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業務上横領と仮差押え
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
仮差押えとは
☑ 突然預金が引き出せなくなった
☑ 裁判所から仮差押えの通知がきた
☑ 自宅の登記をとったら「仮差押」と書いてあった
業務上横領が会社に発覚した後、このようなケースが発生したら、会社の申立てにより、仮差押えされている可能性が高いです。「仮差押え」とは、ひとことで言うと「強制執行の予約」です。
将来、債権者が債務者の財産に対して強制執行することができるように、民事訴訟になる前に、裁判所の決定により、債務者の財産の処分を制限する手続です。債権者は、債務者に対して民事訴訟を提起し、勝訴判決が確定すれば、債務者の財産に対して強制執行することができます。
もっとも、訴訟提起してから判決が確定するまで、半年から1年程度かかります。業務上横領のケースではそれ以上かかることも少なくありません。
この間に、債務者が自分の財産を隠したり、第三者に売却してしまえば、たとえ勝訴判決が確定しても、強制執行により債権を回収できなくなってしまいます。
債務者の財産を仮に差し押さえておけば、債務者は自由に処分することができなくなり、債権者は、勝訴判決が確定した後に、差押えをすることができます。
仮差押えの要件
仮差押えが認められるためには、①債権者が債務者に対して金銭債権(被保全債権といいます)を持っており、②その債権を保全する必要がなければいけません。
【被保全債権】
業務上横領のケースでは、被保全債権は、「不法行為に基づく損害賠償請求権」になります。会社が仮差押えの申立てをする際、この被保全債権が存在することを裁判所に疎明しなければいけません。
「疎明」とは、「一応確からしい」といえるだけの証拠を示すことです。民事訴訟では、「まず確かである」といえるだけの証拠を示して「証明」することが求められますが、仮差押えは、民事訴訟の準備段階ですから、そこまでの立証は求められていません。
業務上横領のケースでも、会社側が「債務者が着服したことが一応確からしい」といえるだけの証拠を提出する必要があります。
【保全の必要性】
保全の必要性とは、あらかじめ財産を保全しておかないと、隠匿されたり、譲渡されたりして、民事訴訟に勝っても強制執行できなくなるおそれがあることです。
業務上横領のケースでは、横領したお金を全額弁済できるだけの十分な資産を持っている方はほとんどいないため、保全の必要性は認められやすいです。
仮差押えの特徴
①債務者には秘密にされる
仮差押えは債務者の財産処分を制限する手続です。もし債権者が仮差押の申し立てをしたことが債務者に知られると、債務者が資産を隠匿したり譲渡するおそれがあります。
そのため、仮差押えの決定が出るまで債務者に知られないよう、裁判所から債務者に連絡がいくことはありません。裁判所は、債権者側の言い分のみに基づいて、仮差押えの可否を判断します。
②手続がスピーディーに進む
仮差押えを申し立ててから、決定までに時間がかかれば、その間に、債務者が財産を隠してしまうおそれが高くなります。そのため、仮差押えを申し立ててから、早ければ数日で決定が出ます。
これに対して、刑事事件の捜査は時間をかけて慎重に行われます。仮差押えされて1年以上たってから、業務上横領で逮捕・起訴されることも少なくありません。
③債権者も担保金を納める
仮差押えは、債権者側の言い分のみに基づいて行われ、証明の程度も疎明で足りることから、その後の訴訟において、債権者の言い分が間違っており、裁判に負けることもあり得ます。この場合、債務者としては、理不尽に財産の処分を制限されたことになるため、債権者に対して損害賠償を請求する余地があります。
このような場合に債務者への損害賠償金にあてるため、債権者は、裁判所から担保金の納付を求められます。この担保金を供託所に納付してはじめて仮差押えが可能になるのです。
預金の仮差押え
債務者の預金を仮差押えすると、債務者は、債権者が請求している金額の範囲で、預金を引き出すことができなくなります。
【具体例①】
・債権者が請求している金額(請求債権)…100万円
・債務者の預金口座の残高…200万円
このケースでは、債務者の預金残高のうち100万円は銀行が管理する口座に移され、債務者はこれを引き出すことができなくなります。
【具体例②】
・債権者が請求している金額(請求債権)…100万円
・債務者の預金口座の残高…50万円
このケースでは、請求債権が預金口座の残高を上回っていますので、債務者が全額引き出すことができなくなります。なお、債務者が、仮差押え命令が出た後に預け入れたり振り込まれた金銭については、全額自由に引き出すことができます。
不動産の仮差押え
不動産が仮差押えされると、登記に「仮差押」と記載されます。不動産は、仮差押えされていても、売買することができます。
ただ、その後に勝訴判決が確定すれば、不動産の所有者が変わっていても、債権者は、差押えをすることができます。そのため、仮差押えされた状態のままで不動産を買い受ける人はいません。結果的に不動産の処分が制限されることになります。
業務上横領で仮差押えされたらどうすべきか?
仮差押えは、民事訴訟の準備段階ですので、放置していれば、民事訴訟を起こされてしまいます。
また、仮差押えは、債権回収の手段であって、刑事事件の手続ではありません。そのため、会社から警察に告訴されていれば、仮差押えとは別個に、取調べ、逮捕、刑事裁判などの刑事手続が進行していきます。
仮差押えは、弁護士のサポートを受けずに、会社が独力で裁判所に申し立てることは困難です。そのため、仮差押えされたのであれば、会社は弁護士をつけているはずです。
同様に、刑事告訴についても、弁護士のサポートを受けずに、会社が単独で告訴状を作成するのは困難です。仮差押えの申立ての際、既に弁護士を選任している以上、告訴についても同じ弁護士が担当することが多いです。
会社と示談をして、仮差押えを取り下げてもらい、刑事事件についても告訴を取り下げてもらえれば、民事事件も刑事事件も一挙に解決することができます。
業務上横領と仮差押え-ウェルネスの対応
ウェルネスの弁護士は、業務上横領で仮差押えされたケースを多数取り扱ってきました。お困りの方は弁護士にご相談ください。
なお、ウェルネスは刑事事件専門の法律事務所ですので、貸金トラブル、売掛金回収トラブルなど、純粋な民事事件で仮差押えを受けたケースについては対応しておりません。ご理解のほどお願いいたします。
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