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特殊詐欺のだまされたふり作戦とは?無罪になる?判例も解説!
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
【特殊詐欺】だまされたふり作戦とは?
特殊詐欺のだまされたふり作戦とは、詐欺に気づいた被害者が警察に協力して、だまされたふりをして犯人をおびき出し、逮捕につなげる作戦です。
だまされたふり作戦のよくあるパターンはこうです。
まず、被害者が警察から模造紙幣が入った紙袋を手渡されます。被害者は自宅にやってきた受け子に紙袋を手渡します。その直後に、被害者の自宅周辺で待機していた捜査員が受け子を取りおさえ、詐欺未遂で現行犯逮捕します。
⇒現行犯逮捕とは?通常逮捕との違いや現行犯逮捕されたときの対処法
被害者がかけ子から「ここに〇万円を送ってください」と指示された住所に、現金が入っていない郵便物を送り、取りにきた受け子を詐欺未遂で現行犯逮捕することもあります。
【特殊詐欺】だまされたふり作戦がなければ何罪になる?
被害者がだまされていることに気づかず、受け子に現金を渡してしまった場合、受け子には詐欺罪が成立します。
受け子はかけ子がだました被害者の家にいってお金を受けとります。「受け子はお金をうけとるだけなので詐欺罪が成立しないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、受け子は、被害者がかけ子によってだまされた状態を利用して、だまされた被害者から現金を受けとっているため、受け子にも詐欺罪の共同正犯が成立します。
【特殊詐欺】だまされたふり作戦で無罪になる?判例も解説
1.下級審の判断
特殊詐欺の受け子がだまされたふり作戦に気づかないまま、被害者から紙袋や郵便物を受け取った場合は、犯罪が成立するのでしょうか?
この点については、①無罪になるという考え方と、②詐欺未遂が成立するという考え方があります。
①は、被害者がだまされたことに気づいている以上、受け子が被害者から紙袋や郵便物を受けとっても詐欺被害が生じる危険がないとして、無罪になると考えます。
②は、まず「詐欺被害の危険を高めたか否かは一般の人が認識できる外形的な事情を基礎として判断すべき」と考えます。
被害者と受け子のやりとりを見た一般人は水面下でだまされたふり作戦が実施されていることまでは認識できないため、だまされたふり作戦が実施されていることを判断の基礎から除外して考えます。
そうすると、受け子が被害者から物を受けとることにより、外形的には被害発生の危険が高まっているといえるため、詐欺未遂になると考えます。
これまで、下級審では、おおむね①の考え方をベースにして無罪とするケースと、②の考え方をベースとして詐欺未遂とするケースに別れていました。
2.最高裁判所の判断
この点について、2017年12月に最高裁判所の決定が出ました(最高裁決定平成29年12月11日)。
最高裁は、被害者をだます行為と被害者から現金などを受けとる行為が一体のものであると考え、そのような一体性を有する行為の一部に関与した受け子は、関与前のかけ子のだまし行為についても責任を負うと判断しました。
最高裁の考え方は、だます行為と受けとる行為の一体性を根拠としていますので、だまされたふり作戦が実行されているか否かによって結論は変わらないということになります。
下級審も最高裁の決定にならって、だまされたふり作戦が実施されている場合であっても、そのことを理由として無罪判決を出すことはなくなりました。
弁護方針としては、無罪を目指すというよりは、示談や被害弁償を行うことによって執行猶予の獲得を目指すことになります。
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