

Q5-2:警察から事情聴取を求められた場合はどのように対応すればよいでしょうか?

事情聴取に応じてもらって構いませんが、供述調書に署名・指印する前に内容をよく確認するようにしてください。調書に事実と異なるところがあれば、取調官に訂正を求めてください。

 

 

通常訂正してくれますが、もし訂正してくれない場合は、署名・指印する必要はありません。息子さんが黙秘をしているときは、「息子には事件について素直に話して反省してもらいたい。」といった内容の供述調書が作成され、後に、息子さんに黙秘を断念させるための材料として利用されることがあります。

 

 

また、本人が黙秘しているときに、親が不用意に発言して、捜査機関に何らかの手がかりを与えてしまうのは得策ではありません。そのため、息子さんが黙秘をしているときは、事情聴取の要請に応じるべきではありません。法律上も応じる義務はありません。

 

 

ただ、一度要請を断っても何度も連絡がくることが少なくありません。具体的な対応については弁護士にお尋ねください。

 

 

Q5-3:私たちは大阪に住んでいますが、息子は東京の警察署に逮捕されています。事情聴取を受ける場合は東京の警察署まで行かなくてはいけないのでしょうか?今仕事が忙しくてどうしても東京まで行く時間がとれそうにもありません。

東京の警察署まで来るように言われることが多いですが、日程については柔軟に対応してもらえます。また、取調官に大阪まで来てもらうことも場合によっては可能です。一度弁護士に相談してみてください。

 

 

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