歯科医院での横領について弁護士が解説

歯科医院での横領

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

 

歯科医院での横領の手口

歯科医院での横領は、患者から医療費として支払われたお金の管理を任されている職員が銀行に入金する前に着服する手口によって行われます。

 

 

点数計算等がある保険診療よりもバレにくい自由診療で行われるのが通常です。

 

 

歯科医院での横領はこうしてバレる

歯科医院での横領は以下の流れで発覚することが多いです。

 

 

まず、患者から支払われている金額と歯科医院の口座に入金されている金額がひんぱんに違っていることが医院に判明します。

 

 

医院側が職員のシフト表を確認すると、特定の職員が出勤しているときだけ金額の差異が出ていることに気づきます。

 

 

その後、問題の職員を呼び出してヒアリングし自供させます。密かに防犯カメラを設置して、横領している決定的な場面を証拠として残しているケースもあります。

 

 

歯科医院での横領は何罪?

歯科医院で金銭管理を任されていた職員が横領すると、業務上横領罪が成立します。

 

 

業務上横領罪の罰則は10年以下の懲役です。

 

 

【刑法253条】

業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

 

 

業務上横領罪には罰金刑はありませんので、初犯であっても起訴されれば公開の法廷で審理され、検察官から懲役刑を請求されることになります。

 

 

歯科医院での横領の特徴

1.若い女性が多い

歯科医院での横領は歯科助手と事務を兼任している若い女性職員によって行われることが多いです。

 

 

横領した金銭でホストクラブに通ったり男性へ貢いでいることが多く、発覚した時点で着服金を使い果たしているケースがほとんどです。

 

 

2.歯科医院側にも弁護士がつくことが多い

大手の歯科医院の場合、顧問弁護士が告訴などの刑事手続や損害賠償請求などの民事手続を代理することが多いです。

 

 

顧問弁護士がいない中小規模の歯科医院であっても、責任者である院長は日々の診療で忙しいため、弁護士を雇うことが多いです。

 

 

3.親に請求がいくことが多い

歯科医院での横領は、若い女性職員によってなされることが多く、ほとんどのケースで着服金は費消され残っていません。

 

 

そのため、歯科医院は、加害者本人ではなく、親に対して返金を求めてくることが多いです。

 

 

4.仮差押えされる可能性は低い

横領の被害者側に弁護士が入ると、裁判所に対して、加害者の預金や不動産への仮差押えを申し立てることが多いです。

 

 

もっとも、上で述べた通り、歯科医院での横領は若い女性職員によってされることが多く、資産がないことは医院側もわかっているため、仮差押えを申し立てるケースは少ないです。

業務上横領と仮差押え

 

 

歯科医院での横領-親に法的責任はあるか?

歯科医院での横領事件では、横領した本人は若い女性で資産がないことが多いため、医院の弁護士は、本人の親にコンタクトをとって損害賠償を請求してくることが多いです。

 

 

もっとも、たとえ親であっても、歯科医院と身元保証契約を締結していない限り、法的な責任は負いません。

 

 

身元保証契約とは本人が勤務中に不祥事を起こし雇用主に損害を与えた場合に身元保証人にも損害賠償債務を負わせる契約です。

 

 

親が雇用主と身元保証契約を締結している場合でも、有効期間は最長5年に制限されています(期間を定めていない場合は3年)。

業務上横領と身元保証人-どこまで責任を負うのか?

 

 

歯科医院で横領した場合の対処法

1.書面に署名・押印しない

「このままだと娘さんが逮捕・起訴され刑務所に入ることになる」

「実名報道され再就職や結婚もできなくなる」

 

 

歯科医院の弁護士からこのように言われた親は、大きなショックを受けることでしょう。

 

 

そのような状況で、弁護士から書面を見せられ、署名・押印を迫られることがあります。書面には横領したとされる金額や親が連帯保証する旨の文言が記載されています。

 

 

もっとも、歯科医院での横領事件では、医院によって十分な調査が尽くされておらず、実際の横領金額よりも多額の請求をされることが少なくありません。慰謝料や調査費用、弁護士費用として数百万円上乗せされていることもあります。

 

 

いったん書面に署名・押印してしまうと、後日「あのときは動揺していたので無効」と主張しても通らない可能性が高いです。

 

 

そのため、その場で署名・押印はせずに、いったん持ち帰って弁護士に相談してください。この点については、親だけではなく本人も同様です。

 

 

2.弁護士に依頼する

親としては、娘が歯科医院に多大な損害を与えたという負い目があるため、相手方の請求について疑問を感じても、歯科医院の弁護士に対して反論するのは難しいです。

 

 

そのため、こちらも弁護士をつけて交渉した方がよいでしょう。弁護士が受任すればその後の交渉は全て弁護士が行うため、歯科医院側の弁護士から娘や親に直接連絡が入ることもなくなります。

 

 

弁護士が適正な金額で示談がまとまるよう歯科医院の弁護士と交渉します。

 

 

3.示談をまとめるためには親も協力すべき

身元保証していない限り、親が子の横領について法的責任を負うことはありません。

 

 

もっとも、歯科医院での横領事件では、横領した本人が独力で弁済するだけの資産を持っていないことが多いため、示談を成立させるためには親としても弁済に協力すべきでしょう。

 

 

具体的には、以下の方法が考えられます。

 

 

①親が一括で歯科医院に返済し娘から分割で返してもらう

②娘の連帯保証人なる

 

 

ウェルネスでは歯科医院での横領について、示談で逮捕・起訴を阻止した多くの実績があります。歯科医院での横領でお悩みの方はお気軽にウェルネス(03-5577-3613)の弁護士にご相談ください。

 

 

 

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