- トップ
- > 不同意性交等罪に強い弁護士-要件・証拠・立証責任について
- > 不同意性交等の不起訴率は?不起訴になる事例や方法を弁護士が解説
不同意性交等の不起訴率は?不起訴になる事例や方法を弁護士が解説
不同意性交等で逮捕された場合は、釈放させることと並んで不起訴を獲得することが弁護活動の大きな目標になります。
不起訴にも種類があります。不同意性交等の不起訴でよく問題となるのは、起訴猶予による不起訴と嫌疑不十分による不起訴です。
このページでは起訴猶予や嫌疑不十分ということばの意味についてわかりやすく解説しました。その上で不同意性交等で起訴猶予や嫌疑不十分で不起訴となる事例について説明しています。
各事例ごとに不起訴を獲得するための方法についても解説していますので参考にしてみてください。
このページはウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎が作成しています。
目次
不同意性交等罪の不起訴率は?
1.そもそも不起訴とは?
不起訴とは被疑者を刑事裁判にかけないこととする処分です。逆に刑事裁判にかけることを起訴といいます。被疑者を起訴するか不起訴にするかは検察官が決めます。
【刑事訴訟法】
|
不起訴になれば刑事裁判にかけられないので、処罰されることはありませんし、前科がつくこともありません。不起訴になった時点で刑事手続は終了しますので、起訴された場合に比べて早期に刑事手続から解放されます。
不同意性交等の被疑者になってしまった場合は、不起訴を求めて活動することになります。不起訴が弁護活動のゴールになるとお考えください。
2.不同意性交等罪の不起訴率
不同意性交等罪の不起訴率は67%です。
根拠…2023年版検察統計年報:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員
不同意性交等罪には罰金刑はありませんので、起訴されたら簡易な略式裁判ではなく、公開法廷で行われる正式裁判で審理され、検察官から拘禁刑を請求されます。
不同意性交等罪で不起訴になる事例は?
不同意性交等で不起訴になる事例としてよくあるのが、起訴猶予で不起訴になる事例と嫌疑不十分で不起訴になる事例です。
不同意性交等の容疑を認めている場合は、起訴猶予での不起訴を求めて活動します。不同意性交等の容疑を否認している場合は、嫌疑不十分での不起訴を求めて活動します。以下それぞれの事例について詳しくみていきましょう。
不同意性交等-起訴猶予で不起訴になる事例
1.起訴猶予とは?
起訴猶予とは、起訴して有罪に持ち込めるだけの十分な証拠があるものの、被疑者に有利な事情をふまえ、検察官の裁量で不起訴にする処分です。起訴猶予による不起訴は、刑事訴訟法248条に規定されています。
【刑事訴訟法】
|
2.不同意性交等で起訴猶予になる確率は?
不同意性交等で不起訴になった事件のうち、起訴猶予による不起訴が占める割合は30%です。
根拠…2023年版検察統計年報:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員
3.不同意性交等で起訴猶予になるためには示談が必要
不同意性交等で起訴猶予になるためには、被害者との間で示談が成立していることが必要です。
刑訴法248条の条文には、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況」とさまざまな事情が列挙されていますが、実際には示談が成立していなければ、起訴猶予で不起訴になることは期待できません。
不同意性交等の容疑を認める場合は、起訴猶予で不起訴になることが獲得目標になります。そして、起訴猶予を獲得するためには被害者との間で示談を成立させることが必要となるのです。
不同意性交等-嫌疑不十分で不起訴になる事例
1.嫌疑不十分とは?
検察官は、起訴して有罪に持ち込めるだけの証拠がなければ、起訴することをあきらめて不起訴にするほかありません。これが嫌疑不十分による不起訴です。
嫌疑不十分による不起訴は検察官が有罪を立証しきれないと判断したときに出されるものですので、示談とは関係ありません。嫌疑不十分で不起訴になるケースでは、被疑者が容疑を否認しているため、示談にはなじまないケースが多いです。
2.不同意性交等で嫌疑不十分になる確率は?
不同意性交等で不起訴になった事件のうち、嫌疑不十分による不起訴が占める割合は68%です。
根拠…2023年版検察統計年報:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員
3.不同意性交等で嫌疑不十分になる確率が高いのはどうして?
