業務上横領のご質問

業務上横領のご質問

 

このページはウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

Q1:業務上横領罪の時効は何年ですか?

7年です(刑事訴訟法250条2項4号、刑法253条)。

 

 

Q2:時効期間が過ぎると責任を追及されることはなくなりますか?

刑事責任を追及されることはありませんが、民事上の損害賠償責任を追及される可能性があります。

 

(解説)

一般社員が横領行為をした場合、民事上は不法行為となります(民法709条)。不法行為の時効期間は3年です。この3年のカウントを始めるスタート地点は、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」です。したがって、「10年前の横領行為が1か月前に発覚した」というような場合は、刑事責任を追及されることはありませんが、民事上の損害賠償責任を追及される可能性が高いです。

 

 

Q3:会社のお金を横領してしまいました。金額は約5000万円です。会社に返済する意思はありますが、どう考えても一括で返済することはできません。分割払いで示談なんてできないですよね?

会社側との交渉により分割払いで示談できる場合が多いです。業務上横領罪の被害者(会社)は、横領された金銭の回収を最優先に考えます。刑事事件として告訴し、その結果、加害者が処罰されても、それでお金を回収できるわけではありません。

 

そのため、一括返済できない場合でも、親族に連帯保証人になってもらったり、安定した就職先を確保することによって、分割払いで示談できる場合が少なくありません。むしろ、被害額が数千万円に及ぶ業務上横領事件においては、弁済は長期の分割払いとなるのが通常です。

 

 

Q4:業務上横領罪を犯した場合、自己破産すれば、会社に対する賠償責任はなくなるのでしょうか?

自己破産しても会社に対する賠償責任はなくなりません。法律上、「故意で加えた不法行為」に基づく損害賠償責任は、破産しても免除されないこととされていますが(破産法253条1項2号)、横領行為はまさに「故意で加えた不法行為」に該当するからです。

 

 

Q5-1:私は業務上横領罪を犯しましたが、この度、分割返済していくことで会社側と示談がまとまりました。ただ一つ気がかりなことがあります。私は複数の金融機関に借金をしていますが、会社に分割弁済をしていくと、金融機関への返済に回すお金が残りません。この場合、自己破産をすることにより、金融機関に対する借金をゼロにすることはできますか?

かなり難しいでしょう。自己破産をすれば誰でも借金が免除されるわけではありません。複数の債権者(貸し手)がいる場合、破産手続きにおいては、それらの債権者を平等に扱うことが要請されます。このケースでは、会社にのみ弁済を続け、金融機関には返済しないということですから、債権者平等の要請に反しており、借金の免除(法律用語で「免責」といいます)が許可されない可能性が高いです。

 

 

Q5-2:このケースで、破産は困難だとしても、金融機関に対する借金を少しでも減額する方法はありませんか?

任意整理の方法によることが考えられます。「任意整理」とは破産とは異なり、裁判所の手続きを利用することなく、債権者(貸し手)と直接交渉することにより、借金や利息の減額を実現することです。詳細は債務整理に詳しい弁護士か最寄りの法テラスに相談するとよいでしょう。もちろんウェルネスにご相談いただいても結構です。

 

 

Q5-3:このケースで、懲戒解雇になるのはやむを得ないですよね?

必ずしもそうとはいえません。確かに、業務上横領の事案では、告訴されるか否かを問わず、懲戒解雇となる場合が少なくありません。しかし、分割払いで返済する場合は、会社としても、本人の支払い能力に関心をもたざるを得ません。本人を懲戒解雇にすれば、再就職が困難となり、ひいては分割での支払いが困難になることも考えられます。そのため、交渉によっては、懲戒解雇ではなく、普通解雇や自主退職扱いとなる余地もあります。

 

 

Q6:会社のお金を横領してしまいました。先月、会社に発覚し社内調査を受けましたが、その際、私が横領した金額は1000万円だと言われました。私の記憶では500万円ですが、その時は反論できるような雰囲気ではありませんでした。この会社は金銭管理がルーズなところがあり、私は他にも横領している社員がいるのではと思っています。ただ、会社からは、今週末までに1000万円を弁済するように言われています。今後の処分等は弁済後に話をすると言われていますこの件で弁護士に依頼しようと思っていますが、支払期日も迫っているので、まず1000万円を支払ってから弁護士に依頼した方がよいでしょうか?

支払う前に弁護士に依頼すべきです。

 

 

Q7-1:勤務先のお金を横領してしまいました。着服金額は1000万円です。去年横領していたことが会社にばれてしまい、社長室に呼ばれました。社長から着服金額を尋ねられ、「1000万円です。」と答えましたが、納得してもらえませんでした。社長から、「私は3000万円横領しました。このお金は全額返済します。」といった内容の紙を渡され、「この紙に署名・捺印しないと警察に告訴する。俺が告訴すればお前は間違いなく逮捕される。インターネットに名前が出て妻や子供も生きていけなくなるぞ。」と言われ、怖くなって署名・捺印してしまいました。その後、社長に脅され、不動産などを売却し、2000万円を弁償しましたが、もうこれ以上お金がありません。社長に支払いの猶予をお願いしましたが、「横領した奴が何を言ってるんだ。来月までに支払え。支払わないと告訴して警察に逮捕してもらうからな。」と言われました。私は逮捕されてしまうのでしょうか?

 お話の内容が事実であれば逮捕される可能性は極めて低いでしょう。

 

 

Q7-2:それはなぜですか?

そもそも告訴される可能性が低いからです。社長の行為は恐喝罪にあたる可能性が高いです。「恐喝」とは、暴行・脅迫により相手を怖がらせ、お金を払わせたり、債務を負わせる行為のことです。相手を怖がらせてお金を巻き上げるための手段として、「告訴するぞ」と告げた場合は、恐喝罪の要件である「脅迫」に該当します。社長自身が刑事責任を問われかねない行為をしていますので、自ら告訴するとは考え難いです。仮に告訴されたところで逮捕されることはないでしょう。

 

 

Q7-3:私はあと1000万円会社に支払わないといけないのでしょうか?

言われていることが事実であればその必要はありません。民法上強迫による法律行為は取消可能とされています(民法96条)。3000万円を返済する旨の意思表示も、状況から考えて社長の強迫行為を理由として取り消すことができると考えられます。

 

 

Q7-4:今後何をすればよいのでしょうか?

まずは着服金額を精査して本当に1000万円なのかを確認する必要があります。その上で、弁護士を通じて相手方と交渉を行い、不当利得返還請求訴訟も視野に入れつつ、過払い分の返還等を求めることになるでしょう。3000万円を返済する旨の意思表示は内容証明郵便で取り消します。

 

 

Q8:会社のお金を横領してしまいました。会社から私の親に請求がいくことはあるのでしょうか?

請求がいくことはあります。

 

(解説)

ご本人が20歳以上であれば、ご本人の業務上横領について、原則として親が法的責任を負うことはありません。ただし、親が会社と身元保証契約を結んでいれば、親も法的責任(連帯保証債務)を負う可能性があります。

 

以上は法律の話であって、実際は、親に法的責任がなくても、資産を持っている場合は、会社が親に対して何とかしろと請求してくることがあります。弁護士を立てれば、弁護士が交渉の窓口になるので、会社から直接親に請求がいくことはなくなります。

 

 

Q9:ウェルネス法律事務所は業務上横領のケースをどれくらい扱っていますか?

業務上横領罪については年間数十件のご相談を頂いております。他の事務所に比べて取扱い件数はかなり多い方だと思います。実際に手がけた事件の規模は、着服金額が200万円程度のものから1億円超のものまで、相手方は中小企業から一部上場企業、官公庁、特別養護老人ホーム、未成年後見人など多岐に渡ります。ほとんどのケースで刑事事件化する前に示談を成立させています。

 

 

Q10:ウェルネス法律事務所の弁護士が業務上横領罪を手掛ける上で心がけていることはありますか?

業務上横領罪のご依頼者は、会社からのプレッシャーや今後の不安などにより、精神的に追い込まれている方が多いので、なるべくコミュニケーションを密にとって、メンタル面でもフォローするようにしています。必要であれば、ご家族の方とも連絡をとりあうようにしています。

 

 

Q11:業務上横領事件の弁護士を選ぶ上でのポイントは何でしょうか?

業務上横領事件の取扱い経験が多く事案に精通している弁護士を選ぶべきです。また、弁護士費用が高額すぎないことも重要です。会社と示談できるか否かは、どれだけ弁済できるかにかかってきます。予算を弁護士費用に使い果たしてしまい、弁済に回すお金がないというのでは本末転倒です。そのため、通常の事件以上に、弁護士費用については綿密にリサーチしておいた方がよいでしょう。

 

 

Q12:ウェルネス法律事務所に業務上横領のケースを依頼した場合、弁護士費用はいくらかかりますか?ちなみに、まだ刑事事件にはなっていません。

 示談が成立した場合は、原則として44万円です(税込・実費込み)。

 

 

 

 

横領・業務上横領のページ

横領に強い弁護士に相談-弁護士費用や示談について

業務上横領で弁護士を選ぶタイミング

業務上横領で逮捕されるケースとされないケース

業務上横領で逮捕や刑罰のめやすは?示談や弁護士費用も解説

業務上横領と自首

業務上横領の示談書の作り方を弁護士が解説-書式あり

弁護士が教える業務上横領の加害者が絶対にしてはいけないこと

業務上横領と詐欺の違い

業務上横領等-中小企業と大企業でどう違う?

業務上横領と労基署の解雇予告除外認定

業務上横領と仮差押え

業務上横領で不動産が仮差押えされた→示談のタイミングは?

飲食店の業務上横領について弁護士が解説

歯科医院での横領について弁護士が解説

成年後見人の横領

業務上横領と身元保証人-どこまで責任を負うのか?

業務上横領した会社が倒産したらどうなるか?

業務上横領の弁護士費用

業務上横領のご質問

業務上横領のご質問2