意外に思われるかもしれませんが、不同意性交等事件では、示談が成立して起訴猶予で不起訴になるケースよりも、容疑を否認して嫌疑不十分で不起訴になるケースの方が2倍以上多くなっています。
不同意性交等事件は人目につかない場所で発生することが多いです。
痴漢や盗撮のように、周囲に人がたくさんいたり、防犯カメラが設置されている場所で発生することはほとんどありません。そのため、不同意性交等事件には「客観的な証拠が少ない」という特質があります。
客観的な証拠が少なければ、えん罪を回避するために、検察官としても起訴に対して慎重にならざるを得ません。そのため、嫌疑不十分での不起訴率が高くなっていると考えられます。
不同意性交等は不起訴を目指すべき!その理由は?
1.起訴された場合の獲得目標
不同意性交等罪で起訴された場合、容疑を否認している場合は無罪、認めている場合は執行猶予を目指して活動することになります。
2.無罪になる確率は?
不同意性交等罪で起訴されても、無罪判決が出れば晴れて自由の身になりますが、司法統計上、刑事裁判で無罪となる確率は0.1%と非常に低いです。
3.執行猶予も容易ではない
不同意性交等罪の刑罰の下限は5年の拘禁刑ですが、執行猶予がつけられる下限の刑は3年の拘禁刑です。そうすると、不同意性交等罪で起訴されると、例外なく執行猶予をつけられないということになりそうです。
例外として、「酌量減刑」されれば刑の下限が半分の2年6月(5年÷2)になり、執行猶予を付けることができます。
【刑法】
|
もっとも、「許す」といった宥恕文言付きの示談をしなければ酌量減刑が認められることはまずありません。
4.不起訴を目指すべき
不同意性交等罪で起訴されると、無罪や執行猶予の獲得は決して容易ではありません。一方、不同意性交等罪の不起訴率は70%近くにもなります。
根拠…2023年版検察統計年報:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員
これらの事実から、不同意性交等罪の特徴として、「不起訴になる見込みはかなりあるが、起訴されれば実刑判決の可能性が高い」ということがわかります。
起訴されたらたとえ無罪や執行猶予になっても、被告人として長期にわたり刑事手続にしばられます。また、保釈が許可されない限り身柄拘束が続きます。
これに対して、不起訴になればその時点で刑事手続は終了します。釈放され前科もつきません。そのため、起訴されてから執行猶予や無罪を目指すのではなく、不起訴を目指すのが合理的といえます。
不同意性交等で不起訴を獲得するために弁護士がすべきこと
1.起訴猶予で不起訴になるために弁護士がすべきこと
不同意性交等を認めている場合、起訴猶予による不起訴を獲得するためには被害者との間で示談を成立させることが必須です。
捜査機関は不同意性交等の加害者に被害者の名前や電話番号を教えてくれませんので、示談交渉は弁護士を通じて行うことになります。
不同意性交等の示談金の相場は100万円から300万円です。予算に限りがある場合、十分な示談金を準備できるよう、弁護士費用が安い法律事務所に依頼するのがポイントです。
不起訴を獲得するためには、最長20日の勾留期間内に示談をまとめて、検察官に示談書の写しを提出する必要があります。
いったん起訴されたらその後に示談が成立しても、さかのぼって不起訴にはなりません。不起訴を獲得するためには、一刻も早く刑事事件の経験豊富な弁護士に依頼すべきです。
⇒逮捕されたらすぐに弁護士を呼ぼう!弁護士費用や呼び方を解説
2.嫌疑不十分で不起訴になるために弁護士がすべきこと
不同意性交等の容疑を否認している場合は、取調官から「そんなこと言っても誰も信じないよ。」等とプレッシャーをかけられます。
供述調書が作成されると、不利な内容であったとしても撤回することはできません。そのため、取調官の圧力に負けて、「無理やり性交しました」といった自白調書をとられると、「これで裁判に勝てる」と検察官に判断され、起訴される可能性が高くなります。
裁判官も調書に基づき事実を認定するため、自白調書をとられると無罪の獲得が難しくなります。否認して有罪になれば最短でも5年の拘禁刑となります。
自白調書をとられないようにするため、弁護士が逮捕直後に本人と接見し、黙秘権や署名押印の拒否権といった重要な権利を説明した上で、取調べにどのように対応すればよいかをアドバイスします。
⇒供述調書の署名押印を拒否できる?メリットや拒否の仕方について
不同意性交等に強い弁護士が解説!